感染症対策を徹底していたとしても、社内で新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者が出る可能性はゼロにはなりません。こうした場合には、該当社員の健康観察や濃厚接触者のリストアップ、オフィスの消毒など多くの業務に追われるため、通常業務に支障をきたすこともあります。あらかじめ対応方法をまとめて社内に通知しておくことで、オフィスに人が少ない状況でも業務を継続できるようにしましょう。今回は、社内で感染者や濃厚接触者が出た場合の対応として、濃厚接触者の特定や健康観察、消毒、社内外への通知について解説していきます。
目次
新型コロナウイルス感染症の流行が収まらない現状では、いつ会社内の人が感染者、あるいは濃厚接触者になってもおかしくありません。社内で感染者や濃厚接触者が出た場合に、迅速に対応するためにも、関連する法律や対処法をあらかじめ把握しておくことが重要です。また、感染者や濃厚接触者は出社制限がかかる場合があるため、業務への支障を最小限にとどめるための対策も必要でしょう。このように、感染者や濃厚接触者への対応は、全社員に直接的あるいは間接的に関わるものであることを意識する必要があります。
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新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出ると、感染者の情報が保健所等関係機関に共有されますが、感染者の勤め先へ連絡があるわけではありません。そのため、感染者となった社員が申告することによって、初めて会社は社内で感染者が出たことを知ります。また、現在は感染経路の特定を積極的に行っていない自治体が多く、一部のハイリスクとみなされた対象者を除き、濃厚接触者の特定がされないこともあります。そのため、会社は独自で、感染者と直近に接触していた人物を調査し、濃厚接触者を特定する必要があるのです。
新型コロナウイルス感染症は、発症時期が遅れてやってくるため、感染に気付かない時期に人と接触することで感染を広げてしまう可能性があります。そのため濃厚接触者を早めに特定し、対策する必要があるでしょう。
濃厚接触者とみなされるのは、感染者の発症2日前から接触した場合です。具体的な定義は以下のような場合になります。
実際に感染する可能性は、換気がされていたのか、マスクはしていたのかなどによっても変わりますが、感染者と軽く立ち話をしていたという程度でも濃厚接触者になってしまう場合があります。社内では社員同士の距離が近い場合が多いため、感染者と一緒に行動していた社員や、同じグループの社員などは濃厚接触者とみなす必要があるでしょう。また、感染者が食堂、休憩室、喫煙室などの共有スペースを利用していた場合は、より広範囲にわたって濃厚接触者の調査が必要になります。
新型コロナウイルス感染症の流行当初は、社員から感染者が出ると会社の営業自体を自粛しなければならない場合がありましたが、現在は感染者・濃厚接触者が出ても、正しい感染対策を行うことで、営業自粛までする必要はないとされています。また、以前は2回のPCR検査で陰性が確認されてから就業制限や隔離が解除されていましたが、現在は「発症から14日経過」すれば就業可能です。濃厚接触者についても、必ずしも自宅待機しなくても良いことになっています。しかし、濃厚接触者についても14日間の出社停止期間を設けている会社は増えており、他の社員への影響も考え在宅勤務か自宅待機を指示した方が良いでしょう。
休業中の賃金は状況により支払いの有無が異なります。感染者の療養期間中は、風邪などで会社を休む場合と同様、賃金の支払い義務が生じません。このような場合、健康保険加入者であれば傷病手当金による補償をうけることができます。一方、症状が出ていない社員を会社の判断で休業させる場合は休業手当を支払う必要があります。そのため、濃厚接触者を出社停止にする場合は、休業手当の支払いをしなくてはなりません。
新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日間ほどとされており、この間PCR検査を受けて陰性の結果が出ても、その後発症する可能性もあります。また、感染しても無症状で経過する人もいますが、その場合も感染力があるため、濃厚接触者には感染者と接触してから14日間の健康観察期間が必要です。
健康観察期間中はマスクの着用や手洗いを徹底するほか、外出を自粛し、人との接触の機会をもたないようにしましょう。また、毎日2回ずつ体温を測り、発熱や咳などの症状が見られた場合はすぐ保健所に連絡します。
社内で感染者や濃厚接触者が発生した場合、消毒の徹底が必要です。新型コロナウイルスは感染力が強く、付着した場所によっては数日間感染力を保ったまま生存することが可能といわれています。そのため、感染者や濃厚接触者が触れた箇所から、新たな感染者が広がる可能性があります。二次感染者が発生するリスクを低減させるためにも、適切な方法で消毒を行いましょう。
感染者が触れた可能性があるものを入念に消毒します。保健所から指示があればそれに従い、感染者が発症2日前以降に使用したもの、共用している場所などを中心に消毒しましょう。ドアノブやスイッチなど手が触れる場所や、飛沫が付着している可能性がある壁やカーテン、トイレの便座や蛇口なども入念に消毒を行います。
消毒には消毒用アルコール(エタノール)、次亜塩素酸水、0.05%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。使い捨てのペーパータオルなどに消毒液を付けて拭きましょう。食器や箸などは普段と同じように食器洗い洗剤を使った洗浄で問題ありません。血液や排泄物など感染者由来の液体が付着した場所は、消毒用エタノールや0.05~0.5%の次亜塩素酸ナトリウムで拭くか30分間浸け置きします。
消毒作業を行う際は、作業者の感染を防ぐため、マスク、手袋、ゴーグルを着用し、ウイルスが直接肌や粘膜につかないように注意しましょう。また、高濃度のアルコールや次亜塩素酸ナトリウムは、人体に有害なガスを発生させる場合があるので、使用中は換気することが大切です。作業後は丁寧に手洗いをし、作業中に着用していた衣服を着替えます。
社内で感染者や濃厚接触者が出た場合、社内外への適切な通知が必要になります。社内に対して通知する際は、感染者や濃厚接触者のプライバシーに気を配り、復帰後に仕事がしにくくなるような状況にならないように注意が必要です。新型コロナウイルス流行当初は、感染したことを自己責任や体調管理の問題とみなし、感染者が精神的に追い詰められる事態が発生していましたが、このような認識は大きな間違いです。感染者を疎外することは、新たな感染者が申告しにくい空気を生み出し、感染の発覚が遅れてしまう事態に繋がるので、社員全体の意識改善に努めましょう。
社外への通知は、感染者や濃厚接触者が接触した取引先にはすぐに連絡をする必要があります。取引先に迷惑をかけてしまうと思うと気が引けますが、大変な時こそ誠実な対応をすることが信頼に繋がります。また、自宅待機や在宅勤務の社員が増え、取引先関連の業務に支障が出そうなときも早めに連絡することが大切です。
現在はそれぞれの業種で、さまざまな感染症対策がとられ、「新コロナ時代」に適応する会社も増えてきました。新型コロナウイルス感染症についても、詳しいことが徐々に判明し、どうすれば感染の可能性を低減できるかが一般の人々にも浸透しています。今後は、自社内で感染者が出ても、大きな混乱なく対処できる会社も徐々に増えていくのではないでしょうか。感染者や濃厚接触者が出た場合の対応についてしっかりと理解し、新しい時代にも負けない社内体制を構築しましょう。
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