通勤手当は合理的な最短経路で通勤した場合に、上限15万円まで非課税で支給されます。ただ、テレワークの普及に伴い出社と在宅勤務が混在するなかで、通勤定期代の支給条件変更や自宅勤務手当への移行検討、就業規約の変更など企業が調整すべき事項は多岐に及びます。今回は通勤手当の定義や通勤手当の変更に関する注意点、就業規約の変更、在宅勤務手当へ変更した場合の注意点を解説します。
目次
通勤手当とは、従業員の通勤にかかる費用を手当として支給する制度です。通勤費の全額または一部を企業が負担し、現金支給や定期券などの現物支給を行います。通勤手当を導入している企業は多く、従業員にとっては、最も身近な「手当」といえるでしょう。しかし、実は企業に通勤手当の支払いを義務付ける法的な根拠はありません。そのため、通勤手当を導入していない企業もあります。
関連記事:
・諸手当の意味とは?従業員が喜ぶユニークな手当や税金の取り扱いについて徹底解説!
・家族手当とは?支給要件や共働き家庭への対応方法を徹底解説!
・傷病手当金とは? 病気や怪我による休業で受給できます
就業規則に通勤手当の規定がある場合は、就業規則の変更が必要です。テレワーク導入により、通勤の必要がなくなったことから、通勤手当の廃止、あるいは減額を検討する企業も増えています。しかし、就業規則の不利益変更には合理性があることが必要です。合理性の有無は以下の条件により判断されます。
テレワークを導入することで、実際に従業員の通勤費用の負担が減るため、通勤手当の廃止、あるいは減額には合理性があるとみなされます。就業規則の変更をする場合は、労使でよく話し合い、「就業規則(変更)届及び意見書」を、労働基準監督署長へ提出するとともに、従業員への周知を徹底することが大切です。また、就業規則に「1週間以上通勤しない日がある者の通勤手当は、日割り計算とし、実際に通勤した日についてのみ支給する」などの文言がある場合は、就業規則の変更せずに支給条件を変更することが可能です。
テレワークを導入した多くの企業が、通勤手当の実費支給を検討しています。出社しない日が多ければ、実費支給にすればコストメリットがあると見込まれるためです。しかし、このとき注意しなければならないのは、「直近一ヶ月の従業員のテレワーク率」や、「半年後、あるいは1年後のテレワーク率」について、明確な予想ができているかどうかです。ただ闇雲に通勤手当を実費支給にするだけでは、コストメリットが大きくないだけでなく、通勤定期の割引率なども考慮すると、かえって負担が大きくなってしまうこともあります。なお、就業規則に、「通勤費として通勤定期代相当額を支給する」などの記載がある場合は、実費支給への変更の際に、就業規則の変更手続きも必要です。
在宅勤務手当とは、テレワークをする従業員に支給される手当です。従業員が自宅で勤務するということは、家にいる時間が増えるため、光熱費が増加します。さらに、家で仕事をするためには、通信設備や周辺機器を揃えるなど、環境整備をする必要があるため、従業員の負担になるでしょう。こうした負担を少しでも軽減をするために、在宅勤務手当を導入する企業が増えています。
在宅勤務手当を導入している企業は増えていますが、上述の通り、在宅勤務手当は、所得税の課税対象になります。非課税枠が設けられている通勤手当の代わりに導入するのであれば、所得税を気にせずに導入できる非課税手当を検討してみるのも良いでしょう。
企業で実際に導入されている代表的な非課税手当には以下のようなものがあります。
新型コロナウイルスの影響で、テレワークなど、新しい働き方の導入が進むなか、注目を集めているのが食事補助手当です。食事補助手当の利用方法はさまざまで、ケータリングサービスや、全国にあるカフェやファミリーレストランなどで利用することが可能です。テレワーク勤務と相性の良い食事補助手当ですが、非課税での支給には以下のような条件があります。
上記の条件を満たしていれば、食事補助手当を非課税で支給することができます。
関連記事:
・新型コロナウイルス関連の政策まとめ【助成金・補助金 編】
・働き方改革で見直し! 就業規則を変更する流れを解説
新型コロナウイルスの影響により、ただ単に、従業員の労働環境を整えるというだけでなく、通勤手当から在宅勤務手当への変更や、福利厚生の見直しを求められるケースも増えています。
通勤手当を廃止、あるいは実費支給にすれば、コストカットに繋がるように見えますが、企業のテレワーク率によっては、かえって負担が大きくなる可能性もあります。また、就業規則の変更や、社会保険料の改定など、想定以上の業務が付随する可能性を考慮する必要があるでしょう。手当の廃止や変更をするにあたって、どのような対応が必要か認識し、事前によく検討すると良いでしょう。
This website uses cookies.