日本企業に特徴的な人材育成の制度として、ジョブローテーション。定期的に部署を異動させることで従業員に様々な業務を経験させるこの方式は、ジェネラリストの育成に最適なものとして多くの企業に採られてきましたが、近年ではその問題点も指摘されています。今回は、馴染み深いこのジョブローテーション制度のメリットとデメリットについて、改めて考えてみましょう。
ジョブローテーションは、従業員の能力開発を目的として、人材育成計画に沿って、定期的に部署の異動や業務内容の変更を行う制度です。社内の異なる部署における様々な業務を経験させることによって、従業員の能力開発や社内ネットワークの強化・構築が目指されます。
業務を通じた教育訓練(OJT)という方法論は高度成長期にアメリカから輸入され、企業内研修として日本では定着しましたが、その後も時代状況に合わせて改良が加えられて、現在日本企業に広く見られるジョブローテーションが形成されました。長期雇用を前提とする日本ならではの人材育成システムだと言えます。
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グローバル競争の熾烈化や国内の少子高齢化を受け、年功序列や終身雇用制など日本型雇用が揺らぎつつあるなか、ジョブローテーションのあり方も問い直され始めています。では、そもそもなぜジョブローテーションが有効な人材育成制度だと考えられているのでしょうか。ジョブローテーションの意義を改めて確認してみましょう。
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ジョブローテーションには、以下のメリットが挙げられます。
その一方で、ジョブローテーションには以下のようなデメリットも存在します。
それでは最後に、ジョブローテーションがうまく機能している事例を見てみましょう。
ヤクルトは、ジェネラリストの育成とスペシャリストのキャリアアップを目的として、総合職事務系・海外系の従業員を対象にジョブローテーションを採用しています。従業員は入社後10年内に3つ以上の部署で業務を行い、自らの適性を発見していきます。営業部門と海外部門のどちらでも経験を積むのが原則となっています。
ジョブローテーションはやはり、ヤクルトのように社員数が多く部署や職種が多岐に渡る大企業の場合に効果的なようです。特に海外展開を行なっている企業の場合、国内と海外の両方で業務経験をさせることで視野の広い従業員の育成を行うことができます。
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ジョブローテーションによる定期的な異動は、社内の活性化など多くのメリットがある一方で、当然デメリットも存在します。国内外に展開する大企業であれば、現在はまだジョブローテーションの採用はメリットの方が勝つものと思われますが、今後雇用の流動化が一層進むなかで、どのような人材育成の方法が望ましいのかを再検討していく必要があるかもしれません。
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