企業の会計報告は報告をする対象に応じて、「企業会計」と「税務会計」に分類することができます。企業会計と税務会計は作成される目的が異なるため、計算される費用に差異が生じる場合があり、その差額を調整するために必要となる会計手続きを、「税効果会計」と呼びます。今回は、企業会計と税務会計の相違点、税効果会計の目的について詳しく解説します。
会計はビジネスの行動指針になるとともに、事業の関係者に活動成果を報告する道具となります。企業の会計は、報告する対象に応じて、「企業会計」と「税務会計」の2つに分類されます。
営利を目的とする企業が、財務状況を報告するための会計が企業会計となります。企業会計の報告対象は基本的には利害対象者であり、外部向けか内部向けかによって、「財務会計」と「管理会計」に更に分類されます。
税務会計とは、会社の活動の成果をもとに課税所得の計算を目的とした会計で、法人税法などのルールの下で作成されます。国や地方公共団体に報告することを目的とした会計です。
企業会計と税務会計は報告対象が異なるため、以下のような相違点が生まれます。
「税効果会計」とは、企業会計と税務会計の計上項目の差異による、金額のずれを調整する会計手続きです。税効果会計を用いた場合と用いなかった場合、以下のような違いが生まれます。
前述の通り、企業会計では費用として算入されても税務会計では損金に算入されない場合があり、具体例として「貸倒引当金繰入」が挙げられます。
「貸倒引当金繰入」とは、経営状態が良くない取引先で、債権が回収できない貸倒れリスクを考慮した上での見積もり費用を指しています。貸倒引当金繰入は、企業会計では費用として全額算入されますが、税務会計では一部が損金算入されず、所得に算入される場合があります。その場合、所得に対して課される法人税額が増額し、この税額の差異については、取引先が実際に破綻して損失が出るまで多く税金を納めていることとなります。
そのため、課税前の企業会計上の利益と税務会計上の所得の間に一時的に差異が生じ、課税後の当期利益において、企業会計と税務会計の値が一致しなくなってしまいます。
このようなずれを解消する会計手続きが、「税効果会計」です。上記の貸倒引当繰入によって生まれた差異は、税効果会計に含まれる「繰延税金資産」と「法人税等調整」を用いることで調整することが可能です。
実際の手続きとしては、貸借対照表(BS)上に「繰延税金資産」、損益計算書(PL)上に「法人税等調整」という科目を設け、払いすぎた税額分を計上することで、企業会計と税務会計における当期利益の金額を調整するというものです。以上の税効果会計を用いることで、課税後の当期利益を企業会計と税務会計で一致させることが可能となります。なお、繰延税金資産とは払い過ぎている税金が将来返されることを前提に、その相当額を資産として計上する科目であるため、その見積もりが適正であるか検討する必要があります。
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税効果会計が行われる目的は、以下の2つが挙げられます。
税務効果会計を利用することで、企業会計と税務会計における金額の差異を解消することが可能となり、投資家に提供する情報の変動を抑える効果や経営指標の改善にもつながります。税効果会計の目的と方法を理解した上で、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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