ほとんどの企業は、業務に必要な設備や備品、オフィスや土地など様々な固定資産を保有しています。保有している固定資産の種類や保有年数などを正確に把握しておかないと、処分に気づかずに固定資産を計上し続けることになってしまいます。固定資産管理台帳を作成して、管理を徹底しましょう。今回は、固定資産管理の業務内容とポイント、台帳の作成手順について解説していきます。
目次
固定資産管理とは
そもそも固定資産とは、現金などの金融資産や消耗品ではなく、1年以上使用できる資産価値のあるもののことをいいます。具体的には、土地や建物、車両、高額な工具や器具、備品が該当します。これらの固定資産は、ある程度長期にわたって使用することが想定されています。そのため、取得のタイミングで一括して費用として計上するのではなく、年月の経過とともに資産価値が目減りしていく過程を記録しておく、すなわち「減価償却」を行う必要があります。減価償却をするためには、固定資産の情報を正確に把握し、管理することが欠かせません。これが固定資産管理です。
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固定資産管理台帳とは
固定資産管理台帳とは、企業が所有している固定資産の情報を集約するために、名称や取得金額、取得日時を記録して管理するためのものです。固定資産管理台帳は、確定申告時には必須の補助簿にあたるため、固定資産を所有する企業は固定資産管理台帳の作成が義務付けられています。
固定資産管理台帳の作成目的
減価償却費の根拠
会計処理には根拠となる書類が必要です。売上の根拠は請求書であり、経費の根拠は領収書やレシートです。前述の通り、固定資産は経費として一度に計上するのではなく、数年に分けて計上していきます。取得時の書類には一括の取得金額が記載されていますので、税法で定められている耐用年数に応じて分割して会計処理を行いますが、その際には減価償却費の根拠となるものが求められます。そこで、固定資産管理台帳が減価償却費の根拠として作成されることになります。
適切な会計処理の証明
固定資産管理台帳は、資産として計上されたものが適切に会計処理されているかどうかを確認する目的でも作成します。確定申告書には、固定資産と減価償却費の金額が記載されますが、その詳細を載せることまではできません。その代わりに固定資産管理台帳に必要事項をすべて記入しておけば、適切な会計処理の証明として使用することができます。
資産管理
当然ながら、固定資産管理台帳は会計や税務上の証明に使用するだけではなく、所有している資産を把握・管理する目的でも作成します。通常、固定資産管理台帳に記入する資産の名前や取得価格、取得日など以外にも、使用・保管している部署名についても記入しておくとより管理しやすくなるでしょう。また、自社で購入した資産以外のリース物件も、一定の条件を満たす場合は固定資産台帳を作成しておく必要があります。このように、資産の情報を固定資産管理台帳に集約しておけば、経年劣化や破損等によって資産を破棄したり新たに購入したりすることになっても、すべて固定資産管理台帳で資産状況の把握が可能になります。また、資産の管理が適切におこなわれることで、節税につながる可能性もあります。
固定資産管理台帳の作成方法
固定資産管理台帳の記載項目
固定資産管理台帳を作成する前に、まずは記載すべき項目を決めておきます。上述のように固定資産管理台帳は税務申告において備えるべき帳簿のひとつとされていますが、記載項目に規定はなく、正しいフォーマットというものが存在しません。そのため、企業側で記載項目を決めておく必要があります。ここでは、一般的によく使われる項目を挙げてみましょう。
- 資産名
- 資産区分
- 勘定科目
- 固定資産番号
- 固定資産の名称
- 固定資産の種別
- 取得年月日
- 取得価格
- 数量
- 償却方法
- 償却率
- 耐用年数
- 減価償却額
- 帳簿価格
- 管理部署
これらの記載項目のうち、資産区分、償却率、耐用年数は税法で定められています。さらに償却方法や償却率、耐用年数は税制改正によって見直しがあります。固定資産管理台帳を作成する際には、必ず国税庁のウェブサイトを参照して最新の情報に触れるようにしましょう。
Excelを使って手軽に作成
前述の通り、固定資産管理台帳には決まったフォーマットがありません。そのため、Excelを使って管理しやすい形式を作成するという手軽な方法があります。Excelがあまり得意でない人でも、表の中へ順番に項目を埋めていけばある程度の形にはなります。自由な形式で作成できるのがExcelの魅力ですが、社内の資産すべてを1から入力していくのはいささか大変な作業となりますので、インターネット上にある固定資産管理台帳の無料テンプレートなどを活用してみましょう。
便利で手間のかからない会計ソフトで作成
Excelで固定資産管理台帳を作るには、ある程度の手間と時間が必要になります。そこで、固定資産管理台帳があらかじめ用意されている会計ソフトを利用すると入力や計算の手間が省けて便利です。また、会計ソフトは固定資産を登録しておくだけで、固定資産管理台帳を作成すると同時に、減価償却費の計算も自動で行い仕訳までしてくれるという利点があります。ただし、記載項目はすべて決められているため、無駄な入力が増えてしまう可能性は否めません。手軽なExcelか便利な会計ソフトか、使い勝手の良い方を選びましょう。
まとめ
今回は、固定資産管理台帳の必要性と作成方法についてお伝えしてきました。固定資産管理台帳は、その名の通り資産を管理するだけではなく、適切な会計処理の証明や減価償却費の根拠となる重要な役目があります。作成方法としてはExcelと会計ソフトがあり、どちらにも一長一短はありますが、一度作成してしまえば、あとの管理はスムーズに運ぶでしょう。これから固定資産管理台帳を作るという方は、法改正による変更点に注意しながら、自社に合った方法で始めてみてはいかがでしょうか。