監修:豊田 健一(『月刊総務』編集長)
「総務」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? 「何でも屋」「雑用係」、はたまた「閑職」などなど、なんとなくネガティブなイメージを持っている人もいるのでは?
総務部は、数ある部署の中でも社内における目的や意義が見えにくい職種かもしれません。しかし、総務の本質をとらえることができれば、とてもやりがいのある仕事だということが分かるはず。ここでは、総務のミッション、具体的な業務内容、備えるべきマインドセットを紹介します。
目次
総務部が目指すのは、ズバリ「会社のレベルアップ」です。
総務部は経営陣も含めた社内のすべての部署と関係を持つ、社内で唯一の存在であることも。社内全体を見渡し、疎遠になりがちな経営陣と現場・部署と部署をつなぎ、社員全員を経営陣の目指す目標に向かわせることが、総務部の使命です。
「This is my building」――会社全体を自分ごとととらえ、自分が経営者になったような気持ちで仕事をしていくと、とてもやりがいを感じられる部署であることが分かります。
「総務は何でも屋」のイメージは、間違いではありません。総務部の仕事内容とは一般的に「その他の部署では扱わないが、会社にとって必要不可欠な業務のすべて」。非常に広範囲な業務に携わります。
特に中小・ベンチャー企業は「ユーティリティー」としての総務力がより強く求められるでしょう。大企業では別部署(人事部、法務部、広報部や経営企画室など)で管轄される業務であったとしても、中小・ベンチャー企業にはそもそもその部署がないということが多いからです。
そんな多岐にわたる総務の具体的業務としては、以下のようなものがあります。
・文書や印章、固定資産・備品、消耗品などの管理 ・保安・防災業務 ・情報セキュリティの整備 ・受付業務 ・福利厚生業務 ・安全衛生管理 ・従業員の健康管理 ・社内外の慶弔業務 ・社葬の実施 ・秘書業務 ・会社行事、イベント業務 ・働き方改革の促進 | ・契約、契約書管理 ・株主総会・取締役会業務 ・株式管理 ・IRの実施 ・社内・社外広報 ・ホームページの管理業務 ・官公庁との渉外 ・地域との渉外 ・社会貢献活動 ・環境対策 ・リスクマネジメント ・業務委託管理 |
※会社の規模によっては別の部署が扱う業務もあります。
総務の仕事内容が実に多岐にわたることが改めて実感できる膨大さですね。役割でとらえると次のようになります。
役割 | 内容 |
社内のサービススタッフ | 庶務業務、文書作成・管理、福利厚生など、企業活動を円滑に進めるための業務を行う |
経営層の参謀役 | 経営層の意思決定や、その他の経営的な業務に必要な情報の提供やアドバイスを行う |
全社コミュニケーションのパイプ役 | 社内報などの社内メディアの企画運営、ICT(情報通信技術)などのインフラの整備、社内イベントや施策の告知通達などを行う |
全社的活動の推進役 | 株主総会、入社式、納会などの全社で行うイベントの企画運営を行う |
2019年に働き方改革関連法が施行され、多様な働き方の実現や長時間労働の是正など多くの制度改正が行われました。そのため、法律や規定を遵守した社内制度の整備や業務対応をつつがなく遂行することはもちろん、社員が働きやすいと感じるオフィスの環境整備や風通しの良い風土を醸成する仕組み作りに積極的に注力することも、これまで以上に求められるようになってきたと言えるでしょう。
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このように広範囲に及ぶ総務の仕事。業務を進める上で大切なポイントは次のようになります。
さまざまな領域に関わり、経営陣と現場の橋渡しを行う総務は、他部署の社員よりも高度かつ多岐に及ぶ情報やルールに自然と触れています。しかし、それが全社員の常識と判断してしまうのは危険。忙しい現場社員はルールを理解していないこともよくあります。コミュニケーションを間違えると、総務部門に対してネガティブな誤解を生むことになりかねません。そのような事態を生じさせないためにも、日常から現場に頻繁に出向き、「現場の言葉」「現場の目線」を常にアップデートしておくことが大切です。
現場からすると経営陣は遠い存在です。経営陣の言葉や思惑は、「尊大」「傲慢」と受け取られてしまうことも。そのような状態では、現場が経営側に意見を出しづらかったり、不満がたまったりしてしまいます。そんな状態のときに総務が、タウンホールミーティング(経営トップが現場に出向き、話し合う施策)など、経営陣と社員たちが腹を割って話し合えるような施策を実施しましょう。両者の軋轢のない、トップのビジョンに一丸となって進んでいく強固な企業を作ることができます。
また、総務は「経営層の参謀役」として、経営判断に必要な情報を集め、精査して提供する役割も担います。経営層が何を考え、何を求めているかを把握するために、経営層、現場の双方とコミュニケーションすることが欠かせません。
総務は、常に全社を見渡し、会社全体を最適化することを求められる職種です。自分やどこか特定の部署(声の大きなマネージャーがいる部門など)をひいき目に見れば、全社に通じる施策を打ち出すことができません。それどころか会社に余計なひずみを生じさせてしまいます。集まる情報を客観的に分析し、常に「会社にとって何が大切か」という視点に立ち、公正に業務を進めましょう。
全社に業務の効率化をアナウンスする立場として、まずは自分たちの業務を可視化、標準化し、効率のいいオペレーションを心掛けたいものです。「人のことばかり言うけれど、自分たちはどうなの?」などと突っ込まれていては、社内一丸となった仕事にはなりません。また、総務内でいち早く展開したアイディアをマニュアル化し、他部署に横展開できるとなお良いでしょう。
社内イベントなどで社員を活性化させつつも、コンプライアンスを徹底し、社員が足を踏み外さないようにチェックするのが総務の仕事です。その場の状況を冷静に判断し、促進役と制御約の2つの役割を臨機応変に使い分けることが求められます。
上述の通り総務の仕事は広範囲に及ぶため、総務担当者は非常に多くのスキルが必要になります。その中でも、総務担当者が身に付けておくべきスキルを確認しましょう。
新卒採用が総務になる場合は、総務として採用されるのではなく、総合職で採用されたのちに適性を元に総務に配属されるのが一般的です。その場合、総務が「希望していない部署」である可能性もあり、多岐にわたる業務の中からやりがいを見つけることが重要となるでしょう。総務業務は、「ここからここまでが総務の仕事」といった規定がないため、戦略総務として、業務の効率化や生産性向上に取り組み、経営支援していくのも良いでしょう。
中途採用の場合にも、幅広い業務に対応できる適性が求められます。一日の中で全く異なる業務を行うこともあるため、頭を切り替えて、並行して仕事ができる方が向いているとされます。また、新卒採用の場合より即戦力となることが求められるため、メール対応やExcel、WordなどのPCスキルが必要です。スキルに不安がある場合は、マイクロソフトオフィス スペシャリスト(MOS)という資格を取ることをおすすめします。
「地味」「やりがいがない」「何の役に立っているか分からない」と感じているあなた、もしかしたら総務部の仕事内容を誤解しているのかもしれません。自分の行動次第では会社全体の成長に大いに関わる職種でもあります。
総務での仕事を有意義なものにするためには、「受け身」をやめ、自働きかけることが何より大切です。さまざまな部署と関わり合えるメリットを生かし、社内全体を巻き込んだ改革は、優秀な総務に与えられる醍醐味の一つと言えるでしょう。
与えられた権限をフルに生かし、従来のイメージを覆す総務にあなたもなってみませんか?
参照:マンガでやさしくわかる総務の仕事(https://www.amazon.co.jp/dp/4820719408?)|日本能率協会マネジメントセンター
監修:豊田 健一(『月刊総務』編集長)
『月刊総務』 http://wis-works.jp/soumu/
「月刊総務オンライン」 http://www.g-soumu.com/
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