事業主が離職させざるをえない労働者の再就職を支援した場合、一定の額の助成金が政府から事業主に対して支払われるのをご存知でしょうか。今回は労働移動支援助成金の5コースのうちの1つ、再就職支援コースについて、制度の概要や申請の要件、今後予定されている改正の変更点まで解説いたします。
目次
安倍政権が掲げる「失業なき労働移動」を実現するための雇用政策の1つとして、2014年に労働移動支援助成金の制度が定められました。労働移動支援助成金には5つのコースが存在しますが、景気の低迷や業績不振で事業主が事業の規模を縮小せざる得ないとき、離職を余儀なくされる労働者に対して再就職支援を行なった事業主に支給されるのが、この再就職支援コースです。
再就職支援コースの助成は「委託開始申請分」と「再就職実現申請分」の2つによって構成されます。
「委託開始申請分」は、再就職援助計画の認定または求職活動支援計画書の提出を行っている中小企業が、離職者の再就職支援を職業紹介事業者へ委託した際に申請できるもので、当該の委託に要した費用の一部が支給されます。
「再就職実現申請分」は、離職者が離職の日の翌日から6ヶ月以内(45歳以上の場合は9ヶ月以内)に再就職を果たした場合に申請が可能で、当該の離職者へ企業が行った措置に応じて次の3つの助成を受けることができます。
それぞれの助成の細かい支給要件や申請の手順についての詳細は、厚生労働省が公開している資料を参照してください。各助成の具体的な支給額は記事の後半で扱いますが、その前に助成金申請のための諸条件を確認しましょう。
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再就職支援コースの対象労働者は以下の7つの条件全てに該当する労働者です。
事業主が助成金を申請するには、以下の条件全てに該当する必要があります。
また、以下のいずれかに該当する事業主は助成金を申請することができません。
それでは、各助成の具体的な支給額を見ていましょう。対象となる労働者1人につき、それぞれ以下の額が支給されます。ただし、1つの事業所が申請できるのは、1年度で500人が限度となっている点にご注意ください。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 |
10万円 (委託総額が20万円に満たない場合は | なし |
再就職支援の助成を申請する場合、支給額は支給対象者の年齢や事業主の規模等により異なります。また上述のように、特例区分には支給額の増額が、訓練やグループワークの実施には加算があります。事業主が特例区分とされるための条件は、次の2点です。
再就職支援の助成金の支給額は、以下の1.~3.の金額を合計したものとなります。ただし委託開始申請分を受給している場合は、その額を引いた金額が支給されます。
中小企業事業主 | 中小企業事業主意外 | |
通 常 | (委託総額-③の額)×1/2 (45歳以上の場合は2/3) | (委託総額-③の額)×1/4 (45歳以上の場合は1/3) |
特例区分 | (委託総額-③の額)×2/3 (45歳以上の場合は4/5) | (委託総額-③の額)×1/3 (45歳以上の場合は2/5) |
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 |
訓練実施にかかる費用×2/3の額(上限30万円) |
中小企業事業主 | 中小企業事業主 |
3回以上実施で1万円 |
休暇付与支援の助成は、計180日を上限として1日につき以下の額が支給されます。休暇を与えた結果として、対象労働者が退職の翌日から1か月以内に再就職を実現した場合には、早期再就職加算が上乗せされます。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 |
8千円/日 | 5千円/日 |
早期再就職加算:1人につき10万円 |
職業訓練実施支援では、事業主の規模に関わらず、180万円を上限として職業訓練の費用の2/3が補助されます。
今回ここまでお送りしてきた情報は現行制度を説明するものですが、労働移動支援助成金の制度は近々改正を予定しており、平成30年4月1日から支給内容が変更される見通しです。主な変更点は2つあります。
まず、委託開始申請分の助成が廃止となります。それに伴い、再就職支援の支給額の計算時には委託開始申請分の金額を控除する必要がなくなります。
次に、改正後は、事業主が再就職支援を委託した職業紹介事業者の支援を1度も受けることなく対象労働者が再就職を実現した場合には、助成の対象外となります。
労働移動支援助成金の制度を巡っては、政府がリストラを奨励しているなどの批判があります。しかしこの制度を活用すれば、企業は事業を縮小せざるを得ない苦しい時に助成金が受け取れ、離職者にもスムーズな再就職が促進されるというメリットがあります。意外と知る人の少ないこの制度ですが、覚えておいて決して損はないでしょう。
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