労働力人口が減少する中、パートタイム労働者が能力を十分に発揮して働くことのできる職場環境を整備することが大切です。
パートタイム労働法では、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得性の向上を図るため、各企業において措置を講じることを定めています。
今回は、パートタイム労働法の内容や、パートタイム労働者の活躍推進のために企業に求められる取組について解説します。
目次
パートタイム労働法は、パートタイム労働者がその有する能力を有効に発揮できる雇用環境を整備するため、パートタイム労働者の納得性の向上や正社員との均等・均衡待遇の確保、正社員への転換の推進等を図ることを目的として定められた法律です。正式名称は、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。
パートタイム労働法の対象となる「パートタイム労働者」は、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されており、「パート」「アルバイト」「嘱託」「準社員」などの名称に関わらず、この条件に当てはまる労働者はすべて「パートタイム労働者」となります。
雇用者全体に占めるパートタイム労働者の割合は年々増加しており、現在では約3割と高い割合を示しています。パートタイム労働者は日本の経済活動において重要な役割を担っている一方、賃金などの待遇が働きや貢献に見合っていない労働者がいることや、一度パートタイム労働者となると正社員になることが難しいことなどが課題とされています。
パートタイム労働法は、このような課題を解消し、パートタイム労働者がその働きや貢献に応じた公正な待遇を得ることのできる社会を実現することを目指しています。
パートタイム労働法は、パートタイム労働者と通常の労働者間の均等・均衡待遇の実現を図るため、以下の事項について定めています。
パートタイム労働者を雇い入れたときや、労働契約を更新したときには、「昇給の有無」、「退職手当の有無」「賞与の有無」、「相談窓口」について、文書の交付などにより明示しなければなりません(違反した場合、10万円以下の過料に処せられます)。
また、上記4つの事項以外についても、文書の交付などにより明示するように努めることが必要です。
パートタイム労働者に適用される就業規則の作成や変更にあたっては、パートタイム労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めなければなりません。
パートタイム労働者の待遇については、通常の労働者との働き方の違いに応じて、均等・均衡待遇の確保を図るための措置を講じなければなりません。
具体的には、「職務の内容(業務の内容と責任の程度)」および「人材活用の仕組みや運用など(人事異動などの有無および範囲)」の2つの要件を通常の労働者と比較することにより、下記のとおり講ずべき措置が定められています。
一旦パートタイム労働者になると、なかなか通常の労働者となることが難しいという現状があることから、企業には、パートタイム労働者から通常の労働者へ転換する機会を設けることが義務づけられています。
具体的には、企業は雇用するパートタイム労働者について、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
これらの措置については、措置の内容をあらかじめパートタイム労働者に周知するようにしましょう。
パートタイム労働者が自分の待遇について納得し、能力を有効に発揮しながら働けるようにするため、企業は、パートタイム労働者の雇入れの際に、雇用管理の改善措置の内容について説明することが義務づけられています。
また、パートタイム労働者から求められた場合には、待遇の決定にあたって考慮した事項について説明しなければなりません。また、説明を求められた際の労働者に対する不利益取り扱いは禁止されています。
具体的には、下記の事項について説明義務が課せられています。
企業は、パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために、必要な体制を整備しなければなりません。
対応方法としては、例えば、雇用している労働者の中から相談担当者を決めたり、外部専門機関に委託したり、次に述べる「短時間雇用管理者」を相談担当者と定めたりすることが挙げられます。
パートタイム労働者を常時10人以上雇用する企業は、「短時間雇用管理者」を選任するように努めなければなりません。短時間雇用管理者の業務としては、パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関して必要な措置を実施することや、労働条件等に関してパートタイム労働者の相談に応じることなどがあり、短時間雇用管理者には、人事労務管理について権限を有している人を選任することが求められます。
短時間雇用管理者を選任した際には、その氏名をパートタイム労働者へ周知するとともに、都道府県労働局に選任届を提出するようにしましょう。
パートタイム労働者から苦情の申し出を受けたときは、相談窓口などの事業所内の苦情処理制度を活用するほか、短時間雇用管理者が担当するなどにより、事業所内で自主的な解決を図るように努めなければなりません。
パートタイム労働者の活躍を推進し、パートタイム労働者がその能力を発揮しながら働けるようにするため、企業には下記のような取組が期待されています。
パートタイム労働者だからという理由のみで、時給○○円などと一律に待遇を決定するのではなく、働きや貢献度に応じて待遇を決定することが大切です。
働きに見合った待遇を得られることは、パートタイム労働者の労働意欲の向上につながり、結果として企業の生産性向上にも寄与するといえます。
パートタイム労働者と正社員の待遇については、バランスのとれたものにすることが大切です。待遇のバランスを考えるときは、それぞれの職務の内容や人材活用の仕組み・運用といった働き方の違いを考慮する必要があります。
パートタイム労働者と通常の労働者の業務分担をあらかじめ明確にすることで、職務の内容の違いを考慮した根拠のある待遇であることを説明できるようになります。このことは、パートタイム労働者の納得性の向上につながりますので、ぜひ取り組むようにしましょう。
いまや、パートタイム労働者は企業活動にとって無くてはならない存在です。パートタイム労働者の待遇を確保し、労働意欲を高め、能力を十分に発揮できる環境をつくることは、企業の大切な責務だといえます。各企業においては、パートタイム労働法に基づいた必要な措置を適切に講じるようにしましょう。
なお、2016年10月から社会保険の適用が拡大され、一定の要件を満たすパートタイム労働者も新たに社会保険の加入対象となりました。こちらも併せて確認しておきましょう。
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