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エンプロイーエクスペリエンスとは?知っておきたいポイントまとめ

エンプロイーエクスペリエンスとは、従業員が企業活動や人事制度、職場環境などを通して培われる経験価値のことを指します。企業文化の醸成や離職の防止につながることから、世界の人事領域におけるトレンドとなっており、エンプロイ―エクスペリエンスの向上に力を入れる企業は増えていくことが考えられるでしょう。今回はエンプロイーエクスペリエンスの意味や注目されている背景、従業員満足度や従業員エンゲージメントとの違い、向上させる方法を解説します。

エンプロイーエクスペリエンスとは

エンプロイーエクスペリエンスが生まれた背景

  • ミレニアル世代が社会の中心になったため
    ミレニアル世代とは、1981年以降に生まれて2000年以降に成人を迎えた人達を指します。現在、20代前半から30代後半くらいの年齢の人がミレニアル世代に該当します。この世代の人たちは、幼少時よりインターネットが身近にあったため、情報リテラシーが高く、世界中のさまざまな価値観に触れながら育ちました。そのため、多様性を受け入れやすく、精神的な豊かさを求める傾向にあるといわれています。ミレニアル世代が社会の中核を担うようになった現在、企業経営にも彼らの考え方が反映され、少しずつ変化が生じていると考えられます。すなわち、仕事とはただ賃金をもらうためにするものではなく、広い世界を知り、自らの精神世界の充実と成長を促すための経験をする場所という考えが広まりつつあるのです。
  • 従業員満足を達成するため
    従業員満足度が高い職場は、従業員の生産性や顧客対応へのモチベーションが高い傾向にあります。そのため、多くの企業が従業員満足度を重要視しています。従業員満足度を向上させるためには、ただ高い報酬を与えれば良い訳ではありません。スキルアップや経験値の獲得、仕事のやりがいや社会貢献など、従業員満足を形成する要素には、仕事に対する精神的な満足感が大きな割合を占めています。これらは、豊かなエンプロイ―エクスペリエンスと密接に関係しているといえるでしょう。
  • 多様性が認められる時代になったため
    従来のような画一的な働き方は、多くの企業で見直されつつあります。現代は、子育て中の女性や障害を持つ人、高齢者など、一昔前は労働力の中心として見なされていなかった人達が、同じ職場に共存する時代になっています。従業員それぞれが抱える事情が異なるように、「充実した働き方」も従業員によってさまざまです。つまり、企業が崇高な経営理念を掲げれば従業員がついてくる時代は終わり、企業には、従業員一人一人の想いや目標に寄り添い、実現に導いていくことが求められるようになったのです。全体的な組織運営ではなく、従業員個人の達成感や充実度を大切にするようになったことから、エンプロイ―エクスペリエンスが重要視されるようになったと考えられます。

従業員満足度や従業員エンゲージメントとの違い

エンプロイ―エクスペリエンスと似た使い方をされる言葉に、従業員満足度や従業員エンゲージメントがあります。どちらも職場環境や仕事内容へのポジティブな気持ちの度合いを表すため、それぞれは密接に関連しているといえるでしょう。エンプロイ―エクスペリエンスは、企業から得られるすべてのものを意味するため、従業員満足やエンゲージメントもエンプロイ―エクスペリエンスに内包されていると考えられています。

  

エンプロイーエクスペリエンスを向上させるポイント

オンボーディング

オンボーディングとは、企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連のプロセスを意味します。オンボーディングに力を入れることで、新入社員が組織に馴染みやすくなり、仕事に愛着を持てるようになります。オンボーディングには、新入社員の早期離職を防いだり、早期に戦力化したりする効果がありますが、なによりも新入社員にとって、自社が可能性に満ちた場所であることを実感してもらうのが大きな目的です。新しい仕事や人間関係が楽しくスムーズに進み、将来への希望が膨らむスタートがきれれば、エンプロイーエクスペリエンスは大きく向上するでしょう。

人事評価

自分の能力や仕事への努力に対し、正当な評価をされたという経験は、への大きな愛着につながります。また、新たな領域へ挑戦する力の源にもなるでしょう。このように、従業員の充実した働き方を実現するためには、優れた人事評価制度が欠かせません。功績を認めるだけでなく、従業員が将来的に目指していきたい目標に寄り添い、実現に向けた支援を行うと良いでしょう。

学習の機会

「学ぶこと」は、従業員のスキルアップにつながるだけでなく、さまざまな気付きを与え、視野を広げます。現在の業務に関連する技能訓練はもちろん、他の領域に学習の幅を広げることで、従業員の新たな可能性が見つかることもあるでしょう。このような経験は企業にとってもプラスの面が大きいだけでなく、従業員にとっても大切な経験になります。

アサインメント

アサインメントとは、従業員に仕事を割り当てる際に用いる言葉です。ただ仕事を与えるのではなく、従業員の希望や適性を把握したうえで、より可能性が広がるアサインメントを行うことが大切です。優れたアサインメントは、業務に対するやりがいや充実度を高め、従業員のキャリアにも良い影響を与えます。

健康経営

健康経営とは、従業員の健康保持や増進の取り組みを、経営的視点から戦略的に実践することをいいます。従業員が充実した職業生活を送るためには、健全な職場環境が大切です。健康経営を推進する企業においては、あらゆる面で従業員の健康的な働き方が大切にされているので、総じて社内環境が良好で、労働生産性も優れています。このような環境は、豊かなエンプロイ―エクスペリエンスを創出するためにも重要です。

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エンプロイー・ジャーニー・マップを作成しよう

エンプロイー・ジャーニー・マップとは、従業員が企業に入社してから退職するまでに経験する可能性のある一連の出来事を、時系列順に可視化したものです。エンプロイーエクスペリエンス向上のための施策として、以下の手順でエンプロイー・ジャーニー・マップを作成し、活用しましょう。

従業員サーベイの実施

アンケートなどを実施して従業員の意識や満足度を調査します。アンケートでは企業との信頼関係に重点を置いて、要望・不満・不安に関連する項目を設定しましょう。

従業員へヒアリング

従業員一人一人の、現在の状況や抱いている感情を把握します。アンケート回答で得られた情報をベースに、より詳しくヒアリングすると良いでしょう。

ペルソナを設定

ペルソナの設定を行いましょう。ペルソナとは、マーケティングなどで用いられる概念で、ここでは典型的な企業の従業員像を指します。年齢・性別・職種・収入・家族構成などの情報を付加して複数のペルソナを組み立てておくと、それぞれの従業員に対する最も適切なエンプロイ―エクスペリエンスの形がイメージしやすくなります。

フェーズの分類

フェーズとは、企業で経験するさまざまなイベントやプロセスです。例えば、入社・研修・配属・実務・昇格・退職などが該当します。それぞれのフェーズでの従業員の要望や発生する問題などを洗い出していきましょう。

アクションプランの策定

従業員の豊かなエンプロイ―エクスペリエンスを実現するためには、企業には何ができるか、具体的なアクションプランを策定します。例えば、従業員が自身の技能に不安を感じる傾向がある場合は、研修やサポート体制について本人と相談・確認の機会をつくることで、将来的なエンプロイーエクスペリエンスの向上につながります。

  

まとめ

「良い職場で、良い仕事に恵まれれば、幸福な職業人生が送れる」このように認識している人がほとんどでしょう。エンプロイ―エクスペリエンスを向上させていく取り組みは、この「幸福な職業人生」を企業単位で積極的に実現しようとしているものです。エンプロイ―エクスペリエンスの向上は、ただの従業員サービスではなく、新しい時代の企業経営に必要不可欠といっても過言ではありません。従業員の個性に向き合い、従業員が仕事を通じて得られる経験を、より豊かなものにしていきましょう。

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