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近年注目を集めているタレントマネジメントとは?目的や背景について解説

近年注目されているタレントマネジメントとは、従業員の適性やスキルを最大限活用し、適切な人材開発と人材配置を目指す管理方法です。タレントマネジメントは、近年、日本において、働くことに対する価値観の変化や、労働市場の流動化が進んでいることを背景に注目されています。この記事では、タレントマネジメントの概要と目的、注目されている背景、そして導入方法や実用性について解説します。

タレントマネジメントの導入が進んでいる

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、従業員一人一人を「タレント」(人材・資質・才能)とみなし、採用・配置・育成などを戦略的に行うことで、組織のパフォーマンスの最大化を目指す人材マネジメント手法のことをいいます。企業や組織の目標を達成するための戦略において、人事部門に重要な役割を与えているのが大きな特徴です。「タレント」として扱われるのは、いわゆる優秀な人材に限りません。タレントマネジメントでは、なにかに特化した能力や、その人の持つ雰囲気など、能力の一つ一つが重要な経営資源として考えられています。

タレントマネジメントの目的

タレントマネジメントの目的は、従業員それぞれの能力を適材適所で活かし、結果的に企業全体の発展につなげていくことです。また、タレントマネジメントは、個々の従業員が過去に経験してきたことや、未来を見据えて取り組みたいことなどを踏まえて、現在の配置や業務を決めていきます。従業員にとっても、自分の理想に近いキャリア形成やスキルアップが実現しやすくなるでしょう。このように、従業員一人一人のやりたいことや伸ばしたい能力に寄り添うことで、従業員と企業の間における、より高度なエンゲージメントが構築されます。ただし、タレントマネジメントの目的は、あくまで企業における業績アップなどの目的の達成です。ただ単に、個人に合わせたマネジメントをすることではないため注意しましょう。

注目される背景

タレントマネジメントは、1997年にマッキンゼーが提唱した「ウォー・フォー・タレント」の概念をきっかけに広まったといわれています。ウォー・フォー・タレントとは、「人材獲得・育成競争」と訳されます。経済社会環境の変化により、従来のような、社内組織内だけの「人材管理」から、社外も含めた開かれた世界で人材を獲得していかなければならない時代が到来したと述べているのです。
昨今では、テクノロジーの急速な発展により、企業で働く人材にはより高度な能力が求められるようになりました。そのため、企業が求める人材も専門分化してきているといって良いでしょう。つまり、なにかに特化した能力や、専門的な能力を持つ人材に、しっかりと活躍してもらえるかどうかが、企業経営のカギになっているのです。また、少子高齢化に伴う労働人口の減少により、企業は多彩なバックグラウンドを持つ人材を採用していかなければなりません。個人の能力に焦点を当て、最大限に活かすことが企業の業績を左右する時代になったといって良いでしょう。 

  

タレントマネジメントの始め方

目的の明確化

まずは、企業活動を行ううえでの目標を明確にしましょう。多くの企業において、経営理念やビジョン、ミッションなどが設定されていますが、これらの達成とは、どのような状況を指すことなのか、一度掘り下げて考える必要があります。また、目指すべき状態を実現するために、必要な課題を細分化することも大切です。そして、それぞれの要素ごとに必要なタレントはどのような人材なのかを定義します。

人材情報の「見える化」

次に、現在自社に所属している人材情報を可視化します。氏名・配属・資格の基本的なデータに加えて、学歴・経歴・目標・評価などの人材情報を一元データ化しましょう。このように、人材データを「見える化」することで、能力に応じた人材登用や、足りないタレントの採用計画などが練りやすくなります。従業員数が多い企業では、膨大なタレントデータを管理しなくてはならないため、タレントマネジメントに特化した人事管理ツールなどを導入すると良いでしょう。

採用・育成計画の策定

自社に必要な人材の情報を踏まえ、採用・育成計画を策定しましょう。自社が求める人材は、外部から採用しなければならないなのか、社内から抜擢するべきなのかを判断します。また、すでにいる人材や新たに獲得した人材が、理想とするタレントではない可能性もあります。このような場合は、業務経験を積ませたり、社内研修を施したりすることで、能力の差を埋めることができるでしょう。逆にいえば、あとから埋めることのできる能力差であれば、自社事業への共感や社内カルチャーへの理解などを重視して採用しても良いかもしれません。

人材の採用と配置

採用・育成計画に従って、人材を配置します。従業員のモチベーションアップのためには、本人の希望通りの配置をすることも大切ですが、もっとも重視しなければならないのは売上や収益にプラスに働くかどうかです。人材が能力を発揮し、いきいきと働けるポジションに配置しましょう。

成果の評価

タレントマネジメント制度の導入後は、定期的に成果を確認しましょう。人材の配置前と配置後で、企業業績にどのような変化が生じたかを客観的数値に基づいて分析することが大切です。もし、配置した人材が、期待されるような活躍ができていない場合、なにが能力の発揮を阻んでいるのか考える必要があります。現場の意見を踏まえながら、職場環境や制度を見直し、必要であれば能力開発研修などを取り入れましょう。また、タレントマネジメントにおいては、異動はつきものです。ある業務では実績を積めなかった人が、違う業務では活躍することもあるため、企業も従業員も柔軟な思考で配置を考えることが大切です。 

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タレントマネジメントの成功事例

味の素

味の素株式会社では、世界各国の味の素グループ企業に所属している多様な人材を横断的に育成・登用し、人材の適材適所を目指しています。このような目標に向け、「グローバル人財マネジメントシステム」を導入しました。グローバル人財マネジメントシステムは、ポジションマネジメントとタレントマネジメントから構成されます。ポジションマネジメントでは、組織に必要な職務と、その職務を担うために必要な人材の要件を明確化します。タレントマネジメントで目指すのは、ポジションに合った人材を登用することで、優秀な人材を早期把握・育成することです。多様なタレントからなる分厚い人材層を作ることで、地域横断型の部門別研修や、各国ごとの階層別、選択型プログラム、基幹人材を対象とするリーダー育成研修など、一人一人の成長を支援する取り組みが可能になっています。

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスでは、全従業員に向けたタレントマネジメントを実施しています。「全従業員が自立したプロフェッショナルとして、自らのキャリアをデザインし、新たな価値を生み出し続けるグローバルカンパニー」を実現するために、長期的な人材育成・活用に取り組んできました。従業員には、上司や人事部と一緒に自らの能力や適性について考える機会が与えられます。このように策定されたキャリアビジョンを軸に、企業・部門横断的なジョブローテーションやサントリーリーダーシップコンピテンシーなど、現場での育成を通じた適材適所の配置が推進されていることが特徴です。

双日

双日株式会社では、「商社は人なり」という理念のもと、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」の、2つの価値を創造する人材の育成に取り組んでいます。そのようななか、人事インフラの強化策の一つとして、タレントマネジメントが導入されました。持続的成長のカギとなる、「稼ぐ力」を持っている人材はもちろん、ビジネス環境の急速な変化にスピード感を持って対応できる人材や、失敗を恐れず挑戦し、困難を乗り越えてやり抜く人材を育成し、次代の経営を担うべき人員としての成長を支援します。

  

まとめ

これまで、多くの日本企業においては、終身雇用や年功序列を前提とした人材マネジメントが行われてきました。このような従来型の人材マネジメントでは、あるポジションに人材を抜擢しようとしても、その従業員の勤務年数や内部公平性などを重視しなければなりません。そのため、思うような人材活用ができないケースがありました。
現在、必要とされるのは、いかにそのポジションで力を発揮し、企業を成長に導けるかという点でしょう。自身の能力が最大限に活かされる働き方は、従業員にとっても素晴らしいものになるはずです。新しい時代において、人材に「選ばれる」企業を目指すため、タレントマネジメントを導入してみてはいかがでしょうか。

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