時間単位年休を導入し、年次有給休暇の取得を推進しましょう!

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公開日:2018.5.29

多くの企業で働き方改革が取り組まれる中、年休の取得率を向上させるための制度の1つに「時間単位年休」があります。時間単位年休とは1時間単位での年次有給休暇の取得を認めることで、各従業員の生活スタイルに合った形での休暇制度の実現が期待されます。今回は時間単位年休について、そのメリットと導入に際して定めるべき規則を紹介します。

柔軟化した年次有給休暇

労働基準法第39条において、雇用者は労働者に毎年一定日数の年次有給休暇を与えなければいけないと規定されています。年次有給休暇制度の本来の趣旨は、労働者がまとまった日数の休暇を取得することで、日々の暮らしにゆとりが持てるようにするというものです。しかし、職場の同僚の目が気になるなどの理由により、労働者が有給休暇としてまとまった休みを気兼ねなく取ることは必ずしも容易ではありません。実際に、日本の年次有給休暇取得率は5割を下回っており、世界的にも最低クラスの数値となっています。

そこで平成22年の労働基準法の改正により導入されたのが、時間単位での年次有給休暇取得の制度です。この法改正により、適切な労使協定を結べば年5日の範囲内で1時間単位での年休取得が可能になりました。
この制度を利用すれば、従業員は自身のプライベートや仕事の都合を考慮しながら細やかな休みを取得することが可能になります。1日休めば多くの仕事が溜まってしまっていた従業員も、休みを小刻みにすることで業務上の負担を軽減できるでしょう。この制度を導入して従業員が休みやすくなる環境を整備することは、従業員の満足度を上げるだけでなく、企業として従業員のワークライフバランス向上に取り組んでいることを分かりやすい形で対外的にもアピールできます。

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導入に必要な手続き

時間単位年休の制度導入には、事業場の過半数を代表する労働組合と労使協定を結ぶ必要があります。また労使協定を結んだのちには、労働基準法89条 1号の規定により、時間単位の有給休暇制度について就業規則への記載を行います。就業規則の変更は、労働者への周知を徹底すると同時に、労働組合の意見書を添えて所轄の労働基準監督署長へ届け出ることが義務付けられています。

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導入にあたって決定すること

時間単位の有給休暇に対して支払われる賃金

時間単位の有給休暇の1時間分の賃金額は、以下のいずれかをその日の所定労働時間数で割った額と同額にならなければなりません。

  • 平均賃金
  • 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 標準報酬日額

なお、報酬日額相当額を支給する場合は労使協定が必要になるので注意が必要です。以上3つのいずれで計算するかは1日単位での年休取得の場合と同様にし、決定後には就業規則に明記しなければなりません。

対象労働者の範囲

制度の対象となる従業員の範囲を定めます。一部の従業員のみを制度の対象外とする場合は、労使協定で話し合ってその範囲を定めなければなりません。

ここで言う範囲とは業務内容による区分を指し、休みを取る理由によるものではないという点に注意が必要です。工場のライン部門など、仕事の内容によっては従業員が時間単位の年休取得を行うと、事業全体に支障が出てしまうことがあります。このような場合には、当該の従業員を時間単位の有給休暇が取れる対象者から除外することが可能です。

一方、年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、その休暇を取る理由について会社側は制限できないため、時間単位の有給休暇の対象者の範囲を年休取得の目的によって定めることはできません。たとえば従業員の育児支援のために制度を導入したとしても、育児を行う従業員のみを制度の利用者として限定することはできません。

時間単位年休の日数

先述の通り、有給休暇制度の本来の趣旨は、まとまった日数の休暇を労働者が取得できるようにすることです。そのため、時間単位の有給休暇の日数は年間5日に相当する時間が上限となっています。5日分以内であれば、就業規則によって従業員が何日分の時間を1時間単位で取得できるかを定めることができます。前年度に取得されなかった有給休暇が次の年度に繰り越されたとしても、この繰り越し分も含めて上限が5日であることに注意が必要です。

時間単位年休1日の時間数

1日分の有給休暇が何時間分の時間単位の有給休暇に相当するかを決めます。日によって所定労働時間数が異なる場合は、年間での1日平均所定労働時間数に基づきます。この算出方法で設定できない際は、決められている期間における1日平均所定労働時間数を参照します。所定労働時間に端数がある従業員については、1時間単位に切り上げて算出します。例えば、所定労働時間が6時間45分の場合、7時間に切り上げます。

1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

時間単位の有給休暇の取得単位は、2時間、3時間など1時間以外の時間を基本単位とすることもできます。この場合、その単位となる時間数を定めます。ただし、その取得単位を1日の所定労働時間数と同等またはこれを上回る時間数にすることはできません。

 

就業規則に盛り込むべきこと

上記の事柄を決定したら、その決定に従って以下の内容を就業規則に記載しましょう。

  • 賃金の算出方法
  • 時間単位年休の対象労働者の範囲
  • 時間単位年休の日数
  • 1日分の年次有給休暇が、何時間分の時間単位年休に相当するか(時間単位年休1日の時間数)
  • 1時間以外の時間を単位とする場合のその単位とする時間数

 

まとめ

1時間ごとの細かな有給休暇が取得できる制度を整えることは、従業員のワークライフバランスを向上させます。また、求人票などに記載することで企業としての姿勢を分かりやすい形で対外的にもアピールできるでしょう。時間単位年休の制度をうまく利用し、ぜひとも生産性を向上させましょう。

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