ESG経営とは環境、社会、管理体制を意識した経営を行うことで、SDGsと共に近年注目を集めています。企業がESG経営を行うことは、長短期的な企業ブランドの価値向上や、資本市場での評価向上のみならず、持続可能な収益の確保などのメリットがあります。今回はESG経営やESG経営が注目される背景、SDGsとの違い、メリット、今後の取り組みについて解説します。
ESG経営について
ESGとは
ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取って作られた造語です。ESGの考え方は、国連によって発表された「責任投資原則(PRI)」のなかで、投資判断の新たな観点として紹介されたことをきっかけとして、世界中に広まってきています。「長期的かつ持続的なESG価値の追求は、短期的な成果のみならず、長期的かつ持続的な企業価値を生む」という考え方のもと、現在では、投資判断の基準としてESGを考慮する投資家や、ESGに取り組む企業が増えてきています。
注目される背景
18世紀後半の「産業革命」以来、社会は科学技術の進歩を背景に大きな発展を遂げてきました。さまざまな技術革新や、大量生産・大量消費が可能になったことにより、先進諸国をはじめとして、人類はかつてない「豊かさ」を手に入れました。しかし、「豊かな社会」を実現する一方で、地球環境や人類社会を破壊し、看過できない負の影響をもたらしているのも事実です。ESGの考え方は、このような経済発展だけを主軸にした企業経営のあり方を改めようとする社会の動きによって生まれたといって良いでしょう。企業と社会は切っても切り離せない、いわば「相互依存関係」にあります。企業と社会がともに発展するためのキーワードとして、ESG経営が広く注目されています。
SDGsとの違い
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標)」の頭文字を取った言葉で、 採択された国際⽬標です。 に向けた環境・経済・社会についての世界全体の目標が定められています。ESGは企業それぞれの目標や指針の設定基準を指しますが、SDGsでは世界で目指すべき姿が示されています。とはいっても、ESGとSDGsには共通した項目が数多くあり、SDGs達成を目指してESG経営を行っている企業は多いといえるでしょう。
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ESG経営のメリット
イメージの向上
ESG経営によって実施した施策を公表することで、企業イメージの向上が期待できます。昨今では、企業には幅広い社会貢献性が求められる傾向があり、地球環境に配慮した製品や、多様な働き方を取り入れた経営は、消費者にも歓迎されるでしょう。また、ESG経営を行っているかどうかは、投資判断としても重要なポイントになるため、資金調達の際にも有利に働く可能性があります。結果として企業全体の印象が良くなることで、優秀な人材の確保にも繋がるでしょう。
経営上のリスク軽減
近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。テクノロジーの変化や規制強化、災害や金融危機、クーデターの発生などといった事象が、経営の舵取りを難しくしています。そのようななかで、ESGを重視した経営はさまざまなリスクの回避に効果を発揮するでしょう。企業の今後を考えるにあたっても、ESGはリスクの少ない道を選ぶ指標として有効です。このようなリスク軽減の考え方は、企業だけでなく、機関投資家にとっても重要であり、機関投資家が投資判断プロセスにおいてESG経営を重視するのも、企業価値を毀損するさまざまなリスクを排除するためといえるでしょう。
新規事業の創出
ESG経営は、ビジネスチャンスに繋がる可能性があります。たとえば、環境や社会の課題を解決する製品やサービスなど、ESGの観点に沿った事業へのニーズは高く、そうでない事業と比べ成功する可能性が高いといえるでしょう。また、投資資金も呼び込みやすいという点や、信頼できる企業として取引機会が拡大するという点においても、企業の新たな可能性に繋がるでしょう。
ESG経営の今後
世界的にESG経営への関心は高まっており、今後もESGへの取り組みはより活発化すると予想されます。昨今では、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、従業員の健康管理や働き方など、多くの企業でビジネスモデルが見直されるようになりました。ESGの観点に沿った取り組みは、結果として新型コロナウイルス感染症に対応した企業経営にも活かされる事例がみられることから、ESG経営は今後もより普遍的な指標として重視されることが考えられるでしょう。
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ESG経営の企業事例
キヤノン
キヤノンは、 の時点ですでに「共生」を企業理念として掲げており、お客様だけでなく国や地域、地球環境に対しても良い関係を作ることを重視して企業活動を続けてきました。ESGへの取り組みも活発に行われており、たとえば地球温暖化への防止策として、製品の省エネルギー設計を取り入れ、工場やオフィスでの使用電力を削減するなど、CO2の排出削減に向けた努力を続けています。高い技術力を、利益の追求だけでなく、新たな価値創造や社会課題の解決、環境保護活動に積極的に活用しています。
ANA
ANAは、多様なステークホルダーとの対話を通じてESG経営を推進しています。対話・取り組み・情報開示というサイクルでESGを進めており、企業自身の持続的な成長と未来社会の創造に貢献し続けることが目標です。ESGに関する中長期目標としては、航空機の運航で発生するCO2排出量の削減、社内外における人権尊重の徹底、イノベーションを活用した社会課題解決への貢献などが掲げられています。ガバナンスに関しても外部評価機関を導入するなど、先進的な取り組みが注目されています。
NTT
NTTは、環境負荷の低減・セキュリティの強化・災害対策の強化・多様な人材の活用・持続的成長に向けたガバナンス強化という5つのマテリアリティを設定してESGに取り組んでいます。ESG推進の目的は、事業リスクを最小化して事業機会を拡大し、持続的な企業価値を向上させることです。具体的な目標も掲げており、 など、社会の規範たる企業像の実現を目指しています。NTTのICT利活用を主軸にしたESG経営には大きな期待が寄せられています。
まとめ
企業には、事業の発展が環境や社会への影響と表裏一体であるという意識や、さまざまな課題への取り組みが求められています。一方で、市場や投資家からの判断基準としてもESGの考え方が浸透していることから、ESGの観点に沿った事業は歓迎される可能性が高いため、確実性の高い指標ができたという点では、企業にとっては喜ばしいことかもしれません。企業にとって、新しい取り組みや制度の導入は少なからず負担になる可能性はありますが、それを上回る将来のメリットを見据え、ESG経営に取り組むと良いでしょう。