インセンティブ制度とは、会社の業績に応じて支払われる給与やボーナスとは異なり、個人の実績を評価して報酬を与える制度のことを言います。社員の競争意識を刺激し、社員全体のスキルの底上げに役立つとされていますが、待遇の格差が生まれることで逆効果となってしまうリスクもあるため、その導入と運用には注意を要します。今回はそんなインセンティブ制度について、メリット・デメリットを解説します。
インセンティブ(incentive)とは、何かをやり遂げるための動機や誘因、刺激という意味の英単語です。この言葉を冠するインセンティブ制度は、企業が社員の意欲向上を目的として、社員の成果に応じて給与を増やす制度を意味します。誰へどのように給与を支払うかという、実際の制度設計は企業により異なります。また、インセンティブ制度とよく混同される他の制度も存在するため、まずはそうした言葉との相違を確認しましょう。
ボーナスとは、企業の業績に応じて社員全員に、一定額もしくは規定によって定められた額が基本給与に追加して支払われる賞与のことです。対してインセンティブ制度の場合は、原則として個人に対して、その都度の成果に対応する分だけの額が基本給与に追加で支払われます。支給額が企業の業績にも左右されるタイプのインセンティブ制度も中にはありますが、基本的にはボーナスは企業全体の業績が要因となって額が決まり、インセンティブ制度は個人の成績がその要因となるというのが、両者の根本的な違いとなります。
どちらも成果に応じた給与であるという点は共通しており、同じ意味で用いられることもしばしばあります。しかし、歩合制では概ね仕事1件に対して給与がいくらと規定されているのが通例であるのに対して、インセンティブ制度はあらかじめ設定された目標やノルマが達成された場合にいくら追加と規定されることが多いという違いがあります。
インセンティブ制度とひと口に言っても、企業によりその内容は様々です。また業種によってインセンティブ制度との相性も様々で、営業職等は制度導入が図られやすい業種の代表例ですが、そもそもインセンティブ制度が向かないとされる業種も存在します。しかしながらそうした業種についてもインセンティブ制度を効果的に取り入れることは可能で、その場合は特に、最初に制度のデザインや導入費用などを充分に考慮することが重要となります。インセンティブ制度の導入に際し考えなければならない点として、以下の4つがあります。
対象となる単位については、個人を対象とする場合のほかにも、1チームや1部署をひとまとまりで扱う場合などが考えられます。
成果の評価方法については、成果を直接評価するタイプのほか、役職や仕事を難易度でランク分けし、ランクに応じた支給額を追加するタイプなどがあります。
この他にも状況によっては、ノルマ達成をそのまま支払い条件とする、最終的に企業に出た利益の一定割合を支払い分とする、などといった条件を設ける必要も生じます。
必ずしもお金そのものである必要はなく、旅行や割引券といった物品にすることも可能です。また、金銭的やりとりを介さず表彰や高評価の授与をもって贖う場合もあります。更に支払い方法についても、ノルマや目標の達成度に応じて毎度一定額を追加する、達成した成果が増えるにつれ累進的に追加する、などの選択肢が存在します。
ノルマや目標の達成期間を決めることも重要となりますが、いつからいつまでの期間の成果を一区切りと捉えて給与に追加するかも決めておく必要があります。毎月支払うこともできますが、例えばボーナスのように年に数回にするなどということも考えられるでしょう。
上記のようにインセンティブ制度は企業により採用される形態に違いがありますが、ここでは一般的に考えられるメリットとデメリットについて説明します。
インセンティブ制度の導入には、社員の意欲向上をはじめとする様々な長所がある一方で、真逆の効果を生む可能性をも持つという側面もあります。導入の際しては、自社の業態や社風にインセンティブ制度のような成果主義に合うかどうかを見極めた上で、種々の規定を慎重に定める必要があります。
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