マミートラックとは、母親になった女性が職場に復帰した際に、担当業務や部署、勤務時間を変更されてしまい、その後のキャリア形成が阻害されてしまうことを指します。マミートラックによって、復職後の女性社員のモチベーション低下が起きるだけでなく、企業のイメージダウンにも繋がります。そのため企業は社内研修などで女性社員からの意見を聴く機会を作り、働く女性への理解を深めましょう。また、フレックスタイム制の導入などによって、仕事と子育ての両立がしやすい環境を作るのも効果的です。
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育休・産休から復帰した女性が昇進・出世コースから外れてしまう現象のことです。まるで陸上のトラックを走るように同じ場所を延々と回っているような感覚に陥ることから呼ばれています。子育て中の女性は時短勤務をせざるを得なかったり、早退しなければならなかったりすることから、比較的責任が軽い仕事を任せられがちです。その結果、キャリアアップが困難になる傾向にあります。この言葉は、子育てとキャリアの両立を望む女性のために育児休暇などの制度の整備を推進することを目的としてアメリカで生まれました。
両立支援制度の利用が女性に偏っていることが、マミートラックが発生する原因のひとつです。背景には女性に対する職場のバイアスがあります。「女性は家事や育児を率先してやるべき」「女性は責任の重い仕事はやりたがらない」という思い込みを持つ人が職場に多いと、職場復帰後の女性社員に無難な仕事ばかり与え、マミートラックに陥りやすくなるのです。また、フレックスタイム制や時短勤務、リモートワークなどの制度の未整備もマミートラックを引き起こす原因になり得ます。これらが未整備の場合、仕事と家庭の両立が難しく、遅刻や早退、欠勤が増え、人事評価に悪影響が及び、キャリア形成が阻害されてしまうためです。
なかにはマミートラックに乗りたいと考える社員がいることに留意する必要があります。キャリアアップをしていきたい人もいれば、生活費だけ稼げれば良いという人もいるように、キャリアプランは人によってさまざまです。まずは職場に復帰する前に社員が希望するキャリアプランをヒアリングし、理想とする働き方を知ることが大切です。1on1ミーティングを実施して社員の考え方を聞くことで、社員の心理的安全性も高まります。マミートラックは悪いものと捉えすぎずに、個々人の意見を踏まえた勤務形態がとれるようにしましょう。
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上昇志向が強く育休・産休前との業務や待遇の差が大きいほど、仕事のやりがいが減少しモチベーションの低下を引き起こすでしょう。自分の意志に反して復職後に重要なポジションから外されたり、単純な仕事しか任せてもらえなかったりする状態が続けば、社員のメンタルヘルスに重大な影響を及ぼしかねません。周囲の社員においても、新しい人員を確保することなく業務をカバーすることになれば、自分の担当ではない業務が増えるストレスからモチベーションの低下につながります。
育休取得率や女性管理職の割合から、「この会社では子育てしながらキャリアアップしていくのは難しい」という印象がつけば、企業のイメージダウンにつながります。採用率の低下だけでなく、離職率が高まる原因にもなるでしょう。人材獲得が困難になれば人手不足が常態化し、1人あたりの業務量が増加することでさらに退職者が増えるという悪循環に陥る可能性があるのです。
マミートラックによってキャリア形成が阻害されている企業では、女性の管理職登用を進めることが困難です。2022年7月より、労働者が301人以上の企業において「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立」の情報開示が義務付けられています。「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」では、男女の賃金の差異を必ず開示しなければなりません。女性のキャリア形成が阻害されている状況が続けば、男女の賃金の差異が広がることになるでしょう。マミートラックによって、女性幹部の育成スケジュールが長期化しないためにも早急に対策を講じる必要があるのです。
復帰前に加え、復帰後に定期的に1on1ミーティングを実施して、女性社員からの意見を聴く機会を作りましょう。女性社員は復帰後に希望する働き方や担当したい業務について上司に事前に伝えておくことで、復帰することへの不安を軽減できます。また、実際に子育てをしていくなかで働き方に関する希望が変わるかもしれません。1on1ミーティングは復帰後も定期的に実施することが大切です。すべての希望に対応できるとは限りませんが、積極的に意見を聴くことで働きやすい職場をつくるためのヒントを見いだせるでしょう。
テレワークや時短勤務、フレックスタイム制などの制度を育児中の社員だけでなくすべての社員が利用できるようにすることも有効です。多様な働き方を求めている人は育児をする社員だけではありません。すべての社員が多様な働き方に関する諸制度を利用できるようになることで、不公平感の解消も図れるでしょう。すべての社員が多様な働き方ができることで、マミートラックが起こりづらくなります。
自分の仕事ぶりが正当に評価してもらえないと、モチベーションの低下を引き起こすことになります。仕事の評価が量的評価による場合、時間をかけるほど有利になるため時短勤務で働いている社員は不利になってしまうでしょう。従って、量を評価するのではなく、時間当たりの生産性を評価する必要があります。時短勤務で働いている社員も平等に評価できるように、評価制度を見直しておくことが重要です。
今回は、マミートラックの概要やその問題点、解決策について解説しました。マミートラックの捉え方は人によって様々です。モチベーションの低下を引き起こす社員もいれば、マミートラックに乗りたいと考える社員もいます。まずは、1on1ミーティングを実施し、復帰後に社員がどのような働き方を希望していることか直接意見を聴くことが大切です。育児をする社員はもちろん、すべての社員が働きやすい職場環境にするために、誰もが利用できる制度の導入を検討しましょう。
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