ヒヤリハットとは、仕事中に起こる「ヒヤリ」「ハッとした」危険な出来事のことを指します。過去の研究では1件の重大事故の背景に300件のヒヤリハットがあるとされており、ヒヤリハットを減らすことで、社内のリスクマネジメントにつながります。今回は、ヒヤリハットの意味や事例、報告書の作成について解説していきます。
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重大な事故になりかねないヒヤリとする体験や、ハッとした経験のことを「ヒヤリハット」といいます。労働災害の発生比率に関する統計をとったアメリカのハーバード・ウィリアム・ハインリッヒは、5,000件以上の事故事例を分析する中で、「1:29:300」という法則を見つけました。この法則は、1件の重大事故には29件の軽傷事故と300件のヒヤリハット事例があるというもので、「ハインリッヒの法則」や「ハインリッヒの災害トライアングル定理」「傷害四角錐」とも呼ばれています。ヒヤリハット事例は、危険ではあったものの事故にはいたらなかった事例のため、報告や事例の共有が行われないことが多くあります。しかし、ヒヤリハット事例の積み重ねが大事故につながりかねないことを忘れてはいけません。
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厚生労働省「職場のあんぜんサイト」や中央労働災害防止協会「安全衛生情報センター」、公益財団法人テクノエイド協会ホームページなど、多くの自治体や事業者がヒヤリハットの具体的な事例を紹介しています。
ヒヤリハット報告書の作成は、実際に起ったヒヤリハットの事例を集め、分析し、対策を考えるために大切なものです。ヒヤリハット事例をなるべく多く集め、ヒヤリハットが起こった原因と、どのような対策を取るべきか考えることで、労働災害を未然に防いだり、再発を防止したりすることができます。
ヒヤリハット事例の報告が面倒だと感じている人や、「たまたま起きたこと」「注意していれば大丈夫だ」と考えている人も多いので、報告書が提出されないことも少なくありません。しかし、より多くのヒヤリハット事例を集めることが、将来起こりうる事故について考えるきっかけになるため、報告書の作成は省いてはなりません。
現在、日本にはヒヤリハット事例に関する法律がありません。ヒヤリハット事例の報告義務や報告書の保管期間、報告書の書式など、ヒヤリハット報告書に関する決まりは企業が独自に定めています。企業の多くは、全国安全週間の期間中や現場単位で定められた期間に、ヒヤリハット報告書を提出するように指示を出しています。企業によって報告書の書式は異なりますが、どの書式であっても、5W1H(いつ、どこで、誰が、何をしたら、どうなった)の記入は必須です。ヒヤリハット報告書に記載することが多い5W1H以外のものとしては、ヒヤリハットが起こった原因についての考察や、考えられる対応策の提案などがあります。
ヒヤリハットは、いつ、誰が体験してもおかしくないアクシデントです。大きな事故につながらなかったからといって報告を怠ったり、報告書の作成が面倒で作成しなかったりした場合、次に起こるのは大事故かもしれません。あなたの報告が、事故を未然に防ぐ可能性もあります。ヒヤリハットは軽視せず、報告することを心がけましょう。
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