従業員のメンタルヘルス対策は、企業にとって大きな課題となっています。職場内のメンタルヘルス不調者を減らし、休職者や退職者を発生させないためには、企業がメンタルヘルスケアについて理解を深め、適切な労務管理をすることが大切です。今回は、メンタルヘルス対策の必要性や現状、厚生労働省が勧める4つのメンタルヘルスケア、ヘルスケア対策に便利なサービスについて紹介します。
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厚生労働省による労働安全衛生調査によると、約6割もの労働者が、仕事や職業生活において強い不安や悩みを抱えており、メンタルヘルス不調者を抱える職場も増加傾向にあります。仕事をするうえでは、業務内容や職場の人間関係など、さまざまなストレスの原因に対処しなければなりません。しかし、近年では、産業構造や経済状況の変化によって、労働者を取り巻く環境は大きく変化していると考えられます。高度な経営判断や方針転換は、従業員の労働環境へ大きく影響するため、従業員がストレスを抱え込む状況にならないよう、十分な配慮が必要です。
2020年の労働安全衛生調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は 61.4%に達しており、2019年度の調査の59.2%から、わずかに上昇しています。主な取組み内容についての回答は、「ストレスチェックの実施」が 62.7%と最も多く、次いで「職場環境等の評価および改善(ストレスチェック後の集団ごとの分析を含む)」が 55.5%という結果でした。一方で、医療機関の利用や、事業所内の産業保健スタッフなどの選任、職場復帰支援プログラムの策定など、具体的な取組みを行っている企業は多くないことがわかりました。
ストレスチェックは、従業員が自身のメンタルヘルスの状態を知る「一次予防」としての役割が大きいため、ストレスチェックの結果から、二次予防、三次予防の効果を発揮するより具体的な施策を講じる必要があるでしょう。
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メンタルヘルス不調の原因となる、職場のストレスを最小限に抑えましょう。厚生労働省による、2012年度の労働者健康状況調査によると、職業生活におけるストレスの原因として最も多いのが「人間関係」(41.3%)、次いで「仕事の質」(33.1%)、「仕事の量」(30.3%)でした。この上位3つの原因は、一見それぞれ異なりますが、実際は根底で深く絡み合っていると考えられます。
つまり、従業員の適性に合わせた業務内容を、勤務時間内で終わる量だけ与えれば、残業をすることなく、十分な休息を取りながら働くことができます。そのような働き方においては、精神的に抑圧される機会が少ないため、各々の従業員が過度なストレスを抱えにくくなり、人間関係のトラブルも減らすことができるでしょう
ストレスの原因が職場内にある以上、労務管理の側面からアプローチできることは少なくありません。職場の管理監督者は問題が深刻化する前に、職場の様子や従業員の働き方をよく観察し、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす要因を探りましょう。また、休日や労働時間などについても、しっかりと管理し、健康的な労働環境を構築することが大切です。
メンタルヘルス不調には、早めの休息や治療が効果的です。うつ病などの精神疾患は、症状が目に見えるわけではないため、休職するまで周囲が気付かないこともあります。監督者は、日頃から従業員の様子を良く気にかけ、少しでも異変があればすぐに気付けるようにしましょう。特に、業務内容や勤務時間など、労働環境に大きな変更が生じた場合は、注意が必要です。また、勤怠管理システムなどを導入していれば、労務管理の段階で、従業員の不自然な遅刻や欠勤、早退がすぐにわかります。該当部署に対し早期にアラートが出せれば、メンタルヘルス不調を悪化させる前に対策することも可能でしょう。
メンタルヘルス不調によって業務ができなくなってしまった場合は、業務から離れ、十分に休息することが必要です。休職者に対して、企業側にできることはないと思われがちですが、休職中の適切なフォローによって、復職時期を早め、退職を防ぐことに繋がります。一般にメンタルヘルス不調者には真あ面目な性格の人が多いため、焦ってすぐ復職しようとしたり、休職していることに罪悪感を持ってしまったりすることがあります。このような精神状況は心身の回復を妨げる原因になるため、休職者に対する不必要な励ましや、急かす行為は逆効果です。メンタルヘルス不調者への対応は、産業保健スタッフや産業医、専門的な教育を受けた担当者を中心に行うと良いでしょう。
また、復職する際も、慎重に進める必要があります。本人や産業医と良く相談して復帰タイミングを決めましょう。安易にもといた職場に戻すのではなく、環境を変えたり、業務負荷を軽くしたりするなど配慮が必要です。もとの働き方ができるようになるまでは、段階を踏んで慣らしていくことが大切です。
厚生労働省はメンタルヘルスケアにおいて「4つのケア」を継続的・計画的に行うことが重要であるとしています。「4つのケア」は、従業員自身・監督者・産業保健スタッフ・社外の専門機関が連携し担当者が協力し、役割を果たすことで効果を発揮する仕組みになっています。
「セルフケア」とは、従業員が自身でメンタルをケアできることを目的にしています。メンタルヘルス不調者のなかには、メンタルヘルスへの理解が不足しているために、間違った考え方や行動によって不調をさらに悪化させてしまう人が少なくありません。ストレスやメンタルヘルスとうまく付き合うためには、正しい理解を深める必要があります。メンタルヘルスに関しては、厚生労働省からもさまざまな研修ツールが提供されているため活用すると良いでしょう。
「ラインによるケア」とは、従業員を管理・監督する立場から行うメンタルヘルスケアをいいます。職場の管理監督者は、毎日従業員と接しているため、従業員の変化にも気付きやすい立場にあります。日頃から従業員との信頼関係を構築し、従業員がさまざまなことを話しやすい雰囲気がつくれると良いでしょう。
また、明らかに大きなストレス負荷を与えている状況を改善していくのも、管理監督者の重要な役割です。職場環境や業務内容などを、従業員一人一人の能力や考え方に合わせ柔軟に変化させていくことが大切です。
事業場内産業保健スタッフは、セルフケアおよびラインによるケアが効果的に実施されるよう支援を行うとともに、企業のメンタルヘルスケア計画のなかで中心的な役割を担います。メンタルヘルス計画とは、セルフケアやラインによるケアなど、現場におけるメンタルヘルス対策では手が届かない、より専門的な領域や個人の健康情報に深くかかわる総括的なサポートをいいます。
事業場外資源とは、事業場外の医療機関や都道府県産業保健推進センター・地域産業保健センター、従業員支援プログラム(EAP)機関などのことを指します。事業場外資源によるケアは、企業が抱える問題や求めるサービスに関して、専門的な知識を有する事業場外資源を活用することをいいます。専門機関のアドバイスやサポートを得ることで、メンタルヘルス対策の効果はより高まるはずです。
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somu-lier toolは、従業員のコンディションを可視化するツールです。テレワークや新型コロナウイルス感染症に対応しており、従業員のわずかな体調の変化に気付ける機能が多数搭載されています。例えば、体調や勤怠などの状況は表やグラフを用いて一覧表示されるため、管理者は従業員の些細な変化に即座に対応できます。また、新型コロナウイルス感染症の陽性報告機能も搭載されており、陽性者や濃厚接触者の経過観察を1つのシステムで管理できる点も魅力です。
somu-lier toolでメンタルヘルスケアを行う場合、まず、従業員がアプリ上で打刻を行います。打刻の際に、合わせて問診が可能であり、体調やメンタルに関することなど、管理者が選んだ問診内容を元に回答します。管理者側は、従業員の心身の健康状態を、ダッシュボードで一括して確認できます。メンタル不調に早めに気付けることで、声を掛けたり、休暇取得を促したり、といったアクションを即座に行えます。
メンタルヘルス不調は、ストレスを感じる状況が続けば、誰にでも起こり得えます。不調の原因はさまざまですが、企業側がしっかりと対策することで、職場が原因となるメンタルヘルス不調者の発生は減らすことができます。全社が一体となってメンタルヘルスケアに努め、誰もが安心して働ける職場をつくりましょう。
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