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「まだ間に合う!ストレスチェック制度の基本理解とメンタルヘルス対策」~その1 50人未満事業場で知っておきたいストレスチェック制度対応とは~

平成27年12月から、一定規模以上の会社等に「こころの健康診断」ともいえる「ストレスチェック制度」の実施が義務化されました。まだまだ浸透しているとは言い切れないこの制度ですが、本シリーズでは、「ストレスチェック制度とは何か?」「会社としてメンタルヘルス対策にどう向き合うべきか?」を解説します。

第1回目は、ストレスチェック制度の概要と義務化の対象外となる規模の会社(労働者数50人未満事業場)における対応方法を紹介します。

関連リンク:ストレスチェック制度の導入で総務部がやるべきこと【チェックリストつき】

 

ストレスチェック制度で混乱?

ストレスチェック制度は、対応いかんで簡単にも複雑にもできる、柔軟性のある制度。そのため、公的機関や民間企業問わず、多くの情報が発信されていますが、枝葉末節を見すぎると、「自分の会社では何が必要なのか?」「この制度は何をしなければいけないのか?」「そもそも何のためにやるのか?」など、混乱の元になります。

例えば、所管の厚生労働省からは、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」が公表されていますが、170ページを超えるボリュームがあり、すべてを詳細まで理解することは困難でしょう。

会社でストレスチェック制度の運用ルールを定める例として「ストレスチェック制度実施規程例」もありますが、「実際に自社ではどこまでが必要なのか」「何が義務で何が任意なのか」がわからなければ、形を整えることも難しくなります。

つまり、情報はたくさんあるにもかかわらず、取捨選択や詳細の理解に苦労するのです。会社のスタンスによっても、どこまでやるべきかが変わってきます。

「とりあえず、法律違反にならないよう最低限のことだけやろう」と考えるのか、「メンタルヘルス対策は労務管理上の重要課題だから、ストレスチェック制度を最大限活用しよう」と考えるのかによって、取り組みにかかる負担にも差が出てきます。

自社のストレスチェック制度設計の前に、基本に立ち返り、制度の概要をおさらいしましょう。

 

ストレスチェック制度が義務づけられる企業とは?

ストレスチェック制度義務化の対象企業を見てみましょう。労働安全衛生法上、制度実施義務の対象となるのは、「50人以上の事業場」です。この「50人以上の事業場」とは、法人単位ではありません。

例えば労働者数が100人の法人でも、本社に40人、2つの支店に各30人ずつであれば対象外となります(図1、ケース1)。

本社に60人、2つの支店に各20人ずつの場合は、本社のみが義務の対象となります(図1、ケース2)。

産業医や衛生管理者、衛生委員会の選定基準と同じ考え方です。これには、ストレスチェック制度を円滑に運営するためには、産業保健スタッフ等の関係者が主となって推進していくべきだという意図が含まれています。

一方、産業保健スタッフ等がない事業場では負担が大きすぎると考えられ、当面は「努力義務」とされています。なお、この際にカウントする人数には、労働時間の短いパートやアルバイトの他、受け入れている派遣労働者なども含みますので注意しましょう。

【(図1)義務化の対象となる事業場の考え方】

法律上、実施の義務の対象かどうかはこれで明確になりました。ただしケース2のような場合、労務管理上どうすべきかはよく検討する必要があります。

最低限の法令遵守として「本社のみで実施し、支店では実施しない」ことは可能です。その場合は本社と支店の労働者間で不公平感が生じ、労働者のモチベーションに関わる可能性があります。

なお、50人未満の事業場でも実施する場合には、やり方などは法令に従う必要がありますので注意が必要です。

 

労働者数50人未満の事業場ではどうする?

義務化の対象は「労働者数が50人以上の事業場」ですが、「50人未満の事業場」でも、メンタルヘルス対策の一環としてストレスチェック制度を導入するのは望ましいことです。

50人未満の事業場では、法所定の制度とは別に、メンタルヘルス対策として任意で制度を導入、実施することも手段の1つですが、今回は法の定めにあるストレスチェック制度について考えることにします。

特に次のような会社では実施を考えると良いでしょう。

①メンタルヘルス不調者が発生しやすい会社

②長時間労働が常態である、または業務負荷が高い会社

③産業医や衛生管理者など、産業保健スタッフ等が確保できている会社

④複数事業場を持つ会社で、義務化の対象となる本社などがあり、対象外規模となる支店、営業所など

ただ、①、②では産業保健スタッフ等がいないケースもあるでしょう。実施について相談する相手として、EAP会社などの外部機関もその一つです。しかし、限られた予算の中で行うのであれば、労働者健康安全機構が置く「地域産業保健センター(産業保健総合支援センターの窓口)」が無料で相談対応をしていますので活用してみましょう。他にも、「ストレスチェック制度サポートダイヤル」も設置されており、電話で相談ができるようになっています。

 

50人未満の事業場ではストレスチェック制度導入に助成金も

50人未満の事業場でストレスチェック制度を導入し、実施した場合には助成金制度があります。「ストレスチェック実施促進のための助成金」は、平成28年の4月により使いやすく改正され、再度利用できるようになりました。ただし、平成28年11月30日までの有限とされていますので、利用する場合は、早めの対応が肝要です。

助成金の概略は下記のとおりです。

1.助成金の概要

労働者数50人未満の事業場がストレスチェックを実施し、また、選任した産業医からストレスチェック後の面接指導等の、産業医活動の提供を受けた場合に、事業主が費用の助成を受けられる制度です。

2.助成金を受けるための要件

まず、支給要件を満たしているかの確認を受けるため、あらかじめ労働者健康安全機構への届出が必要です。

~届出前に、次の5つの要件を全て満たしていることを必ず確認しましょう~

①労働保険の適用事業場であること。

②常時50人未満の事業場であること(派遣労働者を含む)。

③ストレスチェックの実施者および実施時期が決まっていること。

 (登録後3か⽉以内に⽀給申請まで終了できる実施時期となっていること)

④産業医を選任し、ストレスチェックに係る産業医活動の全部⼜は⼀部を⾏わせること。

⑤ストレスチェックの実施及び⾯接指導等を⾏う者は、⾃社の使⽤者・労働者以外の者であること。

3.助成対象

①ストレスチェック

年1回のストレスチェックを実施した場合に、実施人数分の費用が助成されます。

②ストレスチェックに係る産業医活動

ストレスチェックに係る産業医活動について、実施回数分(上限3回)の費用が助成されます。

 

【ストレスチェックに係る産業医活動の例】

・ストレスチェックの実施について助言すること

・ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること

・ストレスチェックの結果について、集団分析を行うこと

・面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること    など

4.助成金額

①ストレスチェックの実施

 一労働者につき500円

②ストレスチェックに係る産業医活動

 一事業場あたり産業医1回の活動につき21,500円(上限3回)

※それぞれの上限額なので、実費額が上限額を下回る場合は実費額が支給されます。

 

最後に

本記事ではストレスチェック制度の概要と50人未満事業場での対応についてお伝えいたしました。

2回目となる次回は、実際にストレスチェック制度の導入と運用を考える際におさえておくべきポイントを解説します。

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