改正入管法が施行され、外国人材への注目が日増しに高まっています。外国人材の採用を検討される企業も増えているのを日々の業務で体感します。
今回は、「特定技能」や「技能実習」等の在留資格で日本に入国される外国人材について、その受入れのポイントを簡単にご説明したいと思います。
法的なお話より第一にお伝えしたいのは、受入れについての心構えです。多くの外国人材は、先進国である日本で働く期待と、異国の地で長期間を過ごす不安を抱えて日本に来ると思います。そういった外国人材を受け入れる際、受入れ側が「外国人材をうまく使おう」、「準日本人だ」等という感覚で受け入れれば、例え才能豊かな人材であっても、活躍することができずに帰国してしまうと思います。外国人材が十分に才能を発揮することができる受入体制の整備が重要です。
受入体制の整備は、もちろん法務や労務に渡る事項も多くありますが、まずに重要なのはマインドセットだと思います。東南アジア諸国を中心とする国々から、日本に働きに・学びに来てくれた外国人材に対し、彼/彼女を日本人の従業員と何ら変わらない会社の「仲間」として受け入れるという考えが社内で共有されると、外国人材の受入れはスムーズにスタートできると思います。
外国人材に関する法務で重要なのは、「在留資格制度」の枠組みを理解することです。日本では「在留資格制度」を採用しています(入管法2条の2)。在留資格制度とは「外国人の本邦において行う活動が在留資格に対応して定められている活動のいずれか一に該当しない限り、その入国・在留を認めないとする仕組み」と説明されます(齊藤利男=坂中英徳『出入国管理及び難民認定法 逐条解説 改定第四版』58頁)。
2019年4月以降、日本では29種類の在留資格が存在します(入管法別表第一及び第二)。
実務上、外国人材の受入れで活用される在留資格は「高度人材」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「特定活動」、「特定技能」及び「技能実習」です。
これらの外国人材の多くが申請する入管法別表第一の二の在留資格については、入管法19条1項で、その在留資格で行うことができる活動として別表に定められている活動以外で、原則として就労活動を行ってはならないとされます。
そのため、外国人材は、在留資格で定められている活動の範囲で就労活動を行うことになり、裏返しではありますが、在留資格で定められている活動の範囲を超えて就労活動を行ってはならないことになります。
外国人材の採用を考えた場合、自社でどのような業務を行ってもらうのかを明確化した後に、当該業務を行うことが可能な在留資格を取得することができるであろう外国人材を採用することになります。 例えば、海外との貿易についての交渉や事務を行う社員を採用されるのであれば、「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得できる方を採用します。また、産業の現場を支えてくれる人材の採用を検討する場合は「特定技能」の在留資格を取得できる人を採用するといった具合です。
この在留資格で許可される活動以外の活動で報酬を得てしまうと、外国人材は入管法に違反したと判断される可能性があり、働かせた企業の側も不法就労を助長したとして刑罰が科される恐れがありますので、この入管法の枠組みを理解することが、外国人材の法務における最初の重要なポイントです。
外国人材に関する労務について、まず押さえて頂きたいポイントは、日本人に適用のある労働関係法令は、原則として、外国人材にも適用があるということです。そのため「雇用対策法」、「職業安定法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、「雇用保険法」、「労働基準法」、「最低賃金法」、「労働安全衛生法」、「労働者災害補償保険法」、「健康保険法」、「厚生年金法」等の労働関係法令及び社会保険関係法令は、原則として、日本人と同様に適用があります。
そして、当然ですが、労働基準法3条に「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」とあるとおり、外国人材であることを理由に差別的な取り扱いをすることは許されません。
外国人材も、日本人と変わらない人です。日本に働きにくる外国人材にも、両親がいて、家族がいて、社会の一員として働いて、勉強しています。 他方で、外国で働くことの大変さは想像に難しくないのではないでしょうか。同じ人であるという発想を基礎に、外国で働くことの大変さを理解すると外国人材の受入れは、より円滑に進むように思います。
This website uses cookies.