社会経験のない新卒の採用と比べて、中途採用では即戦力となる人材を手に入れることができます。しかし、採用する側とされる側の間に入社後の待遇や給与に関して見解の相違があると、思わぬトラブルへ繋がることもあります。今回はそうした事態に備えて、中途採用を行う際の注意点を解説していきます。
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一括採用が一般的な新卒採用と異なり、中途採用は通年で行っているという企業が多いでしょう。そのため中途採用の場合は、新卒採用のように求職者が決まった時期に行われている説明会に参加しているとは限らず、企業について十分に理解していないかもしれません。求職者が面接よりも前に直接企業説明を聞く機会を持てなかった場合、一次面接で企業説明を行うのが一般的ですが、そこで十分に会社の情報を伝えることが重要です。アピールポイントだけではなく、今後の課題も含めた会社の実状をしっかりと伝え、入社する前と後でのギャップを防ぐことがその後の離職を防ぎます。また、求職者からの質問にもしっかり答えられるようにしましょう。
特に採用ブランディングに力を入れている企業だと、ウェブ上の情報と実状が大きく違うということがしばしば起きます。また、成果報酬型の人材エージェントを利用している場合、人材会社は求職者に企業の良い面ばかりを伝えて成約に繋げようとする傾向があるため、期待と現実の落差に特に注意が必要です。ミスマッチングを防ぐためにも、面接担当者は採用過程のなるべく早い段階から積極的に求職者とのコミュニュケーションを取っていくことを意識するようにしましょう。
職務経験のない新卒を採用する場合は、当初の給与を学歴などに応じて一律に決めることができます。他方、中途採用者の給与は各人の細かな経歴や事情が大きく影響するので、画一的に決めることは容易ではありません。賃金を決定する方法は主に以下の2つがあります。
賃金を決定する際の考え方の1つに、「同一価値労働同一賃金の原則」というものがあります。これは、同じ内容や同じ価値の仕事をしている労働者に対し、企業は同じ賃金を支払うべきであるという考え方です。この考えによれば、求職者の給与を決める際には前職や学歴ばかりでなく、求職者が行う予定の仕事と同等の仕事をしている既存の社員の給与との整合性も考慮する必要があります。
一方で、企業側の通例の適用ではなく、求職者に合わせる方法も一般的です。この場合、求職者が以前働いていた企業での待遇に応じて給与を決めることになります。「職能給」「年齢給」などの年功序列型賃金を採用している日本企業ではこちらの方法が取られることが多いですが、同程度の能力で同程度の仕事をする社員の間で給与が異なるという事態が発生するかもしれません。特に給与水準の高い大企業で勤務していた求職者を採用する際には、能力や適性をよく見極めて決定しなければ会社にとって想定以上のコストとなってしまう可能性があります。
給与は入社後に最もトラブルが生じやすい領域です。どのような決め方をするにしろ、採用の過程でなぜその給与になるのかという根拠を求職者に十分に説明し、納得感を持って働いてもらうことが重要でしょう。
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履歴書や職務経歴書の情報は求職者の基本的情報として確かに重要ですが、書類を信頼しすぎずに面接に重きを置くことが肝心です。書面では知ることができない点を面接から判断しなければなりません。
中途採用の社員はすでに他の企業の文化に染まっていることも多く、まっさらな新卒社員と同じように新たな環境に適応することは容易でないかもしれません。求職者が企業に対してどのような期待をしているのか、またその人自身の人となりは、自社に溶け込んでもらえるかどうかを考える上で非常に重要な情報です。これらの情報は言語化が困難である上、また求職者の側も実際の希望を書面に書くことは稀なので、対面の面接を重ねて本音ベースで話せるまでになることが理想的です。
履歴書からは、どの会社でどの程度の期間働いたかということしか読み取れません。転職の理由を面接で質問することで本人のキャリア観を明らかにして、ミスマッチングを防ぐべきでしょう。人材エージェントからの紹介の場合、エージェントは事前に求職者と面接し、転職理由について推薦書に細かく記載があることもあります。しかしそれらの記載は一般に求職者の印象を良くするために美化して書かれていることが多いので、面接の場でも改めてこれまでの転職の経緯を確認しておくべきでしょう。
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一般論として、中途採用のプロセスに新卒採用ほどの時間をかけることは望ましくありません。転職をしようとしている人はいくつかの企業を併願していることが多いため、優れた人材を確保したい中小企業などの場合は特に、より短い時間で候補者の採用を決定することが重要になります。中途採用について通年採用を行っている企業は多く、能力のある優秀な人材は各社がこぞって獲得しようとします。その中で自社だけが緩慢な採用フローを敷いていると、有望な人材は他社へ逃げてしまいます。面接から内定通知までのフローを、各ステップで企業側としての求職者への姿勢をはっきり見せながら、スピード感を持って進めていくことが重要と言えるでしょう。
中途採用は企業が即戦力を得るための重要な手段です。しかし、採用に至るまでの過程で説明不足や確認不足があるとミスマッチングが起き、採用した人が戦力になるどころか思わぬコストになってしまうという恐れもあります。企業と求職者双方にとってベストな選択が取れるように、適切な選考プロセスの設計が必要であると言えるでしょう。
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