日本で働く外国人は、2016年時点で初めて100万人を突破し、近年増加傾向にあります。政府は専門的な知識や高度な技術を有する外国人の就業を積極的に推進しており、今後も日本で働く外国人は増加していくことが予想されます。
外国人を雇用する場合、在留カードの確認や雇用状況のハローワークへの届出等の対応が必要です。また、企業は外国人労働者の雇用管理の改善の努力義務を有しています。今回は、外国人を雇用するときのルールについて解説します。
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雇用対策法では、すべての事業主に対し、新たに外国人を雇い入れた場合や雇用する外国人が離職した場合に、その者の氏名や在留資格、在留期間等について確認し、これらの事項について厚生労働大臣に届け出ることを義務づけています。
外国人を雇用する事業主が、この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合、30万円以下の罰金の対象となります。
日本の国籍を有しない人で、在留資格が「外交」「公用」以外の人が届出の対象となります。また、「特別永住者」は届出の対象にはなりません。
届出の対象となる外国人労働者が、雇用保険の被保険者であるかどうかによって、使用する様式や届出先、届出期限など届出の方法が異なります。
届出の対象となる外国人が雇用保険の被保険者である場合は、雇用保険に関する手続きを行う際に、外国人雇用状況の届出も行います。
雇用保険被保険者資格取得届または雇用保険被保険者資格喪失届の備考欄に、以下の事項を記載することで、外国人雇用状況の雇入れまたは離職の届出を行ったことになります。
雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワークに届出を行います。
雇入れの場合は翌月10日まで、離職の場合は翌日から10日以内に届出をすることが必要です。
届出の対象となる外国人が雇用保険の被保険者でない場合は、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」に以下の事項を記載し、届出を行います。
当該外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワークに届出を行います。
雇入れ、離職の場合ともに翌月の末日までに届出をすることが必要です。
外国人雇用状況の届出にあたっては、当該外国人の在留カードまたはパスポートなどの提示を求め、届け出る事項を確認することが必要です。
特に、外国人は在留資格の範囲内において就労活動等が認められているため、外国人を雇用する場合は、在留資格等をよく確認し、当該外国人について就労が認められるかどうかを確認する必要があります。
この確認を怠って、就労資格のない外国人を雇用した場合等は、不法就労助長罪により処罰の対象となる場合もあるため、注意が必要です。
外国人労働者を雇用する事業主は、雇用対策法により、その雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう雇用管理の改善を図るとともに、解雇等で離職する場合の再就職援助に努めるべきものとされています。
外国人労働者を雇用する企業においては、以下のような措置を講じることにより、雇用管理の改善等に努めるようにしましょう。
募集や採用にあたり、国籍等を理由とした差別的な取扱いを行うことはできません。募集の上で国籍に条件を付けたり、留学生であるという理由だけで採用対象から除外したりすることのないようにしましょう。
外国人労働者を募集するにあたっては、労働条件に関して理解の齟齬等からトラブルが生じることのないよう十分に留意することが必要です。国外に居住する外国人労働者の斡旋を受ける場合は、許可または届出のある職業紹介事業者から受けることが必要であり、職業安定法や労働者派遣法に違反する者からは斡旋を受けないようにしなければなりません。
採用にあたっては、在留資格上で就労が認められていない外国人を採用することのないよう、在留資格の確認を適切に行うことが必要です。また、在留資格の範囲内で外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、公平な採用選考に努めるようにしましょう。
労働者の国籍を理由として、賃金や労働時間その他の労働条件について差別的な取扱いを行うことはできません。
外国人労働者と労働契約を締結する際には、主要な労働条件について当該外国人労働者が理解できる形で、その内容を明らかにした書面を交付することが必要です。
外国人労働者に使用させる機械設備や安全装置の使用方法等についての安全衛生教育を実施する場合は、当該外国人労動者が内容を理解できる方法で行わなければなりません。
また、外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解できるようにするため、必要な日本語を習得させるように努めることも大切です。
雇用保険や労災保険、健康保険・厚生年金保険について、制度の周知に努めるとともに、外国人労働者が被保険者に該当する場合は適切に適用手続き等を行うことが必要です。
また、外国人労働者が保険給付の請求等を適切に行えるよう、必要に応じて以下のような援助を行うようにしましょう。
多様な人材が能力を発揮しやすい環境を整備するため、職場で求められる資質や能力等の社員像を明確化したり、評価の透明化を行ったりすることが大切です。
また、日本語教育や教育訓練の実施等必要な措置を講じたり、外国人労働者からの生活上または職業上の相談に応じたりすることで、外国人労働者の働きやすい職場環境を整備していくようにしましょう。
事業規模の縮小等を行う場合、外国人労働者に対して安易な解雇を行わないようにすることが必要です。また、やむを得ず解雇を行う場合は、再就職へ向けた援助に努めなければなりません。
再就職の援助の例としては、関連企業への斡旋や教育訓練等の実施などが挙げられます。ただし、この場合、在留資格を超えた仕事を斡旋しないよう留意することが必要です。
外国人労働者を常時10人以上雇用する場合、雇用管理の改善に関する事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者として選任しなければなりません。
外国人を雇用する場合、在留カード等を確認することにより就労が認められるかを確認するとともに、外国人雇用状況の届出等を適切に行わなければなりません。
また、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、外国人労働者が働きやすい職場環境を整備していくことも大切です。
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