地震や火災などの災害は、いつ襲ってくるかわかりません。社会人が1日の中でも多くの時間を過ごすオフィスは、万全の防災対策を施しておく必要があります。オフィスの防災には、避難経路の確保や家具の固定といったハード面での対策に加え、社員に対して自助意識を啓発するような取り組みも必要となります。今回はそんなオフィスの防災について、具体的な対策例を解説します。
数ある自然災害の中でも地震は、日本を拠点とする企業にとっての最大の脅威と言えます。都市圏のオフィスビルが密に立ち並ぶ地域では、特に警戒が必要です。震度5以上の大きさの地震になると建物自体の倒壊のほか、窓ガラスの破片の散乱、水道・ガス・電気などのライフラインの遮断、木造建築の炎上、埋立地の液状化現象など、様々な二次災害のリスクも考えなくてはなりません。安全を確保するためには開けた土地に逃げなければなりませんが、過去にはこのような二次災害の影響で逃げ場を封じられ、火災旋風などに巻き込まれて命を奪われた人々の例がたくさんあります。関東大震災がその最たる例といえるでしょう。
火災の原因は、上で述べた地震によるもののほか、火の不始末、電気系統のアクシデントによる発火など、様々なものが考えられます。初期消火に失敗すると、もはや一般人には手の付けようのないほど延焼が広がり、消防に助けを求めるしかない状態になります。オフィス全体が燃えてしまえば、パソコン等のハードウェアや様々な重要書類など、すべてが完全に失われてしまうので、その損失は金額だけでは測れないほどのものになるのが恐ろしい点です。
毎年、西日本を中心に台風による被害が出ていますが、近年では都心部でのゲリラ豪雨も深刻な問題として取りざたされています。局所的に猛烈な雨が降るこの現象は、地球温暖化やヒートアイランド現象が原因であると言われています。水が溜まりやすい窪地のような立地は、降水量が一定量を超えると排水が間に合わずに1階部分が浸水してしまう恐れがあります。建物の電気系統の主要な基盤が全て1階や地下に設置されている場合、たった1度のゲリラ豪雨で会社全体のサーバーがダウンし、データが全て消滅するという可能性も充分考えられます。
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災害の種類ごとに取るべき予防策は異なりますが、どんな災害にも共通する対策は存在します。
自分の会社の建物やオフィスビルの耐震強度は万全でしょうか。築年数や、建築工事の受注者、建築時の建築基準法を確認して、もしも現行の法律基準にそぐわない箇所が見つかったら、早急に耐震補強工事を検討する必要があります。また、オフィスビルが高層か低層かで取るべき耐震構造も異なってきます。耐震工事専門の業者に相談して、方針を確定しましょう。
しかしながら、建物全体の改築は予算の都合上すぐには無理だという企業も多いことでしょう。その場合は、大掛かりな工事ではなく内部のちょっとした手入れだけでも被害を大幅に減らすことができます。書類の入っている棚を耐震ストッパー付きのものにしたり、デスクをがっちりと固定されたモデルに変えたりなど、施すことのできる工夫は様々です。床を硬いフローリングではなく、絨毯など柔らかい素材にするのも1つの方策と言えるでしょう。
先述のように、火災は初期消火が運命の分かれ目です。出火した炎をいかに迅速に消すことができるかが、被害の大小に直結します。オフィスにおいて、その初期消火に深く関わる設備に消火器と火災報知器があります。
オフィスビルの立地によって水害の脅威の大きさは左右されます。一番効果的な対策はオフィスを高台にあるビルへ移動させることですが、資金的余裕がなかったり自社ビルを持っていたりなど、そう易々と移転できるものではありません。
そうした場合に出来る対処法として、まずは電気設備を高層階に移すことが重要です。これにより、もし1階部分が水害により浸水してしまっても、会社の基幹部分に損失は生まれません。もし資金に一定の余裕があれば、1階部分に強力な水圧にも耐えるシャッターを設置することも、有効な対策となるでしょう。ただしこの場合も、シャッターの故障など不測の事態によって浸水してしまうことも考えられますので、決して慢心せずにその他の可能な対策も併せて実施するようにしましょう。
企業の活動において、利益に直結しない防災対策はついつい後回しにされがちです。こうした分野にもきちんと予算を組み、設備の導入や社員への情報共有といった体系的なプランを構築することは、バックオフィスや総務のメンバーの大きな務めであると言えるでしょう。全ての部署に対してその必要性を説明し、社員全員の防災対策への意識を高めることが大切です。
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いつ起こるかわからない災害は、起こってしまってからでは何もかもが手遅れです。できるだけ早急に、災害の種類ごとに起こりうるリスクをそれぞれ考えて、設備の拡充や社員への教育を進めていきましょう。たとえ予算や状況的な制限があっても、その中で取りうる対策は存在するはずです。小さな備えから防災を始めて、社員と社益を確実に守り抜く体制を整えましょう。
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