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内定者事前研修を実施する際の具体的な内容や注意点は?

内定者に行う事前研修は、働くために必要最低限なスキルの習得や、会社への定着といった効果を得ることができます。一方で、事前研修を実施する場合、期間中の賃金体系をどうするかなど、いくつか注意するべき点が存在します。今回は内定者事前研修について、実施するメリット、注意点について解説します。

内定者事前研修とは

現在の就職活動は6月から9月にかけて盛んに行われ、10月初旬には多くの企業で内定式が執り行われます。しかし、そこから実際に内定者が入社して業務が始まる新年度の4月まではまだ半年が残っており、内定式の前の期間も含めると、最大10ヶ月ものブランクがあります。内定者事前研修はこの期間を利用して、会社の業務を始めるにあたって最低限必要な知識・スキルやツールの共有、あるいは内定者同士のアイスブレークを目的として行われます。従って入社後の教育研修とは主眼が異なるということがポイントです。

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事前研修のメリット

会社への定着

近年の就活生は、平均で1人30社以上の企業にエントリーすると言われています。複数の企業から内定をもらった場合、最終的に1つの内定先に就職を決めるにあたり他企業には「内定辞退」を行います。優秀な人材ほど多くの会社から声をかけられますから、企業の側でも、彼らが自社の内定を辞退したくなくなるような魅力的な方策が必要です。内定から入社までのブランク期間における内定者事前研修の実施は、「職場の和やかさ」や「職務の融通が効くこと」などのポジティブな特徴を内定者に実際に体験させることで、内定者が自社に定着するための動機付けとして機能します。

内定者の不安解消

内定をもらってからも、「自分のライフスタイルとこの企業は相性がいいのか」「キャリア選択の自由はあるのか」「イメージと現実が合致しているのか」など、内定者の心の中には様々な不安が存在します。このような不安がきっかけとなっての内定辞退・あるいは就業後間もなくの転職の数が増えているのも事実です。こうした事態に陥らないように、事前研修で仕事内容を実際に内定者に見せたり、採用担当と意見交換する機会を設けたりして入社後の明確なイメージを持てるようにすることで、内定者が抱えている不安を軽減させることが可能です。

就職後のスムーズな統合

企業ごとに、従業員が当たり前のように共有している常識・スキル・ツールなどが存在します。内定者は就職前では完全に部外者であり、それらの前提が共有されていない状態で4月から働き始めると、業務に必要な事柄をゼロから覚えなくてはなりません。これは効率が悪いだけでなく、内定者自身の心理的ストレスにもつながり、最悪の場合には転職という結果を招きかねません。また、特定のITツールを使っている場合、使いこなせれば非常に便利ですがその導入にはきちんとしたレクチャーが必要です。入社後の順調なスタートを切るために、内定者事前研修では丁寧な業務説明や、スキル習得のための予備講習などを実施することができます。

内定者の特徴把握

実際に企業の業務に関わったり、直接的な交流の機会が増えたりする中で、人事部は内定を出すまでの面接やグループディスカッションからだけでは把握することのできなかった内定者一人ひとりの個性を見つけることができます。ここで得た情報を4月からの配属先や配属後の接し方などに反映させることが可能となり、会社と内定者双方にとってのミスマッチを防ぐことにつながります。

内定者同士のつながり

内定者同士が4月を「お互い初めて顔をあわせる」という状態で迎えるのと、「様々なトレーニングや共同作業を繰り返した仲間」という認識を持った状態で迎えるのとでは、その後の職務に大きな違いが生まれます。入社を前に内定者が同期としての仲間意識を互いに抱く誘導できれば、その後の仕事の生産性が大きく向上するのみならず、会社への親しみも湧いて内定辞退の数を大きく減らすことができるでしょう。

 

事前研修の注意点

押し付けがましい教育はNG

内定者事前研修の目的の1つに、内定辞退を予防するという要素があります。ですがそれに躍起になるあまり「絶対にこの会社に残って欲しい」という気持ちが前面に出すぎた事前研修を行ってしまうと、かえってモチベーションの面で内定者との溝が深まってしまうかも知れません。内定者一人ひとりの性格を見極め、彼らに一番効果的に会社の魅力が伝わる方法で事前研修を行いましょう。特に、内定者の多くは大学生活最後の大仕事である卒業論文執筆の真っ最中ですので、研修のせいで学業が疎かになってしまうような事態はやはり避けた方が良いでしょう。

給与を出すか出さないか

まず法的な原則として、労働時間に労務を提供したものに対しては、その対価として賃金を支払う義務が生じます。従って、内定者事前研修の参加者に給与を出すかどうかも、その研修が労働時間として認められるかどうかにかかっています。これは研修の内容にもよりますので、自社の内定者事前研修が労働時間にあたるか否かは専門家に聞くのが一番確実ですが、「参加が義務であるもの」は労働時間と見なされることが多いと言えるでしょう。
また、仮に内定者に対して「自由参加」と通知した研修であっても、その研修が上述した「基礎的なスキル、ツールの習得」を目的とし、事実上全員が参加することが望まれているようなものであるならば、労働時間と認められる可能性が高いです。

これらの決まりを無視して無給で内定者事前研修を行った場合、法により罰せられることも充分にあり得ます。内定者事前研修を企画する段階で、労働時間の基準を満たすかどうかをきちんと確認し、研修の概要・給与の有無を内定者に事前に丁寧に報告しておくことが望まれます。

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事前研修の例

内定者事前研修は、その目的に応じて様々な方法が考えられます。特に大切なのは「基礎知識の定着」と「内定者の不安解消」、それに伴う「会社への定着」です。

内定者との面談

内定者が採用面接の時には見せることのなかった期待や不安など、会社への率直な気持ちを聞き出すには、面と向かったヒアリングが1つの有効な手段となります。適度な距離感を保ちつつ、内定者の心の中にある要望をつかみとりましょう。その過程で内定者一人ひとりの特徴・性格も把握でき、その後の研修や4月からの配属先の決定に活かすことができます。

オンラインでのレクチャー

大学に在学する内定者などは、未だ社会人の基本的なマナーやスキルを身につけていないこともあります。それが顕著に現れるのがビジネス文書の書き方などで、定型文や言葉遣い、文章のレイアウトなどをレクチャーする必要がありますが、これらは実際に会わずともオンライン上のやり取りで行うことができます。例えば「このような題材の文章を自由に作成し、提出すること」という趣旨で課題をメールで送り、出来上がった文章に対して会社側の担当者がコメントしながら正しい書き方を教えるといった方法が考えられます。対面でなくても対応が可能な分野は、オンラインで効率よく研修を行っていきましょう。

職場訪問

内定者を会社内の様々な部署の現場に連れていき、その様子を見せたり社員と交流をさせたりします。内定者に職場の雰囲気を直接理解してもらい、具体的な業務内容を把握してもらうことが目的です。

内定者懇談会・合宿

内定者同士のつながりを深めるため、会社主導で同期の内定者を集めて懇談会を開きます。またその延長で、内定者向けに合宿を行うことも効果的と考えられます。合宿は、内定者同士が互いの人間性や特徴を理解して協力しやすくなる環境を整えるのみならず、共同で様々な課題や障害に挑戦しそれをクリアする経験を積むことで、強い結束を内定者の間にもたらします。わざとらしい、あるいは押し付けがましいような課題ではなく、内定者が率先して解決したいと思えるような課題を設定する必要がありますが、その際には「課題ごとに何を内定者に伝えたいか」を事前に明確にしておきましょう。

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まとめ

内定者事前研修は、4月から会社に入って働く上での基礎知識の共有と、内定者が持つ不安の解消、それに伴う会社への定着をもたらす重要な企画です。一方、給与を与える必要があるかどうかを法に照らし合わせて調べる必要があるなど、注意点もありますので、それらを意識しながら効果的な研修を内定者に提供しましょう。

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