運輸、インフラ系、メーカーなど、多くの企業にとって社有車は欠かせない存在となっています。しかし、社有車を使用する際には当然リスクがあり、その対処のためには適切な管理規定が必須です。例えば社有車で交通事故を起こしてしまった場合、車両管理規定を事前に作成しているか否かで、企業側が支払う賠償額は大きく異なります。この記事では、車両管理規定の新規作成や、既存の規定を見直す際のポイントについて詳しく説明していきます。
車両管理規定とは、従業員が業務中に使う車に関して企業が定めるルールのことです。なぜこの規定を定めることが必要なのでしょうか。それには2つの法律上の理由があります。
車を運転する際に交通事故に遭う可能性がゼロではないため、企業の危機管理という面からも、また道路交通法に則った社有車の管理という面からも、車両管理規定は欠かせない存在なのです。
関連記事:
・【シリーズ】社内広報のススメ1:「社内広報」でイキイキした職場をつくろう
・【シリーズ】社内広報のススメ2:「社内広報」はじめの一歩
車両管理規定を作成する際に推奨される以下の項目について、ポイントとなる部分を解説していきます。
上述の道路交通法によって企業に課される規則の1つです(道路交通法第74条)。乗車定員が11人以上の車両を1台以上保有する企業、または定員数に関わらず車両を5台以上保有する企業には、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。また、車両を20台以上保有する企業は、20台ごとに副安全運転管理者を1人選任しなければなりません。
安全運転管理者が行う業務には、以下のようなものがあります。
以上からも明らかなように、安全運転管理者は被用者の安全面を管理する役割を、副安全運転管理者は安全運転管理者を支える役割を担います。もし安全運転管理者や副安全運転管理者が業務を怠ったり、適切に行わなかったりすると、交通事故のリスクが高まり賠償責任の発生につながってしまいます。
安全運転管理者等の専任において気をつけるべき点として、以下の3点があります。
選任の際には、道路交通法や内閣府令の規定を注意深く読み、罰金による無駄な支出を回避しましょう。
車両の管理と一口に言っても、統括・管理といった書類上の業務と、点検・整備などの実用的な業務の2種類があります。これらの業務を割り振るため、車両管理規定には、車両を管理する使用者と、実際に車両を業務中に運転する被用者を区別して、それぞれのなすべきことを記すとよいでしょう。
使用者の側では、車両台帳と運転者台帳を作ります。車両台帳では、社有車の車種、登録番号、使用時の日付、行き先や目的、点検や事故の記録、車検や自動車保険の詳細等を管理します。他方の運転者台帳では、被用者の個人情報や、免許の更新時期などの情報を管理します。運転者台帳に載せる従業員は、もちろん上記の社内運転許可制度で社有車の運転を許可された者に限ります。安全運転管理者等の選任のように法律によって義務付けられているわけではありませんが、企業のリスクを減らす有効な手段と言えるので、ぜひ作りましょう。
通勤時にマイカーの使用を認めている企業も多いかと思います。しかし、通勤も業務の一環と見なされるため、従業員が通勤中にマイカーで交通事故を起こした場合、企業にも被害者への賠償責任が及ぶ可能性があります。したがって企業の側としては、マイカーの使用を禁止して公共交通機関を利用させるようにすれば最もリスクが低くなりますが、もちろんこれは大都市圏以外では現実的な方策と言えません。
もしマイカー使用を認める際は、社用車の場合と同様、企業が車両と運転者を管理する必要があります。企業の規模によっては非常に手のかかる業務となることも考えられますが、マイカーの使用を一様に無条件で認めるのでなく、例えば使用頻度や使用する範囲・時間、または被用者に関する条件を車両管理規定に記載するなどして、マイカーの使用に対して制限を設けるとよいでしょう。
どんなに社有車が事故を起こさないように注意していても、起きる時には起きてしまうのが事故というものです。そこで、事故が起きてしまった際の対応についても、車両管理規定に記載しておくとよいでしょう。具体的には、事故が起きた際の責任の所在や罰金の負担者、事故発生後の再発防止のための企業内の行動などを明記しておくと、事故が起きてしまった時によりスムーズな対応が可能となります。
車両管理規定があるのとないのでは、事故のリスク回避に大きな違いが出ることがお分かりいただけたかと思います。今回ご紹介したのは車両管理規定に盛り込むことを特にお勧めするものですが、とは言え企業の形態は様々ですので、車両管理規定を作成する際には慎重に議論を重ねて、自社に適した車両管理規定を作り出すことが重要です。
This website uses cookies.