業績連動給与とは、その名の通り業績に連動して給与が決まるシステムのことを表します。主に役員の給与に用いられていますが、2017年度の税制改正に伴い、適用が可能な役員の範囲が拡大しました。今回は役員の業績連動給与について、その概要と改正点を解説します。
目次
業績連動給与とは、会社またはその会社と支配関係にある会社の業績に、役員の給与額を連動させる制度のことです。算定の基礎となる業績は、利益の状況や株式の市場価格の状況を示す客観的な指標によって評価されます。要件を満たせば全額を損金算入できるため、経営層へのインセンティブ付与の手段として、成果主義の企業によく見られます。
業績連動給与のメリットとしては、企業の業績向上が給与の増額につながることから、役員の企業業績に対する意欲を高めます。これにより、経営層が株主の要望に応えるために短期的な利益を追うだけでなく、より長期的な視点から企業価値の向上へ関心を向けることが期待されます。また、経営層の企業業績に対する評価を報酬に反映することができることもメリットです。
その一方で、業績連動給与による役員報酬を損金算入するためには、その内容の開示が要件の1つとして設けられています。給与の計算式の開示への抵抗感などを理由に業績連動給与の導入を渋る会社も多く、こうした点はデメリットと考えられるでしょう。
役員の給与に関して損金算入を行う場合は、以下で紹介する2017年度の改正内容に従って給与計算を行う必要があります。業績連動給与の給与自体の計算方法については、企業によって様々な方法を採用することが出来ます。ここでは、業績連動給与の計算に一般的に用いられる計算方法をご紹介します。
半期の給与額=半期の租利益×労働分配率-既払いの人件費
ここでいう、半期の租利益の部分に他の指標を当てる場合も同様に考えることが出来ます。ただしこの場合、労働分配率は疑似的な比率を用います。
労働分配率=人件費÷付加価値
付加価値とは厳密には減価償却費を含む租付加価値を用いるのですが、疑似的には売上総利益と同じと考えても問題ありません。
として、業績連動部分を以下の式で計算します。
前単体営業予利益×約7パーセント
2.富士通
安定部分4か月+業績連動部分(0から2か月分)
として、業績連動部分を以下の式で計算します。
前年度一般賞与支払い営業予利益×9.3パーセント
安定部分を一定程度設けたうえで、そのうえで一部分の給与を当人の関わる規模の業績をしめす指標に合わせて変動させることが一般的なようです。
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従来、この制度は「利益連動給与」と呼ばれていましたが、2017年度税制改正において名称が「業績連動給与」へ変更されました。主な改正点に以下の4つがあります。
業務執行役員については業績連動給与の算定方法を、役員の肩書ごとに開示する必要があります。改正後の基準に基づいた法人の役員給与に関して、以下の条件を全て満たしていれば、損金算入することが出来ます。
2.株式指標
「職務執行期間開始日の属する事業年度開始の日以降の所定の期間又は職務執行期間開始日以降の所定の日における株式の市場価格の状況を示す指標」がこれにあたります。
3.売上高を示す指標
「職務執行期間開始日以降に終了する事業年度の売上高の状況を示す指標」とされ、商品売上高などがこれにあたります。ただし、上記の1.2.のいずれかの指標と共に用いられることが条件になります。
2.株式又は新株予約権による給与の場合
指標の数値の確定後2か月以内
3.譲渡制限付き新株予約権で無償で所得され又は消滅する数が変動するものによる給与の場合
報酬委員会での決定などの手続き終了後1か月以内
従来の業績連動報酬に係る損金算入手続には、以下の4つの決定が必要でした。
2019年度の改正には、2,4については緩和の見直しがされ、3の廃止が決定されました。見直し後の2,4については以下のように変更されています。
● 独立社外委員が委員の過半数であり、委員の独立社外役員全員の賛成の要件追加
● 業務執行役員が自己の業績連動給与の決定等にかかる決議に参加していないことの
要件追加
● 業務執行役員が委員となっていないことの要件を除外
終身雇用制や年功序列制など日本企業の基盤を形成してきた諸制度が崩壊していく中で、業績連動給与は企業の競争力を高める起爆剤となることが期待されます。その一方で、法律や手続きの面での複雑さが企業にとっても大きなハードルとなっています。入念な調査を行い、是非導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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