一般消費者に向けて自社の事業やサービス、商品を宣伝するためにかかる費用を広告宣伝費と呼びます。時として広告宣伝費は、得意先や仕入先に接待や贈答などをする際の費用である交際費との境目が曖昧になりますが、損金に算入できるかどうかが異なるため、注意して区別しなければなりません。今回は広告宣伝費と交際費の違いや、損金に算入できるかどうかについて解説していきます。
個々の支出をどのように計上するべきなのかということは、しばしば制度的に明文化されていないため、多くの経営者を悩ませる問題となっています。そのような場合はまず、事細かなケースの扱いについて答えている国税庁のタックスアンサーを参照することになります。
広告宣伝費と交際費の違いはよく問い合わせのある質問であり、タックスアンサーも用意されています。それによれば、交際費には「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」が含まれます。他方の広告宣伝費は、「カレンダー、手帳、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用や次のような不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用」とされています。
つまり、特定の人に宛てられたプレゼントであれば交際費になりますが、そのプレゼントが不特定多数の人に渡る可能性がある場合は広告宣伝費になります。両者の区別の判断は、特定の人を指定して贈られるのか、それとも不特定多数に向けられているのかという点に基づいて行います。
上述のタックスアンサーにはいくつかの具体例が列挙されています。広告宣伝費と扱われるのは、以下のように広く一般消費者を対象にする場合です。
これらの例からも分かるように、単に不特定多数を対象にしていれば広告宣伝費になるというわけではなく、広く一般消費者を対象にする必要があります。ここでの一般消費者とは最終消費者のことで、その製品を原材料等として使用する事業者は対象に含まれません。タックスアンサーでは、以下のような特定の業を営む人たちを対象にしている場合「一般消費者を対象にしている」ことにはならないと例示されています。BtoBビジネスを行う場合は気をつけましょう。
そもそも、広告宣伝費と交際費のどちらかに該当するかが、なぜ重要なのでしょうか。それは両者の間で損金の扱いが大きく異なり、どちらに当たるかの判断により法人税額が大きく変わる可能性があるからです。広告宣伝費であれば、その全額を損金算入することができます。他方、交際費は原則として損金不算入であり、時限的な措置として制限を設けた上で損金算入が認められています。
交際費の損金算入の制限は、資本金(出資金)1億円以下の中小企業と大企業で異なります。中小企業の場合、2つの計算方法を選択できます。1つは交際費としての支出されたもののうち、年間800万円まで損金算入が認められるという方法です。この場合は800万円を超過する部分は損金として扱えません。もう1つの方法は、社内での飲食費を除いた交際費に含まれる飲食費について、その費用の50%を損金に算入できる方法です。ただし、この計算方法を取るには帳簿上で接待飲食費と仕訳されている必要があります。
上記に関連して、打ち合せ等に付随して発生する飲食費が1人あたり5,000円以下の場合は、交際費ではなく会議費として全額を損金算入できます。ただしその場合、社内の人間のみでの飲食や、社員・役員の親族を接待するものであってはならず、社外の人との打ち合わせなどである必要があります。そのことを示すため、以下の記録について記載した書類を保存しておかなければなりません。
なお、会議費ではありませんが、従業員の慰安のために行われる運動会や演芸会、旅行について通常要する費用も交際費として扱う必要はなく、損金に全額算入できますので合わせて活用しましょう。
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時として広告宣伝費と交際費の違いは一見わかりにくいものとなりますが、どの程度損金に算入できるかどうかが大きく異なります。正しい税知識を持って、適切な節税ができるよう自社の交際費の扱いを見直してみましょう。
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