働き方改革において、「働く人の視点に立った改革」が重要視されており、日本企業の人事制度についても抜本的な改革が迫られています。特に、近年組織のフラット化が進んできたことによって、新入社員が係長、課長、部長といったように画一的に昇進していく人事制度に代わり、従業員がキャリアを選択できる「複線型人事制度」に注目が集まっています。本記事では、そんな複線型人事制度の特徴、メリットとデメリットについて解説します。
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近年、企業内における働く人の価値観やキャリアに対する考え方、及び人材の多様化が加速しています。そのため、多様化に合わせて働く人を主体とした人材マネジメントシステムの必要性が高まっており、その期待に応えるのが「複線型人事制度」です。
従来の画一的な人事制度に代わって、複線型人事制度では企業内に複数のキャリアコースを設定するというもので、複数の選択肢を用意することによって働く人が主体的にキャリア形成できるようになるというのが最大の特徴です。
では、どのような基準に基づいて複数のキャリアコースを設定すればよいのでしょうか。以下、2つのタイプの複線型人事制度についてご紹介します。
人材をベースにする際は、働く人の「意思」および「適正」に基づいて人材を活用するコースを設定します。キャリアに対する意思の違いによって以下の通りに人材をグループ分けすることができます。
このように、主に3種類の人材群に分けることができます。また、適正に基づいてグループ分けを行うと、
となり、こちらも主に3種類の人材群に分けることができます。それぞれの人材群に合わせたキャリアコースを設定することで複線型人事制度が実現可能です。
人材群ではなく、職群をベースにした複線型のキャリアコースの形成も、もちろん可能です。具体例として、以下の職群にグループ分けすることができます。
それぞれの職群に特化したキャリアコースを形成することで、社員を専門家として育成することも可能です。一方で、職群に基づいてキャリアコースを形成する際には、それぞれの職群の役割や責任、企業内における位置付けを明確にすることが大切です。
社内に複数のキャリアコースを用意することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。複線型人事制度のメリットについて見ていきましょう。
複線型人事制度では仕事内容や勤務地、キャリアに対する意思を基づいたコースを選ぶことができます。そのため、ライフスタイルや人生設計に合わせた働き方の実現が可能になります。
キャリアに対する社員の希望をより反映することができるため、モチベーションアップに繋がります。そのため、モチベーションアップによって業務効率の向上が期待でき、企業全体としての生産性を向上も図ることができます。
職種でキャリアコースを選んだ場合は、異動の際に突然馴染みのない分野の仕事に配属されるなんてことはありません。自身で選んだ職種や専門分野のコースを辿ることになるため、年数を重ねるごとに経験を積み、実際に活かすことができます。
複線型人事制度を導入する際には、形成するそれぞれのキャリアコース内でのルール作りや昇給システム、給与体系等を構築する必要があります。そのため、導入に負荷がかかってしまいます。
複線型人事制度では画一性が保たれていない場合に、コース間での給与やルールの差からかえって社員の不満を招く恐れがあります。そのため、キャリアコースを形成する際には、それぞれの職群の役割や責任、企業内における位置付けを明確にすることが大切です。その上で、配属の際には社員に対する十分な説明が必要となります。
係長、課長、部長…と昇進する従来の画一的な人事制度に代わって、働く人が主体的にキャリアコースを選択できるようになるのが複線型人事制度です。社内に複数のキャリアコースを用意することで社員における価値観や多様性に応えることができます。導入コストがかかってしまう等の難点もありますが、社員のモチベーションアップによる生産性の向上も期待できます。是非、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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