企業法務は業務の専門性が高く、法律に関する多くの知識を必要とされます。企業によって要求される能力は異なりますが、実務に役立つ資格を取得することで会社からの評価向上やキャリアアップにもつながります。
今回は企業法務に役立つ資格として、ビジネス実務法務検定、ビジネスコンプライアンス検定、行政書士、司法書士について紹介します。
企業法務は会社における法律関係の業務をすべて扱う部署であり、以下に挙げるように業務は多岐に渡ります。
様々な法務を行うためには、民法、商法、会社法など会社経営や契約等の基礎となる法律についての知識、加えて著作権法や消費者契約法などの知識が求められます。
従って会社の法務部で活躍するためには、企業法務に関わる資格の取得が実務上非常に役立つものとなります。
ビジネス実務法務検定は、東京商工会議所が実施する企業活動に関連する法律についての知識を問う検定試験で、特に必要な受験資格はありません。
この検定の最も大きな特徴は、法務のみに限らず、営業などその他の場面でも応用できる法的知識を問う問題が出題される点です。多くの企業で昇進等の一つの指標とされているので、昇進やキャリアアップも期待できます。
1級では、「業務上必要な法律実務知識をビジネス全般にわたって持っており、その知識に基づいて多面的な観点から高度な判断・対応ができる」レベルが想定されています。
1級は難易度が高いため2級取得者のみが受験することができ、取得するとあらゆる法律業務においてトップクラスの働きが期待できます。
2級では、「企業活動の実務経験があり、弁護士などの外部専門家への相談といった一定の対応ができるなど、質的・量的に法律実務知識を有している」ことが想定されています。2級以上が社会的に評価されるラインでもあり、企業の管理職を勤める人が取得するにはふさわしいレベルといえます。
3級では、「ビジネスパーソンとして最低限知っているべき法律実務基礎知識を想定」されており、企業の取引における契約・債務債券について、企業と従業員の関係についてなどの、社会人として知っておくべき内容が出題範囲となっています。
受験料 | 実施回数 | 実施日(2017年度) | |
1級 | 10,800円 | 年1回 | 12/10 |
2級 | 6,480円 | 年2回 | 7/2, 12/10 |
3級 | 4,320円 | 年2回 | 7/2, 12/10 |
ビジネスコンプライアンス検定は、企業活動を健全に行うための正しいコンプライアンスに対する意識、姿勢を持っているかどうかを評価する試験です。
本試験において、コンプライアンスは「社会的要請に応えること」と捉えられており、民法、会社法、個人情報保護法など様々な法律の知識の体系的理解を背景に、正しい倫理的判断、コンプライアンスの理解ができる人材であることをアピールするために活用できます。
主な出題範囲は、コンプライアンスとは何か、コンプライアンスの意義や手法、社内統制などのコンプライアンスに関するものと、会社法、民法、知的財産法、労働法など、企業法務に深く関わる知識が出題されます。
コンプライアンスに関する基礎的な知識が問われ、ビジネスパーソンとしての業務遂行を適切にこなせるレベルが想定されています。
日常業務に必要な法律の知識と価値判断を持ち、適切な行動ができるレベルが想定されています。
コンプライアンスの根幹に関わる高度な法律知識と実務レベルでの価値判断が可能であるかが問われる試験です。
受験料 | 実施回数 | 実施日(2017年度) | |
WEBテスト | 3,200円 | 自由 | – |
初級 | 5,500円 | 年2回 | 8/6, 2/4 |
上級 | 8,000円 | 年2回 | 8/6, 2/4 |
以上の2つの資格は、いずれも民間による検定試験ですが、更に難易度や専門性の高い国家資格を取得すればもちろん会社の法務職を務めるにあたって大きなアピールポイントです。今回は行政書士、司法書士について紹介します。
行政書士は、官公庁への許認可を申請する書類の作成・提出手続代理、事実証明および契約書の作成などが認められる国家資格です。行政書士の資格を持つ人は開業して働くという選択肢が一般的ですが、その豊富な法律知識を活かせば法務部において非常に大きな強みとなります。
行政書士試験の主な出題範囲は憲法・民法・商法・行政法についての知識、現代の政治や経済について、個人情報保護や情報処理などです。以上の範囲について全てについて幅広く出題され、且つそれらの知識の応用力も試されるため、国家資格の中でも難関と位置付けられる試験です。
行政書士試験は年に1度、11月の第2日曜日に実施されます。受験資格は特になく、受験料は7,000円です。
司法書士とは、主に不動産登記や商業登記、裁判所・検察庁・法務局に提出する書類の作成、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟などを、他人の依頼に基づいて遂行することができる国家資格です。司法書士は、司法書士事務所で働くケースが一般的ですが、近年は企業の法律の相談役として活躍するケースも少なくなくありません。司法書士の専門性の高さは会社にとっても武器となり、外部の司法書士事務所などに委託していた法的書類の作成等の事業や、簡易な訴訟へ対応できることから、会社内で貴重な人材として非常に重宝されます。
司法書士試験の主な出題範囲は、憲法・民法・商法・刑法についての知識、不動産・商業登記に関する知識、供託、民事訴訟、民事執行、民事保全に関する知識、そしてその他司法書士の業務を行うにあたって必要な知識です。司法書士試験では、これらすべてについて幅広い知見と知識の応用力が求められ、内容も非常に高度です。
司法書士試験は、年に1度実施されます。こちらも受験に必要な資格はありません。受験料は8,000円で、収入印紙で納入する必要があります。
高い専門性が要求される企業法務において、その専門性を証明する資格を持っているということは非常に大きな強みとなるでしょう。今回紹介したこれらの資格は、どれも容易に取得できるものではありませんが、取得すれば必ず役に立ちます。キャリアアップのためにもこれらの資格の取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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