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サクセッションプランとは?サクセッションプランの概要や導入事例について解説します。

サクセッションプランとはもともと後継者育成計画を指す言葉でした。しかし、近年は人材を育成しプールしておく施策全体のことを指すようにもなっています。サクセッションプランを導入することで優秀な人材の育成が可能になり、それは企業の存続に繋がり、持続的成長が期待できます。今回はサクセッションプランの概要、サクセッションプランのメリットデメリット、サクセッションプランの導入方法、導入事例について解説します。

サクセッションプランの導入が広がっている

サクセッションプランとは

サクセッションプランとは、企業のリーダーとなり得る人材を選抜し、長期間かけて育成する人事戦略のことを言います。すなわち、経営者(CEO)や経営幹部の後継者を育てるという意味です。しかし、現在では経営者に関わらず、社内で将来不足すると予想される重要なポストを補うために、人材を育成するという目的でもサクセッションプランが使われています。

人材育成との違い

人材育成とは、人事部が指揮をとって研修などの教育を行い、事業に貢献し将来企業を支えることのできる人材に育成することを言います。一方、サクセッションプランとは、いずれは経営に参画し経営者の後継となる人材を育成するために、長い期間をかけて経営のスキルを身に付け、能力やセンスを磨くよう導くことです。後継者対策として長期的に行われるプランであり、数年から数十年かかることもあります。また、人材育成と最も異なる点は、人事部だけではなく経営者層が育成や評価に深く関わるということです。

サクセッションプランの導入方法

サクセッションプランの導入には、6つのステップがあります。

  • 自社の経営理念や経営戦略を明確にする
    サクセッションプランの目的は、次世代の経営者を育成することです。自社の未来をどうしたいのか、現状維持か変革か、はその人選にかかっています。そのためには、経営理念や経営戦略をはじめとして、企業文化や企業風土、自社の魅力、技術、製品、人材、取引先など、まず現在の状況を明確にし、整理する必要があります。
  • 育成対象となるポジションを洗い出す
    現在の状況を洗い出したところで、未来の自社に必要なポジション(ポスト)は何かを検討します。経営者だけではなく、役員や部長などの役職者についても検討が必要です。検討内容によっては、新規の役職や部署の設立、組織の改編などが必要になる可能性もあるでしょう。
  • 育成対象のポジションに必要な人材要件を明確にする
    育成するポジションにふさわしい人材とはどんな人材かを検討します。例えば、経営に関する知識やリーダーシップ、コンピテンシー、マインドセット、語学力、コミュニケーション能力、問題解決能力、業務に関する専門知識や経験、スキル、資格、人間関係、自社の経営理念を理解していること、など多くの要件が挙げられます。また、これらの要件を審査するにあたっての評価基準を設けることも必要です。
  • 候補者を選抜する
    求める人物像がはっきりしたら、候補者の選抜に入ります。自薦他薦、これまでの各種評価結果、試験、面接、研修、グループディスカッションなど、一つではなくさまざまな方法での評価が必要です。タレントマネジメントシステムを採用している企業はその評価も参考にできるでしょう。注意が必要なのは、現在の評価だけで判断しないことです。その人のポテンシャルを考え、将来像も含めて評価を行います。
  • 育成プランの作成と実行
    育成には、ポジションごと、候補者ごとに綿密なプランをたてる必要があります。ポジションによって必要な教育は異なり、候補者も一人ひとりに特性があり優秀な部分と足りない部分が異なるためです。具体的な育成プランとしては、経営学などの座学の研修だけではなく、多彩な業務体験をするためのジョブローテーション、問題解決能力を高めるアクションラーニング、責任ある立場を経験するプロジェクトリーダーへの登用、海外勤務、ジュニアボード(疑似役員会)などが挙げられます。また、企業側でも、これらの育成プランを受け入れるために、社内制度の整備や候補者の関係者(上司、人事部)の調整などが必要です。
  • 評価、進捗確認、プランの見直し
    育成プランが始まったら、定期的に進捗の確認と評価を行います。サクセッションプランは長期間実践されるものなので、目標に対して進捗が滞っていたり、計画通りの結果が出ていない場合には早めに原因を探り解決しなければなりません。また、評価する側だけではなく、候補者当人の意見も面接などで聞き取り、取り入れる準備も必要です。自分で考えて育成プランについて面接で意見を述べることもまた、育成の過程で役立ちます。

    

サクセッションプランのメリット・デメリット

メリット1:必要な能力が可視化される

自社の未来像を明確にして、次世代の経営者に何が必要かを洗い出すことは、今、不足している人材を明確にすることです。必要な能力を可視化でき、ほかの人材育成にも役立てられます。

メリット2:後継者不在のリスクを回避できる

現経営者が後継者を育成することにより、後継者不在のリスクはなくなります。また、長期間かけて育成することにより、自社についてよく理解した後継者が育つため、企業理念や企業文化、伝統なども問題なく継承されるでしょう。

メリット3:優秀な人材を確保できる

経営層への育成希望者を選抜することは、出世への意欲があり熱意のある人材が集まるということです。それぞれの部署で腕を振るっている優秀な人材を確保することができます。

デメリット:人材育成まで時間がかかる

サクセッションプランは、何年、何十年という時間をかけて未来の経営者を育成する取り組みです。たいへんな時間がかかるため、仮に候補者が転職や退職を希望した場合、最初からやり直しとなってしまう、これまでかけたコストも無駄となってしまうリスクがあります。

    

サクセッションプランの導入事例

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社のグローバル幹部の人材育成プログラムが「GLOBAL21プログラム」です。全従業員がトヨタの価値観「トヨタウェイ」を共有することを目的に、全社を通して管理職や事務系、技術系社員にOJT、OFF-JTを行う「TMC人材育成」を実施しており、海外事業体でも「トヨタウェイ」を理解するためのプログラムである「グローバルコンテンツ」を実施しています。TMC人材育成で選抜された経営人材候補や、海外事業体でグローバルトヨタウェイを習得した優秀な人材が「GLOBAL21プログラム」の育成を受けられるのです。「GLOBAL21プログラム」では、幹部にふさわしい能力や見識の習得と、個人の強みを最大に発揮できることが目的です。その方法として、以下の3つの柱を掲げています。

  • 経営哲学、幹部への期待の明示
  • 人事管理
    「課題創造力」「課題遂行力」「組織マネジメント力」「人材活用力」「人望」の5つの能力
  • TMCなど、「GLOBAL21」に対応した教育体制

株式会社良品計画

株式会社良品計画では、経営変革の一つとして、人材育成について取り組んでいます。人材育成を全社視点で行う、として「業務基準書による育成」「人材委員会」「人材育成委員会」の三段階に分けました。特に「人材委員会」は課長以上を対象とし、パフォーマンスと潜在能力で人材を区分けする「ファイブボックス」を導入。パフォーマンスも潜在能力も高い人材は次期リーダーとしての人材プールとして、パフォーマンスは高くて潜在能力は合格レベルの人材はトップパフォーマーとして活躍させる、といった施策です。また、人事制度を変更し、人材配置にも変革を起こしました。年齢にとらわれない抜擢、若手優秀者の海外派遣(語学力を問わない)、困った部門にエースを投入、部門長を新規分野に出す、というのがその内容です。

カゴメ株式会社

カゴメ株式会社は、コーポレートガバナンスコードに基づいて、サクセッションプランにおいても透明性の高い選任を実施しています。タレントマネジメントシステムに個人の異動希望、長期キャリアプランの設計、人物評価、人物情報などが入っており、これらの情報をもとに、配属や職務を決めたり抜擢を行ったりします。つまり、自律的なキャリアプランが生かされるということで、優秀な人材で本人が望むのであれば、サクセッションプランにおいても同様なのです。サクセッションプランのシステムは、社長、会長、専務、CHOにより構成される「人材開発委員会」においてキーポジションを設定し、パイプライン(従業員から経営者までのラインが途切れていないか)の確認を行い、育成プランの策定などを行います。そのうえで候補者案を出して絞り込むのです。その後、現取締役(社外取締役含)で組織された「報酬・指名諮問委員会」にて、面接や最終選考が行われます。

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まとめ

サクセッションプランとは、いまや、企業の後継者を育成するだけではありません。重要なポジションに必要な人材を育成することも指しているのです。単に優秀な人材を選抜するのではなく、経営者をはじめ必要なポジションにそれぞれ適した人材を選抜する必要があります。そのためには、まず、自社の経営理念や経営戦略を明確にし、将来どのような企業に成長したいのか、そのためには何が必要かを検討する必要があるでしょう。長い時間がかかることではありますが、企業の歴史や文化も同時に引き継ぐための重要なプロセスです。慎重に進めていきましょう。

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