従業員が退職した際、退職を証明する書類として「離職票」と「退職証明書」の2種類があります。名前も似た両文書ですが、離職票は公文書である一方、退職証明書は会社が作成する書類であるなど、いくつかの相違点があります。今回は「離職票」と「退職証明書」について、それぞれの利用目的や記載内容、発行手続きにおける相違点を解説します。
離職票とは
離職票の利用目的
離職票とは、退職者が雇用保険の失業給付を受給するときに必要となる、国が公的機関を通して発行する公文書です。離職票がないと失業給付が支給されないため、必ず会社は発行の手続きをする必要があります。手続きが遅れた場合、給付日数が余っていても失業保険が打ち切られる可能性があります。
離職票の記載内容
ハローワークより発行される離職票は、離職票1と離職票2から構成されており、離職票2は会社が発行する離職証明書の複写にあたります。
- 雇用保険被保険者離職票—1(離職票1)
離職票1はカードタイプになっており、上部にある雇用保険の被保険者番号などは会社側が記入し、退職者自身が個人番号・口座情報を記入します。中央の破線内には認定日や賃金日額等の欄があり、これらはハローワーク側にて記入されます。 - 雇用保険被保険者離職票—2(離職票2)
離職票2は左右に分かれていて、左側には退職前の1年間の賃金の支払状況などの基本情報、右側には退職理由が記入されています。基本的には会社側が記入を行い、退職者は会社側の記載に同意する旨に加え、署名・捺印を行います。
離職票の発行手続き
最終的にハローワークから発行される離職票ですが、会社側は以下の流れで手続きを行う必要があります。
- 従業員の退職の意思を受け、退職日前、あるいは退職日に離職証明書を発行します。
退職者は離職証明書の記載内容を確認し、必要事項を記入・捺印し会社に再度送付します。 - ハローワークにて離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。この提出は、退職日翌日から起算して、10日以内に行われければなりません。
- 手続きが終わると、離職証明書の複写である離職票2と新たに離職票1が発行され、この2つが会社に届きます。
- 離職票1、2が発行され次第、直ちに会社は退職者に郵送します。
離職票発行の注意点
- 離職票に記載される退職理由や退職前の給料や地位を元に、ハローワークが失業給付額を決定します。
- 転職先が決まっている場合は失業給付が受け取れないため、従業員は離職票が必要ありません。
退職証明書とは
退職証明書の利用目的
退職証明書の利用目的は2点あります。
- 転職先の会社から提出を求められた場合
転職先の会社から退職証明書の提出を求められるのは、履歴書に書いてある経歴や退職の事実を確認するためです。ただし、退職から2年以上経過している場合は、退職証明書の発行を会社側は行う義務がありません。そのため、退職者は転職先の会社に退職証明書を提出できなくなる可能性があるので、早めに退職証明書発行の申請を行いましょう。 - 失業給付や国民健康保健の手続き時、離職票が手元にない場合
離職票は手続きが複雑なため、手元に届くまでに少々時間がかかります。一方で、退職証明書は、早ければ即日発行が可能です。1日でも早く失業給付の手続きを行いたい場合などは、離職票の代わりとして退職証明書で手続きを行うことが可能となります。
退職証明書の記載内容
退職証明書は公文書でないため、決まった様式が存在せず、記載する項目は退職者が申請の際に選択することができます。主な記載項目として、退職年月日や使用期間、業務の種類、その事業での地位、離職以前の賃金、退職の理由が挙げられますが、離職者の転職先の会社に不信感を与えないためには、できる限り全て記載することが望ましいとされています。
退職証明書の発行手続き
退職証明書は、退職者の申請がなければ作成の義務がありません。また、退職証明書は公文書でないため、作成は会社が行うこととなります。手続き方法も会社に応じて異なりますが、離職者が退職証明書を急ぎで必要としていることも考えられるため、迅速な対応を心がけましょう。
退職証明書発行の注意点
- 退職証明書は、従業員の退職前でも発行することができます。申請があった場合は、従業員のスムーズな転職をサポートするため、早めに発行しましょう。
- 退職から2年以上経過すると、会社側の退職証明書の発行義務が失われます。従業員の転職が2年後になる可能性がある場合は、事前の申請・発行が必要です。
まとめ
離職票は失業給付を受け取るため、退職証明書は転職や離職票の代用のため、と目的はそれぞれで異なります。また手続きも両者で異なり、離職票は手続きが複雑な一方で、退職証明書の手続きは会社に応じて異なります。どちらの書類も共通して、必要な場合はできるだけ早めに発行する必要があるため、従業員が必要としているか早めに確認を行いましょう。
監修者
社会保険労務士として独⽴開業時より、ソニーグループの勤怠管理サービスの開発、拡販等に参画。これまでに1,000社以上の勤怠管理についてシステム導入およびご相談に対応。現在は、社会保険労務士事務所の運営並びに勤怠管理システムAKASHIの開発支援を実施。