組織である会社の業務効率化を図る上で、社員の業務分担を見直すことは、個々人の業務の無駄を省くこと以上に重要と言っても過言ではありません。業務分担の見直しに向けて、各人の業務範囲を明確化する業務分担表を作成してみませんか? 今回はそんな業務分担表について、作成するメリット、作成する際に注目すべきポイントについて解説します。
目次
業務分担表とは?
業務分担表とは、業務を誰に割り振るかを示した表のことをいいます。イメージとしてはまず業務を洗い出し、その横に担当社員の名前を記入するといったものです。業務分担表を作成するにあたって、以下のような工夫が考えられます。
- 社員ごとに名前の色分けを行う
- 完了した業務にチェックマークをつける
- 達成のデッドラインを併記する
- 優先順位をレベル分けして併記する
作成する目的
業務分担表は、業務の割り振りを「見える化」するために作成します。「見える化」はもともとトヨタの自動車生産の過程で生み出された用語で、社員一人ひとりが生産に必要な情報を把握し、何をするかが明確な状態を作り出すことを目的とします。緻密な作業が要求される産業でこれが不可欠なのは当然ですが、業務分担表の作成は、あらゆるオフィスワークにおいて機能します。特に複数の業務を同時に担当することが多い総務部では、非常に有用な手段と言えるでしょう。
業務分担表を作成するメリット
目標までのプロセスが明確になる
業務分担表では、表の作成と同時に目標達成へのプロセスが明確になり、「やりたいこと」と「やらなければならないこと」が混ざり合うことがなくなります。これにより作業にメリハリをつけるだけでなく、社員の士気を上げ、業務効率を向上させる効果も期待できます。また完了した業務が目で見てわかるので、それに伴う達成感もまたモチベーションの向上につながります。
取りこぼし業務をなくせる
場当たり的に割り振りを行っていると、業務の割り振り漏れが発生する可能性があります。人の頭の中だけで把握できる物事には限りがあるため、まず必要な業務を洗い出して割り振り、追加業務が生じた場合は進行度に合わせながら追加の割り振りを随時行うという流れを取ることができます。このスタンスを崩さない限り、取りこぼし業務が発生することはありません。また、誰かが業務を見落としていたとしても、業務分担表の形にしておくことで他の社員が指摘できるという、セーフティネットとしての役割も期待できます。
全員が仕事への責任感を持てる
業務分担表で業務を割り振ることで、この仕事は自分が責任を負うという自覚を促すことができます。また上司のみでなく、すべての社員が業務分担表を確認するため責任の所在が明らかになり、良い意味での緊張感を持ち続けることができます。結果として、無責任な仕事の遅延などを減らすことにつながります。
遅れたパートを把握してサポートできる
業務分担表で各人の進行度が可視化されることで、誰が順調か、あるいは遅れているかが一目瞭然となり、遅れているパートがあれば他の社員が手助けすることができます。社員同士のサポート体制を整えることで、ひいては部署全体の生産性向上の効果も期待できます。
業務分担表を作成する際のポイント
具体的な数値の設定
業務分担表で業務ごとの目標を設定する際に、ただ「完了させる」などといった文言だけでは、担当者が明確なイメージを持ちにくいことがあります。資料作成であれば「何ページ/何文字書き上げる」、必要物を揃えるなら「何個用意する」など、明確な数値を表の中に記入しておくと社員がより具体的なビジョンを持って業務に取り組めるようになります。
達成度の確認
業務分担表の構成は、社員が表を見たときに混乱しないよう最低でも「未達成」「達成」がわかるような作りにしておきましょう。例えば、分担表で業務を割り振った後に、達成した業務にはチェックマークを入れたりマジックペンで消したりします。達成度ごとに赤ペンでボックスを塗りつぶしていくなどの方法も考えられますし、「達成度65%」のように、数値化が可能なものはその割合を記入しておくのもわかりやすいでしょう。
余裕を持った計画を
負担の大きい計画を立て、その達成に遅れが生じ続けたり失敗が重なったりすると社員のモチベーションが下がり、かえって生産性は低下してしまいます。業務分担表の作成の後に業務が追加されたり、遅延が発生したりするリスクは想定できますから、それらに柔軟に対応できるように、期日設定や人数配分は融通の効くような余裕あるものにしておきましょう。またそのような事態にも対応できるよう、業務分担表のフォーマットは業務・担当者を追加・変更するのが容易な構成にしておきましょう。
優先順位の設定
期限内に全ての業務の目標を達成するのが理想ですが、必ずしも全てが順調に行くとは限りません。それでも期日を絶対に守らなければならないほど重要性の高いものや、急に追加されるなどして期日が迫っている緊急性の高いものは存在しますので、それらがわかりやすいような表の作成を心がけましょう。重要なもの、緊急のものにはそれぞれ「要」「急」の文字を太い赤ペンで記入するなど、他の一般的な業務との優先順位を明確にしましょう。
業務を細分化する
1つの業務の中に、複数の細かなタスクが含まれているケースがあります。このような業務をひとまとめにして担当者を決めてしまうと、その担当者の負担が増えてしまう上に、具体的な達成のビジョンを描きづらくなり効率が低下するかもしれません。このような業務はひとまとめにせず、細かなタスクごとに担当者を決めて一人ひとりの負担を減らしましょう。
業務分担表を利用する際のポイント
継続して利用する
最初に必要な業務を洗い出して業務分担表を作成したとしても、その後のマネジメントがいい加減であれば当然ながら思ったような効果は得られません。例えば、業務分担表を貼ってもそのまま更新せず、新しい業務は口頭で割り振られるといった状況などが考えられます。小さな行動の積み上げが生産性向上につながることを意識し、継続して業務分担表を利用しましょう。
もしも業務分担表を編集するのが億劫なほど忙しければ、付箋に走り書きして分担表のどこかに貼っておくだけでも構いません。時間に余裕があるときにそれを清書しましょう。業務分担表を業務の一部として利用し続けることが大切です。
プレッシャーを与えるだけのツールにしない
業務分担表は正しく機能すれば責任の所在が明らかになり、生産性の向上につながりますが、社員に過度なプレッシャーを与えるとかえって生産性を低下させる恐れがあります。特定の社員の業務が遅れている場合には担当者の責任を過度に追求せず、どう遅れを取り戻すかを検討しましょう。業務分担表で余裕を持って担当者を配分していれば、余力のある他の社員を遅れている業務をフォローさせることもできます。
対話の重要性
すべての社員が業務を順調にこなすことは考えにくく、仕事に遅れが生じているのがわかったときは、他の社員や上司を交えて直接の話し合いをし、解決策を考えるようにしましょう。また、表の上では達成されているように見えても、直接の対話がなければ上司、社員がお互いに認知していないミスを見過ごす恐れがあります。緻密に構成された業務分担表があったとしても、こまめなコミュニケーションを大切にしましょう。
まとめ
業務分担表は業務の分担を可視化し、生産性の向上の効果も期待できます。どのような形で業務分担表を作れば良いかを話し合い、部署の業務分担を見直しましょう。