若者の雇用促進等を図るため、「若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)」が2015年10月(一部、2016年3月)から施行されています。この法律の施行により、新卒者の求人を行う企業には新たな義務が課せられることになりました。法令を遵守し、若者の雇用を適切に行うためにも、法律の内容をきちんと押さえておく必要があります。今回は、若者雇用促進法について御説明します。
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若者雇用促進法(正式名称:青少年の雇用の促進等に関する法律)は、若者の雇用の促進等を図り、若者が能力を有効に発揮できる環境を整備するため、2015年10月(一部の規定は2016年3月)から施行されている法律です。
少子高齢化が進展し、労働力人口の減少が見込まれる中で、次代を担うべき存在として若者が安定した雇用の中で経験を積みながら職業能力を向上させ、働きがいを持って仕事に取り組んでいくことができる社会を築くことが、日本の経済社会の発展を図る観点からも重要な課題となっています。
このような状況を踏まえ、これまでの「勤労青少年福祉法」が「青少年の雇用の促進等に関する法律」と名称を改めるなど抜本的に改正され、就職準備段階から就職活動時、就職後のキャリア形成までの各段階において総合的かつ体系的に若者雇用対策に取り組むための法律として新たに位置づけられました。
若者雇用促進法では、若者が適職を選択するための取組を促進するため、以下のような規定が盛り込まれています。
新卒者の卒業後3年以内の離職率が高いことなど、新卒時の適職選択が十分に行われずミスマッチが生じていることが課題であることから、新卒段階でのミスマッチによる早期離職を解消するため、企業は職場情報の積極的な提供を図ることとされました。
新卒者の募集を行う企業については、幅広い情報提供が努力義務化されるとともに、応募者等から求めがあった場合は、①募集・採用に関する状況、②職業能力の開発・向上に関する状況、③企業における雇用管理に関する状況の3類型ごとに、1つ以上の情報提供を行うことが義務化されています。情報提供すべき具体的な事項は、次のとおりです。
・過去3年間の新卒採用者数・離職者数
・過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
・平均勤続年数
・研修の有無および内容
・自己啓発支援の有無および内容
・メンター制度の有無
・キャリアコンサルティング制度の有無および内容
・社内検定等の制度の有無および内容
・前年度の月平均所定外労働時間の実績
・前年度の有給休暇の平均取得日数
・前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
・役員に占める女性の割合および管理的地位にある者に占める女性の割合
新卒一括採用が慣行となっている現状、新卒時のトラブルは職業生活に長期的な影響を及ぼす恐れがあります。そのため、一定の労働関係法令違反があった企業について、ハローワークにおいて新卒求人を一定期間受け付けない仕組みが創設されました。
具体的には以下のような場合に、新卒者等であることを条件とした求人がハローワークにおいて不受理とされます。
・1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている場合
・違法な長時間労働を繰り返している企業として公表された場合
・対象条項違反により送検され、公表された場合
・法違反の是正を求める勧告に従わず公表された場合
若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を、厚生労働大臣が認定する「ユースエール認定制度」が創設されました。
認定基準としては、若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であることに加えて、直近3事業年度の新卒者等の正社員として就職した人の離職率が20%以下であることや、前事業年度の月平均の所定外労働時間・有給休暇の平均取得日数・育児休業の取得対象者数および取得者数(男女別)について公表していることなどの条件があります。
ユースエール認定を受けると、ハローワークなどで重点的PRをしてもらえることや、認定企業限定の就職面接会などへ参加できること、若者の採用・育成を支援する関係助成金が加算されることなどのメリットがあります。助成金については、下記の記事を参考にしてください。
・関連記事:見逃さずに上手に活用!すぐ使えそうな雇用関連助成金の一覧と申請する際の注意点(https://www.somu-lier.jp/goodstory/subsidy/)
若者雇用促進法では、厚生労働大臣が、法律に定める事項についての必要な措置に関して、企業等の関係者が適切に対処するための指針を定めて公表することとされました。
これを受けて策定・公表された指針では、企業が講ずべき措置について定められています。その中でも、下記のものは特に重要ですので、きちんと押さえておきましょう。
固定残業代を採用する場合は、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示することが必要です。
採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされることに十分留意して、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力などを行うことが必要です。
やむを得ない事情により採用内定の取消しを行う場合には、当該取消しの対象となった者の就職先の確保について、最大限の努力を行う必要があります。
若者雇用促進法の施行によって、企業には新たな義務が課せられることとなりました。気付かないうちに違反してしまうことのないよう、しっかりと押さえておくことが必要です。
また、ハローワークにおける求人不受理等は、採用活動に大きな影響を与えてしまいます。新卒者の募集を予定している企業においては、これまで以上に労働関連法規を遵守する必要があるといえるでしょう。
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