会社法では、株式会社に対して株主名簿を作成し、本店に備え置くことを義務づけています。また、商業登記規則の改正により、2016年10月から登記申請時に株主リストを添付することが必要であり、これは株主名簿で代用できないことから、企業においては株主名簿と株主リストをきちんと管理することが必要です。
今回は、株主名簿および株主リストの概要や記載事項等について解説します。
目次
株主名簿とは、株主の氏名や住所、保有する株式の数など株主に関する情報を記載するための帳簿のことをいいます。
会社法では、すべての株式会社に対し、以下の事項について記載した株主名簿を作成し、本店(株主名簿管理人設置会社の場合はその営業所)に備え置くことを義務づけています。
<株主名簿記載事項>
株主は、株主総会の議決権や剰余金の配当請求権など様々な権利を持ちます。株主名簿には、これらの権利を有する株主を特定するという意義があります。
株式の譲渡が行われた場合、株主名簿の名義を書き換え、株式を取得した者の氏名や住所を株主名簿に記載しなければ、株式の譲受人は会社に対して権利の移転を主張することができません。
また、会社が株主に対して通知や催告を行う場合、株主名簿に記載してある住所に宛てて行っていれば、たとえ株主に到達しなかったとしても、到達したものとみなされます。
株主名簿は、その会社の株主を特定するための重要な帳簿であり、会社が株主名簿を適切に作成していない場合、100万円以下の過料に処されます。
株式の譲渡等が行われ、株式取得者から請求があった場合、株主名簿の書き換えが必要となります。株券発行会社の場合、株式取得者が株券を提示して名義書き換えを請求すれば、会社はこれを拒否することはできません。
これに対して、株券不発行会社の場合、株式取得者はその取得した株式の株主として株主名簿に記載されている人、またはその相続人や一般承継人と共同して名義書き換えを請求する必要があります。
株主から請求があった場合、会社は、株主名簿記載事項を記載した書面を請求者に対して交付しなければいけません。これを「株主名簿記載事項証明書」といいます。
株主名簿記載事項証明書には、会社の代表取締役が署名し、または、記名押印しなければなりません。
株主と債権者は、会社の営業時間内はいつでも、請求の理由を明らかにしたうえで、株主名簿の閲覧または謄写の請求をすることができます。この請求があった場合、会社は原則として、請求者に株主名簿を閲覧させたり謄写させたりしなければなりません。
ただし、下記の場合には、請求を拒むことができます。
<株主名簿の閲覧・謄写請求の拒絶事由>
会社法では、一定の日を「基準日」として定め、基準日において株主名簿に記載されている株主(「基準日株主」といいます)をその権利を行使することができる者と定めることを認めています。基準日を設定する場合、以下の条件を満たすことが必要です。
<基準日設定の条件>
株式会社は、自己に代わって株主名簿の作成や備置きなど株主名簿に関する事務を行う者を「株主名簿管理人」として定め、株主名簿管理人に株主名簿に関する事務を委託することができます。
非上場会社の場合、株主の変動があまり多くないことから、株主名簿の管理を自社で行っている場合が多いといえます。一方、株式上場を行う場合は、金融証券取引所の規程に基づき、株主名簿管理人に事務を委託することが必要となります。
株主名簿管理人に事務を委託する場合、定款においてその旨を定めることが必要です。
株主リストとは、株主総会の決議や株主全員の同意が必要な事項を登記する場合に提出することが義務づけられている株主のリストのことをいいます。商業登記規則の改正により、2016年10月以降に登記申請を行う場合は株主リストの添付が必要とされており、株主リストは株主名簿などその他の書類で代用することはできません。
株主総会の決議や株主全員の同意が必要な事項を登記する場合、登記申請時に株主リストの提出が必要です。それぞれの場合で株主リストに記載すべき事項は下記のとおりです。
登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合、「議決権数上位10名の株主」または「議決権割合が3分の2に達するまでの株主」のいずれか少ない方の株主について、下記の事項を記載した株主リストの提出が必要です。
株主は、総議決権数に対する各株主の議決権数の割合が高い順に記載します。当該株主総会に欠席した株主や議決権を行使しなかった株主も含めて記載することが必要です。
登記すべき事項について株主全員の同意を要する場合は、株主全員について下記の事項を記載した株主リストの提出が必要です。
会社にとって、株主はとても大きな影響を持ちます。株主名簿をしっかりと管理し、株主の状況について適切に把握するようにすることが大切です。
また、2016年10月より、登記申請時には株式リストの提出が必要ですので、こちらも適切に対応するようにしましょう。
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