過労死やメンタルヘルスが大きな問題となっている昨今、労働災害を未然に防ぐ取り組みが重要視されるようになっています。労働災害の防止には、企業の全員が危険を認識し、防止に取り組むことが不可欠です。今回は、労働災害の種類と、企業で行うことのできる防止策について解説していきます。
「労災」と略されることの多い労働災害は、労働者が業務や通勤を原因として負傷・疾病・障害・死亡の被害に遭うことを指しています。この負傷・疾病・障害・死亡を総称して「災害」と呼んでおり、通勤による災害は通勤災害、業務による災害を業務災害と呼びます。なおここでいう通勤とは、以下のような移動を合理的な経路と方法で行うことです。この経路は必ずしも企業に事前に申告したものである必要はありません。
もし労働災害が起きてしまった場合、パートやアルバイトも含めてすべての従業員が労働者災害補償保険の対象となります。原則として従業員を1人でも使用する事業主には、その雇用形態にかかわらず労災保険への加入が義務付けられます。
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労働安全衛生関係法令とは、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則などを指します。労働安全衛生関係法令の順守は企業が行うことができるというよりも、企業が原則的に行わなければならないことです。具体的には以下のようなことが企業の義務とされています。
放射線業務や特定化学物質業務などの特に有害な業務を行わせる場合は、事故リスクが高いことが考慮され、年1回の健康診断に加えて、特定の項目についての特殊健康診断を原則として6カ月以内に1回実施することが企業に義務付けられています。有害物質の影響が時間をかけて出ることがあるため、過去に有害業務に従事したことがある従業員は、現在は有害性の低い別の業務を担当しているとしても特殊健康診断を受けさせなければいけない場合があります。また、診断結果の保存義務は、場合によっては一般的な健康診断よりも長く設定されることがあります(最大40年)。特殊健康診断は通常の健康診断と同様、結果報告書を所轄労働基準監督署へ届け出なければなりません。
特に事故のリスクが高い作業のうち、プレス機械や木材加工用機械を用いた作業などを行う場合、事業主には作業主任者を選任して作業員の指揮や機械設備の点検等を行わせることが義務付けられています。作業主任者になるためには、労働局長が指定する技能講習を修了すること、もしくは定められた免許を取得することが必要です。
確実に労働災害を防ぐためには、上記のような法令で定められた取り組みは当然のこと、企業が自主的に事故を防ぐための取り組みを行うことが重要です。様々な企業で実施されている取り組みの代表例が、以下の2つです。
その他の施策の例としては、従業員から安全確保についての提案を受け付ける安全提案制度や、整理・整頓・清潔・清掃によって事故を防ぐ4S活動、職場安全ミーティングなどがよく知られています。それぞれの企業の業務内容や事情に合わせて、有効な方法を選択しましょう。
リスクアセスメントとは、業務上の危険性や有害性を洗い出して、そのリスクを抑えるために、現況リスクの見積もりとリスク低減措置後のリスクの見積もりを比較する手法のことです。リスクアセスメントの「アセスメント」は、影響評価を行うことを指します。
リスクアセスメントにおいて、リスクは「労働災害の重篤度」と「その災害の発生の可能性」を組み合わせて算出され、その程度が小中高の3段階によって評価されます。
「労働災害の重篤度」は、「致命的・重大(死亡災害や休業1カ月以上の災害)」、「中程度(休業1カ月未満の災害)」、「軽度(かすり傷程度)」の3段階に分類されます。「その災害の発生の可能性」は、「高いまたは比較的高い(毎日危険性または有害性に接近する、もしくはかなり注意しても災害につながる)」、「可能性がある(修理などの作業で、危険性または有害性に時々接近する)」、「ほとんどない(危険性または有害性に接近することは、めったにない)」の3段階に分けられます。リスクアセスメントはこの両者の組み合わせによって行うので、例えば「労働災害の重篤度」が軽度で、「その災害の発生の可能性」が高い場合、そのリスクは中程度と評価されます。
リスクアセスメントは以下の手順にしたがって行います。
この手法によって、どのようなリスクが存在し、それに対する措置がどのように実際にリスクを低減することに成功しているのかを適切に把握することができます。
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労働災害を未然に防ぐために、法律で義務付けられている取り組みを行うのはもちろん、個々の企業がそれぞれの事情に照らして自主的な取り組みを行うことが重要です。リスクを適切に洗い出して企業の全員が危険を適切に認識するようにし、労働災害防止に積極的に取り組みましょう。
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