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副業・兼業の普及に向けて、個人事業税の範囲をマスターしましょう

多様で柔軟な働き方が推進される中、企業が従業員の副業・兼業を容認し、同時に仕事を掛け持ちする従業員が増加していくことが予想されます。それにともなって、個人事業主に対して課される「個人事業税」について、詳しく知る必要があります。今回は、比較的その課税範囲が複雑な個人事業税の税額について解説していきます。

業種や所得によってどのように課税要件が変化するのか、一緒に確認していきましょう。

個人事業税の概要

個人事業税とは、地方自治体に納税する地方税の一つです。法律で定められた、特定の業種を営む個人事業主に対して課されます。

個人事業税を納める要件は以下の2点となっています。

  • 個人事業主が法定業種を営んでいること。
    どの業種が法定業種であるかは、後ほど示す表で確認できます。
  • 事業による所得が年間2,900,000円を超えること。
    これは、1年間事業を営んだときの個人事業税の控除額が2,900,000円であるためです。もちろん、1年のうち数ヶ月しか事業を営んでいない場合などは、控除額も減るので注意が必要です。

また、個人事業税は、業種ごとに異なった税率が課されている点が特徴の1つとなっています。以下の表で、法定業種と税率を合わせて確認していきましょう。基本的に5%ですが、いくつかの業種は3%や4%と異なっています。なお、表に書かれていない業種については、法定業種ではないため個人事業税の課税の必要はありません。

税率5%の業種

(第1種事業)

物品販売業

運送取扱業

料理店業

遊覧所業

保険業

船舶ていけい場業

飲食店業

商品取引業

金銭貸付業

倉庫業

周旋業

不動産売買業

物品貸付業

駐車場業

代理業

広告業

不動産貸付業

請負業

仲立業

興信所業

製造業

印刷業

問屋業

案内業

電気供給業

出版業

両替業

冠婚葬祭業

土石採取業

写真業

公衆浴場業(むし風呂等)

電気通信事業

席貸業

演劇興行業

運送業

旅館業

遊技場業

(第3種事業)

医業

公証人業

設計監督者業

公衆浴場業(銭湯)

歯科医業

弁理士業

不動産鑑定業

歯科衛生士業

薬剤師業

税理士業

デザイン業

歯科技工士業

獣医業

公認会計士業

諸芸師匠業

測量士業

弁護士業

計理士業

理容業

土地家屋調査士業

司法書士業

社会保険労務士業

美容業

海事代理士業

行政書士業

コンサルタント業

クリーニング業

印刷製版業

 

税率4%の業種

(第2種事業)

畜産業

水産業

薪炭製造業

 

税率3%の業種

(第3種事業)

あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業

装蹄師業

 

個人事業税の税額

個人事業税の税額の計算方法は、以下の計算式によって行われます。

(総収入―必要経費―個人事業税の専従者控除―各種控除)×税率=個人事業税額

総収入

前年の1月1日から12月31日までの1年間の事業で生じた収入すべてを指します。

個人事業税の専従者控除:専従者控除とは、事業主と生計を同じくする親族が事業に従事している場合に一定額を必要経費として控除することができるというものです。青色申告の場合は、給与支払額の全額。白色申告の場合は、その親族が配偶者であれば最大860,000万円、その他の親族であれば1人あたり最大500,000万円が控除されます。

各種控除

主に2つあります。1つは、繰越控除とよばれるもの。これは、損失を繰り越すことによる控除のことです。もう1つは、事業主控除とよばれるもの。これは、1年間事業を営んでいた場合に、事業税が2,900,000円控除される控除です。1年未満の場合は、その事業税額は月割額となります。

税率

上記に示した表に記載されている、業種ごとの税率を用います。

では、具体例を用いて個人事業税の税額を計算してみましょう。

飲食店業(税率5%)を前年に1年間営み、年間の収入が10,000,000円で必要経費が2,000,000円、個人事業税の専従者控除が500,000円の場合を考えます。

(10,000,000円―2,000,000円―500,000円―2,900,000円)×5%=230,000円

先ほどの計算式に当てはめると、このような計算式となり、個人事業税額は230,000円であるとわかります。

 

個人事業税の納税方法

時期

納税の時期は8月と11月の2回です。納税額を2分の1ずつ、2回にわけて納めます。自治体によっては、8月に一括して納めることが可能な場合もありますので、の各自治体に確認する必要があります。

手続き

3月15日までに、前年の事業所得等を申告することから始まります。申告先は、各自治体の税事務所です。ただ、所得税の確定申告や住民税の申告の際に、事業税に関する事項を記入していれば、個人事業税の申告をする必要はありません。申告後の8月に、記入内容に基づいた納税通知書が、各自治体の税事務所より送られてきます。そのあとは通知書に記載された額を納税することになります。

場所

各自治体の税事務所・支庁・郵便局・コンビニエンスストアなどで納税できます。ただし、コンビニエンスストアでの納税の場合は、1回300,000円以下という制限があります。

特殊な場合(年の途中で事業を廃止した場合)

年の途中で事業を廃止した場合は、廃止の日から1ヶ月以内に、各自治体へ個人事業税についての申告をする必要があります。個人事業主が死亡してしまったことによる事業の廃止の場合は、廃止の日から4ヶ月以内に申告をする必要があります。

 

まとめ

個人事業税の基本的な知識について確認してきました。副業などの場合、事業による収入を曖昧に把握している場合があるかもしれませんが、これを機に、収入が2,900,000円を超えているかという視点で収入を把握すると、個人事業税の納税もれを防ぐことができるでしょう。

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