労働分配率とは?計算方法や適正な値にする必要性について徹底解説

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公開日:2024.10.1

労働分配率とは、企業が生産した付加価値のうち、労働者に支払われる賃金や給与が占める割合を示す指標です。労働分配率は、人件費÷付加価値×100で算出されます。人件費には、給与、退職金や福利厚生費が含まれます。労働分配率が高い場合は、給与額が大きく従業員満足度が高いことを示していますが、利益の確保や経営の維持が困難になるリスクが高まってしまいます。一方、労働分配率が低い場合は、利益に対する人件費の割合が少ないため経営に余裕が生まれますが、従業員のモチベーションは下がってしまいます。以上のことから、企業は人件費の見直しなどを行い適正な労働分配率を維持する必要があります。

    

労働分配率について整理しよう

労働分配率の基本的な考え方

労働分配率とは、企業が事業活動で生み出した付加価値に対し、労働者に支払われた賃金や給与の占める割合を指します。簡単に表現すると、「企業の儲けをどれだけ労働者に還元したか」を表す指標です。労働分配率は、売り上げに占める人件費の割合が適切かどうかを判断するのにも役立ちます。なぜなら、労働分配率は儲けに対する人件費の割合で算出されるため、企業の業績に連動して分析できるからです。なお、ここで言う「付加価値」や「人件費」について、詳しくは次章以降で解説します。

付加価値とは

付加価値とは、企業が事業活動を通して商品やサービスを製造・販売して、新たに生み出した価値のことです。労働分配率における付加価値は、売上高から売上原価を差し引いた粗利益を指します。

付加価値=売上高-売上原価

売上原価とは、売れた商品やサービスの仕入れや製造にかかった経費のことです。具体的には、原材料費や労務費、減価償却費、水道光熱費などが含まれます。労働分配率においては、粗利益のような儲けのことを、新たに生み出した価値を表す付加価値と呼ぶのが一般的です。しかし、実務上は付加価値という言葉はあまり使わず、粗利益という表現が使われています。

人件費とは

人件費は、労働契約に基づき提供された労務の対価として、企業から労働者に支払われる費用です。簡単に表現すると、「労働者を働かせるのにかかる経費」を指します。人件費は給与や賞与の他に、下記のように分類が可能です。

勘定科目内容
給与手当従業員の給与や残業代、家族手当、住宅手当など
賞与ボーナスや決算賞与、奨励金など
役員報酬取締役や監査役に支払う報酬
退職金従業員の退職金や役員退職慰労金など
旅費交通費交通費や出張費など
福利厚生費社宅費用や慶弔見舞金、慰安旅行代、食事補助など
法定福利費社会保険料や労働保険料など

労働分配率の計算方法

労働分配率は、人件費を付加価値で除して求められます。具体的には、下記の計算式で算出が可能です。

労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100

繰り返しになりますが、労働分配率は企業が事業活動で生み出した付加価値に対し、人件費が占める割合を指します。そのため、労働分配率が高いと「儲けに対して人件費が高い」、逆に労働分配率が低いと「儲けの割に人件費が低い」と判断することが可能です。適正な値については次章で詳しく解説しますが、労働分配率が高いと当然ですが利益は出にくくなります。

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労働分配率を適正な値にする必要性

適正な労働分配率とは

適正な労働分配率は業種や業界によって異なりますが、50~60%が一つの目安で、50%を下回ると良好、70%を上回ると経営が厳しいと言われています。例えば、飲食業・宿泊業・サービス業など人件費の割合が大きい業種は労働分配率が高くなりやすいため、同業他社の平均値で判断することが重要です。

ちなみに、中小企業庁による「2022年版中小企業白書」によると、2020年度における労働分配率の平均値は大企業が57.6%、中規模企業が80.0%、小規模企業が86.5%でした。中小企業や創業間もない利益の少ない企業は、相対的に労働分配率が高めになります。

労働分配率が高い場合

労働分配率が高い場合は、儲けに対して人件費が高いため、従業員の満足度は高いかもしれません。一方で、粗利益に対して人件費が多くかかっている状況でもあるため、人件費に見合った利益が出ておらず、経営状況は悪化傾向にある可能性もあります。そこで、従業員の給料を下げて労働分配率を改善しようとする企業も少なくありません。しかし、給料を減らしたり人員を削減したりする対策は従業員のモチベーションを低下させるため、実行するのは難しいでしょう。労働分配率を改善したい場合は安易に人件費を減らそうとするのではなく、付加価値を最大化する方法を考えるのが得策です。

労働分配率が低い場合

労働分配率が低い場合は、給与水準が世間の相場より低いため満足度が低くなり、転職を検討している従業員が多い状況かもしれません。過剰労働や人材不足が起こっている恐れもあり、定着率の低下や離職率の上昇が懸念されるため注意が必要です。一方で、粗利益に対して人件費が低い状態でもあるため、業務効率が高く利益の出やすい経営状況でもあります。労働分配率が低い状態は経営に余裕があるため、問題がある状態とは一概には言えません。しかし、現場のモチベーションは低下している可能性もあり、さらなる付加価値を生み出すには従業員に対する還元も必要です。

    

労働分配率を適正に保つためのポイント

従業員へ適正な賃金を支払う

労働分配率を適正に保つには、適正な賃金を支払い、従業員に還元することが大切です。まずは同業他社の平均値をもとに、自社の賃金設定が適切かどうかを判断しましょう。平均より低い場合は従業員の満足度も低く、生産性の低下や離職の原因となる可能性があります。逆に、賃金が平均より高いからといって無闇に人件費を削減すると、従業員のモチベーションが下がり、離職を誘発するため気をつけましょう。人件費を適切に管理するのは非常に重要です。しかし、早急に結論を出して実行に移すのではなく、慎重に解決策を検討しなければなりません。

労働時間の管理を徹底する

人件費の管理とあわせて、労働時間の管理を徹底するのも大切です。長時間労働の常態化や不適切な労務管理は従業員のワークライフバランスを害し、不満の原因となります。従業員の不満が高まるとパフォーマンスは低下し、生産性も悪化するため気をつけましょう。労働分配率を適正に保つには、従業員のワークライフバランスを最適に保つ労働時間を実現するのが第一歩です。必要に応じて業務を見直すことで、生産性や業務品質、ひいては顧客満足度が向上します。例えば、従業員のライフスタイルに合わせて、テレワークやフレックスタイムを導入するのも、効果的な方法です。

生産性を高める

労働分配率を適正に保つ上で、生産性を高めることも非常に重要です。むしろ、安易に人件費を調整するのではなく、従業員一人ひとりの生産性を高めるのが、もっとも理想的な方法と言えるでしょう。具体的には、スキルアップの機会を提供したり、業務の効率化を図ったり、職場環境を改善したりする取り組みが必要です。生産性も労働分配率も高ければ従業員の満足度が高まり、企業は十分な利益を確保できます。生産性を高める取り組みを継続的に実施し、従業員一人ひとりがより多くの付加価値を生み出せる環境を整えましょう。

    

まとめ

今回は労働分配率について解説しました。労働分配率とは、企業が事業活動で生み出した付加価値に対し、労働者に支払われた賃金や給与の占める割合を指します。従業員の満足度と企業の利益を最大化するには、労働分配率を最適に保つことが重要です。生産性を高める取り組みを継続的に実施し、企業と従業員がWin-Winの関係を実現できる環境を整えましょう。

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