社員のワーク・ライフ・バランスを向上し多様な働き方に対応するためには、所定外労働の削減に加えて休暇制度の充実が不可欠です。休暇制度には年次有給休暇以外にも、慶弔休暇や病気療養のための休暇などの法定外の休暇制度があり、一部の企業では誕生日などの記念日に取れるアニバーサリー休暇やボランティア休暇など独自の制度の導入が進んでいます。本記事では、法定外休暇の種類や制度化する際の注意点、メリットとデメリットについて解説します。
法定外休暇とは?
法定外休暇は特別休暇とも呼ばれ、会社が独自に定めた休暇制度です。法定でないため、有給か否か、いつ申請するかなども会社ごとに定めることが可能です。すべて自由に設定できるため、会社の特色が強く表れることになります。主に採用されている法定外休暇には、以下のようなものがあります。
- 家族に関する休暇
ファミリーサポート休暇
アニバーサリー休暇
子どもの誕生日休暇 - リフレッシュのための休暇
リフレッシュ休暇
ブリッジ休暇 - 社会に関する休暇
ボランティア休暇
裁判員休暇 - 万一に備えた休暇
病気休暇
犯罪被害者休暇
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法定外休暇のメリット
社員が出産や介護を理由に退職してしまうのは、会社にとって人材流出の痛手となります。法定外休暇を定めることで出産や介護と仕事を両立できるようになり、結果として離職率の減少が期待できます。
ほかの社員にとっても、有給休暇と組み合わせるなどして適度に休暇を取りながら働けるため、モチベーションの低下を防ぎ、仕事の質や効率の向上にもつながります。
これら全ては、ワーク・ライフ・バランスの向上を目指すものです。ワーク・ライフ・バランスの調和が取れると、より充実した生活を送ることで成長しながら働けるようになるため、会社側も社員の能力を最大限引き出すことが可能となり、ひいては会社の発展に貢献します。
法定外休暇のデメリット
一見デメリットがないように思える法定外休暇ですが、法定外休暇が無給と定められている場合には注意が必要です。そのような場合欠勤扱いになる可能性があり、そうすると出勤率やボーナスの査定に影響してしまいます。休暇を定めたがために出勤率が下がり、社員のモチベーションが低下してしまっては意味がありません。
また、そもそも法定の有給休暇の取得率が低い場合、新たに法定外休暇を定めたのにもかかわらずほとんど誰も使わず無駄になってしまう、という可能性も考えられます。
法定外休暇の実例
それでは、実際にさまざまな会社が導入している法定外休暇について、いくつか例を挙げて見てみましょう。
卸売・小売業A社
この会社が最近定めた法定外休暇は「サンクスホリデー」と呼ばれ、勤続5年目、15年目といった5年の節目に5日間、10年目、20年目といった10年の節目に10日間の有給休暇が与えられています。
同社はこの休暇の制定以前より、年に1度の長期休暇の取得を社員へ奨励していましたが、奨励ではなく制度化することで定着を図ろうとしています。最終的に休暇をとりやすい職場環境を作るのが目標です。
この休暇を利用してリフレッシュしてもらうため、「年度内に」「連続した期間で利用する」ことが条件として課されます。実際に利用者は海外旅行に行ったり自宅で休んだりするほか、年次の有給休暇と組み合わせてさらに長期の休暇にしたという事例もあります。
サービス業F社
創業40年のこの会社では、直近10年では結婚・出産・育児を理由とした退職者が1人も出ていません。その理由として、結婚した社員をターゲットとした法定外休暇の充実が挙げられます。例えば、結婚を控えた社員のための「本人の結婚休暇」は式後1年以内に7日間の有給休暇が取得可能です。他にも、子どもの結婚式前後に1日の休暇が取得できる「子の結婚休暇」、小学校就学前の子どもを養育するための「子の看護休暇」といった法定外休暇を定めています。
さらに、男性の子育ても支援する「育児・育メン休暇」を新たに検討しています。時代やニーズに合わせて臨機応変に制度を改定、追加する姿勢に社員も喜んでいるようです。
教育業N社
この会社は社員からの要望により「不妊治療休暇」を導入しました。年間20日、時間単位で取得可能なため通院しやすい環境になっています。ただし、対象者が限定されるため無給となっています。
同社はもう1つ、職場外での人脈構築やスキルアップを図るための「研修休暇」を設定しています。これは勤続9年目に付与される連続5日間の休暇で、有給の上に補助金として10万円が支給されます。事前の計画書作成とレポートの提出が定められており、ボランティアや異文化交流などのために活用されています。
まとめ
法定外休暇は会社ごとに自由に定められる分、社員の年齢層や生活環境を考慮して適切に設定する必要があります。適切な休暇を制定できれば社員のモチベーションアップにつながり、事業の発展にも良い影響を及ぼします。
法定外休暇および有給休暇を取得しやすい環境を作り、社員とともに発展していけるように工夫していくことが大切です。