優秀な人材を確保したいあまり、他社の内定を辞退させるなどの就活活動の機会を奪う行為は、就活終わらせハラスメント、通称「オワハラ」と呼ばれ、悪質な場合には違法行為とされることもあります。今回は注意すべきオワハラについて、発生してしまう背景と具体的な事例を解説します。
オワハラとは
オワハラは企業が就活生に対して行うハラスメントで、内定前に行われることが多いですが内定後のケースもあります。企業側が、内定が欲しい就活生の足元を見て、就活を終わらせてその企業に入社せざるを得ないような、強気の要求を行うことを指します。当然ながら就活生の側からは、就職先の選択肢を減らすものとして疎まれています。オワハラは主に有名でない中小企業が大企業に人材を囲われないよう先んじて行う傾向がありますが、オワハラを行ったことが内定者の反発を買って結果的に採用人数が減ってしまったり、更には口コミを通じて企業全体の評判が下がってしまったりする逆効果が懸念されます。
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オワハラが起こる理由
オワハラ自体は今に始まったものではなく、形態は違えど昔から行われてきました。ただしかつてのオワハラは強制的な要求といった類のものではなく、接待によって恩を着せて入社させるという側面が強く、ハラスメントとして糾弾されませんでした。
しかし現在ではオワハラを問題視する声が高まっており、それと同時に様々な事例が明るみに出ています。これは、この言葉の認知度がSNSを通じて高まったことに加え、企業の行う採用の面接時期が変更されたことに起因します。平成27年以前では就活の面接は4月1日より開始されていましたが、勉学が疎かになるという懸念から、日本経済団体連合会は平成29年より面接の開始時期を6月1日に変更するよう企業に要請しました。経団連に加盟する大企業のほとんどが面接時期を後ろ倒しにした一方で、この要請は法的拘束力を持たないため、非加盟の中小企業は依然4月1日より開始しています。そして、この開始時期の不一致を利用して、大企業に流れる前に人材を囲い込む目的でオワハラを行う企業が現れました。就活生としても、大企業に採用されなかった場合に備えて中小企業の内定を確保しておきたいため、中小企業の要求を無碍に断ることは難しく、しばしば応じてしまうという状況となっています。
オワハラの例
オワハラとそうでないものの線引きは時として曖昧になりますが、一般的にオワハラと呼ばれるものには以下のような典型例があります。
他の企業の内定辞退を強要する
内定を複数の企業から得ている就活生に対して「他の企業の内定を全て断ればその企業の内定を出す」などと言い寄る手法で、オワハラの中でも代表的なものとなります。中には面接中にその場で電話を掛けさせ、他の企業の内定を蹴ったことを確実に見届けるという場合もあります。
面接時期を被せる
こちらもよくあるケースで、他の企業の採用試験や面接を受けさせないために、面接を延長したり頻繁に行ったりして就活生の都合をつかせなくする手法です。大手企業が採用を開始する6月1日やその近辺の日程を全て面接等で埋める、内定者を長期間の研修に出向かせ研修に来なければ不採用にすると宣言する、など戦略は様々です。
恩を着せる
こちらは内定を出した後に行われる例で、企業の関係者がその企業の内定を得た就活生に食事をご馳走する、行事に誘うなどして、恩を売ると共に親密な関係となることで内定を辞退させにくくする手法です。前述のように昔から採られてきた手法ではあり、接待の側面が強くなりますが、こちらも現在ではオワハラの括りに入れられます。
推薦状を要求する
こちらは就活生に、大学の教授等の推薦状を提出するよう指示する手法です。推薦状を書いてくれた教授の顔を立てるためにも辞退しにくくなるという心理を逆手にとっているため、拘束力が高い傾向があります。
内定辞退の際に怒る
こちらは、就活生が内定辞退の意を明らかにすると企業側が怒り出すという手法です。その際、礼儀がなっていないなどの人格攻撃に留まらず、その就活生の所属する大学からは今後人を採らない、その就活生についての悪い評判を他の企業に吹聴する、などと言った文句で脅迫する場合もあります。
誓約書を書かせる
こちらは、特筆した理由が無い限り内定を辞退しない等の内容の誓約書に署名や押印させ辞退させにくくするものです。企業はこの誓約書を盾に取り以後の就活を断念させ、内密に就活を続けようものなら違法であると脅す場合もあります。
オワハラの対策
企業側はこのような、就活生に不当に不利益を被らせたり精神的負担を負わせたりする行為をしてはなりません。就活生には就活を満足の行くまで自由に行う権利があり、内定は企業と就活生の双方に断る権利があります。従って、たとえ誓約書にサインしたとしてもオワハラに法的拘束力はありません。そもそも内定と引き換えに取引するような企業は辞退した方が賢明です。
就活生は、企業側の目的が何なのかを見定めた上で自らの意志を主張することが重要であり、企業側もそのような就活生の意志を尊重することが求められます。オワハラも度を超せば犯罪となりますから、就活生を多数呼込みたいのであれば、オワハラを行うのではなく、むしろ就活生にとって魅力的な企業となる方が近道と言えます。
まとめ
優秀な人材を確保したい企業としては、他の企業との競争の中で就活生をいかに囲うかが悩みどころとなります。しかし就活生を圧迫するような、正当でない手法は評判を貶め、逆効果となる可能性が高いです。オワハラとならないよう注意を払い、公正な呼込みを行うことが重要です。