働き方改革の一環として導入されているノー残業デーは、既に多くの企業で導入されています。しかしその一方で、ノー残業デー以外の出勤日で残業が増える、負担が人によって異なり不公平となるなど、様々な制度面での課題を抱えてもいます。今回はそんなノー残業デーについて、導入している企業における課題と、うまく機能させるためのコツを解説します。
ノー残業デーとは、残業をしないで定時に退社することを呼びかける日です。多くの企業で法定時間以上の労働が行われ、残業が当たり前になっている昨今、その当たり前を見直し、残業をせずに帰宅させることがこの制度の趣旨です。働き方改革の一環として、すでに多くの企業で導入されており、一般的には、企業が週に1日か2日ノー残業デーの曜日を決め、社員に呼びかけます。1週間の真ん中にあたる水曜日に設定する企業が多いようです。
ノー残業デーのメリットはいくつかありますが、最も大きなものは「ワークライフバランスの推進」です。このことは労働生産性の向上にもつながります。また、会社での滞在時間が少なくなるので、人件費・光熱費などのコストを削減することも可能となります。
一方で、そのノー残業デーが形骸化しているのではないかという批判が相次いでいます。ノー残業デーの日に早く退社することができたとしても、自宅で業務の続きを行う「持ち帰り残業」や、別の日に残業が増えるというケースが多く見受けられます。
また、ノー残業デーを導入している企業の一部は、残業代が発生しない管理職にはノー残業デーを適用していません。このような状況では、ノー残業デーの日であっても上司より先に帰るのは憚れるという部下が出てしまうということも考えられます。
このように、ノー残業デーは、元々の企業文化を変えようとせずに単に制度を導入するだけでは、なかなか機能しません。各企業は、ノー残業デーの制度が骨抜きにならないよう、具体的な施策を取る必要があります。
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ではどのような施策を企業側は取ることができるでしょうか。いくつかの具体的な例を見てみましょう。
制度を導入するだけではなかなか労働者は早く切り上げてくれません。それは、ノー残業デーを守るよりも従来通り仕事を進めることの方が重要だからであり、同僚や取引先の手前、業務の進行に影響が出ることは避けられる傾向があります。したがって、労働者の中でのノー残業デーの優先度をあげる必要があり、そのためにはノー残業デーの強制化が有効でしょう。
ただし、このような施策を導入すると社員は仕事をただ家に持ち帰るだけになってしまい、結局制度が形骸化してしまうという事態も考えられます。持ち帰り残業を防ぐために、業務量の再調整や、自宅での作業も可視化できるようにする仕組みが必須となります。
このような強制的な措置はしばしば反発を生みます。社員の声を充分に聞き、ノー残業デーの目的とメリットを丁寧に伝えるなどして、強制による反発が生まれないよう慎重を期すことが重要です。
残業時間を削減するためのインセンティブを作り出すのも有効な方法です。そもそも社員にとって何らかのインセンティブがなければ、残業をして残業代を稼ぐメリットの方が勝るという場合もあります。強制的な措置と異なり、インセンティブの創出は社員が自発的に労働時間の削減を優先させるきっかけになるでしょう。
例えば、残業時間を何時間以内に抑えるという目標を設定し、達成できた者には人事評価でプラス評価を与えるということは1つの案でしょう。とある事例では、ノー残業デーに加えて、残業を一定以下に抑えることができた社員に対し付与する「No残業手当」を導入した企業もあります。インセンティブをうまく設計することで社員が自発的に残業時間削減に取り組んでもらうことが理想ですが、この場合も、持ち帰り残業などを防ぐための配慮が欠かせません。
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働き方改革の中、企業には労働者のワークライフバランス向上に積極的に取り組むことが求められています。そのための施策としてノー残業デーは多くの企業で取り入れられてきましたが、いまだ様々な課題を抱えています。ただ単に制度を導入して満足するのではなく、その制度が骨抜きにならないような具体的な施策を企業側は取る必要があると言えるでしょう。
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