税申告の電子申告義務化を追いかけるような形で、2020年4月より労務関係手続きの一部の電子申告が義務化されます。義務化の対象は大企業だけですが、今後は中小企業においても義務化が進むと見られているため、早めの対応を心がけましょう。今回は、労務手続きの電子申告義務化の内容と、対象となる手続きの種類、電子申告の方法について解説します。
日本の行政手続きの多くは書面で行う必要があり、さらに、その書面を郵送もしくは官庁の窓口で提出しなければなりません。結果的に、電子手続きに比べると行政側・民間側のコスト双方が高いままでいます。そのような背景があり、2018年4月に政府の規制改革推進会議・行政手続部会より「行政手続コスト削減に向けて
(見直し結果と今後の方針)」という文章が発表されました。
同文章で電子申告の対象となるとされる手続きで人事労務に関するものは、大きく分けて社会保険に関する手続きと、労務管理に関する手続きとに分けられ、具体的には以下のような内容になります。
また、従業員の住所変更や氏名変更に関する手続きに関し、マイナンバー制度などを活用した住所変更届等の省略や、基礎年金番号だけではなくマイナンバーによっても手続きができるように取り組むとされています。さらに、次期ハローワークシステムとの連携などによりシステムの利便性の向上を図り、中小企業・小規模事業者がオンライン手続きを簡単に使えるようにするための施策が挙げられています。厚生年金保険などの一部の手続きについても、従業員の署名と捺印を省略できるようにすることが予定されています。
労働基準法上の手続きのなかでも特に申請件数が多い、
の3つの手続きについて、電子署名の省略などを進めることで現状1%未満の電子申請率を31%に上げていく。厚生労働省所管の雇用関係助成金は2020年度からのシステム稼動を目指し、申請などのオンライン化を進めていく。
上記のうち、電子申告が義務化されるのは社会保険に関する手続きとなります。義務化の対象となる法人は、今のところ大法人(資本金または出資金の額が1億円超の法人等)のみとされています。開始時期は「2020 年4月1日以降に開始する事業年度または年度より」とされており、企業自身ではなく社会保険労務士または社会保険労務士法人が大法人についての手続を行う場合も電子申請をしなければなりません。
電子申請は、行政ポータルサイトの「e-Gov」において行います。e-Govそのものは、使い勝手がそういいものとはいえません。まず電子証明書をそれぞれの法人で取得する必要があり、申請ファイルを作成した上で、管轄登記所で発行申請と手数料の納付を行わなければなりませんので覚えておきましょう。
他にも、e-Govにおいてはブラウザ画面で1件ずつ申請書を入力しなければならないので、申請件数が多くとも一括提出を行うことができず、そこまで時間の削減につながらないという問題もあります。しかしこちらについては、アプリケーションの導入で解決できます。申請データのAPI利用による提出に対応している人事労務のためのアプリケーションを利用して、そのアプリケーション上で書類を一括で作成して申請するのがおすすめです。審査状況の確認もできるアプリケーションもあります。
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今回の電子申告義務化の対象は大法人のみとなっており、中小企業の義務化がいつになるのかはまだ分かっていません。しかし、将来的に義務化の対象となる可能性は高いと言えるでしょう。上記で触れたようなアプリケーションを用いれば、基本的には導入時に多少の手間がかかるだけで済みます。長期的にはペーパーでやっていた手続きの事務コストを大きく削減できるので、事業の規模にかかわらず、電子申告の導入はできるだけ早く行った方が良いでしょう。
社会保険の電子申告義務化の対象は今のところ大企業だけですが、今後は中小企業にも広がっていくと考えられます。アプリケーションの選定などを今から行うなどの準備が大事になってくるでしょう。
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