貸借対照表は資産、負債、純資産の3種から構成され、これらは経営状況を判断するためにとても重要な指針となっています。そのうちの1つである負債は、債務を負っている状況を表し、流動負債と固定負債の2つに分けることができます。今回は負債の概念と2つの負債の分類基準、流動負債と固定負債の違いを勘定科目の観点から解説していきます。
目次
貸借対照表は財務諸表の1つで、会社のある時点での財務状況を表し、投資家や銀行、取引先は貸借対照表によってその会社の可能性や信頼性を判断しています。貸借対照表は資産、負債、純資産の3つの項目から構成されており、左側に資産、右側に負債と純資産を記入します。資産は負債と純資産を足し合わせた金額に等しいので、左側の総額と右側の総額は一致します。両者のバランスを見るという貸借対照表の性格から、バランスシートと呼ばれることもあります。
貸借対照表を構成する3つの項目のうち、負債とは会社が返済しなければならない債務のことを指します。将来返済しなければならないお金は銀行などからの融資に限らず、まだ支払っていない商品代金にあたる買掛金や未払金も会計上含まれます。
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ある債務が流動負債と固定負債のどちらにあたるかは、その債務の支払い期限がいつかによって判断されます。短期間に支払期限が到来する債務は流動負債に、支払期限の到来が1年以上後となる債務は固定負債に分類されます。これを1年基準(ワン・イヤー・ルール)と呼び、この1年は決算日の翌日から起算して計算すると企業会計原則で定められています。
流動負債は、日常的な営業取引による金銭の循環(正常営業循環)において発生する負債が主で、他方の固定負債は、より長期的なものである長期借入金や、退職給付引当金などの将来のための引当金、社債などの長期で返さなければいけない債務を含みます。
貸借対照表においては、流動負債と固定負債の書かれる順番が決まっています。基本的には、貸借対照表の上から順番に、より短い期間で返済しなければいけないものを記入します。したがって、上の方に流動負債が、下の方に固定負債が書かれます。
買掛金や支払手形など、すでに仕入れている商品についてまだ支払っていない代金の額を仕入債務と呼びます。商品の代金の支払いは短い期間に行うものですので、仕入債務は貸借対照表の上の方に書かれる傾向にあります。
金融機関から借りた1年以内に返済しなければならない借入金のことを短期借入金といいます。後述するように、同じ借入金でも返済期日が決算日の次の日から数えて1年以内に来ないものについては固定負債の長期借入金に分類します。
仕入債務とは逆に、自身が商品やサービスなどを販売する時、その代金の一部または全額を先にもらうことがあります。このあらかじめ受け取った金銭のことを前受金と呼びます。前受金は商品を販売する前に一時的に預かったものであるため、会計上は債務と見なされ、比較的短期のものであることから流動負債に分類されます。
未払法人税や未払消費税も会計上は流動負債となります。企業をはじめとして法人は税金を納付しなければなりません。企業は決算をしてその後2カ月以内に確定申告をすることによって納税を行います。したがって、決算をした時点では法人税の納付は行われていないので、法人税は将来支払わなければならない未払いの項目として処理されます。法人の税金の支払いは決算の後2カ月以内に行わなければならないので、比較的短期の債務として流動負債に分類されます。
将来費用や損失が発生することが予測される場合に、あらかじめ引当金として計上しておき、当期の費用または損失として処理します。引当金については、対応する残高を貸借対照表の負債の部に計上する方法と、資産の部にマイナスの資産として計上する方法とがあります。代表的なものに賞与引当金、修繕引当金、貸倒引当金などがあり、退職給与引当金のように1年以上先の長期的な支出を見込んで引き当てたものについては、一般的に長期性引当金として固定負債に分類します。
社債は企業が投資家からお金を借りるために発行する有価証券です。社債が固定負債になるかどうかは償還期限によりますが、その性質上、返済の期限まで1年以上あることが多いため、通常は流動負債ではなく固定負債として計上します。
1年以内の返済が必要な短期借入金ではない借入金のことです。企業が事業を回していく上で、それぞれの借入金をいつまでに支払わらなければならないかを把握することは、キャッシュフローの観点から極めて重要です。そのため、借入金も短期で返済しないといけないものと長期で返済すればいいものとを分けて貸借対照表に記入することが通例となっています。
金融機関からの借入金が主なものになると考えられますが、それ以外の法人や個人からの借り入れで、なおかつそれが一定以上の高額に及ぶ場合は、誰から借りているかわかるような勘定科目にして貸借対照表に表記することが必要です。
受入保証金(預り保証金)とは、取引や賃貸借契約に際して担保として預かる保証金や敷金のことです。保証金や敷金は原則として契約の解約時に返還する必要があるので、これらも将来返さなければいけないお金として、多くの場合は固定負債に計上されます。
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流動負債は、日常的な商品の取引に関わるものなど、決算日の翌日から起算して1年以内の支払いが必要なものであり、対する固定負債は、社債や長期借入金などの長期的に支払えばいい債務です。いずれにせよ、負債とされるものの範囲は、その言葉から一般にイメージされるような「借金」よりもはるかに広く、非常に複雑になっています。会計を実際に行う際は、会計基準にしっかりと従った上でわかりやすい表記を行うように心がけましょう。
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