2017年から国税のクレジットカード納付が可能になりました。実はこれにより、支払日を先延ばししたり、ポイントを貯めたりすることができます。その一方で、クレジットカード納付には手数料がかかるといったデメリットも付随します。今回は、法人のクレジットカード納付について、その方法とメリット・デメリットを解説していきます。
目次
クレジットカード納付とは
概要
国税の納付に際して、インターネット上でのクレジットカード支払いの機能を使って、国税庁長官が指定した納付受託者であるトヨタファイナンス株式会社に、立替払いを委託することができます。これまでも地方自治体によっては住民税などの地方税をクレジットカードで納付することができましたが、2017年より国税の納付においても可能となりました。
通常の納付とは異なり受託者が代行するという形を取るため、手数料が1万円ごとに税別76円かかる、手続き完了後に納付代金が引落とせなければ国でなくクレジットカード会社から請求が来るといった違いが生じます。また、クレジットカードでの納付は税務署窓口や諸機関では行えず、指定サイト「国税クレジットカードお支払サイト」とe-Taxを通してのみのサービスとなっており、こちらで24時間対応を受付けています。
納付できる税
該当する科目は以下の通りです。なお、本税とは別に、もしくはそれに加えて、加算税や延滞税などの附帯税も納付することができます。
- 申告所得税と復興特別所得税
- 消費税と地方消費税
- 法人税(連結納税を含む)
- 地方法人税(連結納税を含む)
- 相続税
- 贈与税
- 源泉所得税と復興特別所得税
- 源泉所得税
- 申告所得税
- 復興特別法人税(連結納税を含む)
- 消費税
- 酒税
- たばこ税とたばこ特別税
- 石油税
- 石油石炭税
- 電源開発促進税
- 地方道路税
- 揮発油税と地方揮発油税
- 石油ガス税
- 航空機燃料税
- 登録免許税(告知分のみ)
- 自動車重量税(告知分のみ)
- 印紙税
利用可能なクレジットカード
該当する種類は以下になります。
- Visa
- Mastercard
- JCB
- American Express
- Diners Club
- TS CUBIC CARD
注意点
クレジットカード納付の場合、基本的には通常のクレジットカード払い(一括・分割払いなど)と同じように使用できますが、いくつか注意すべき点があります。
- 一回性
1度クレジットカード経由で納付すれば次回以降も自動的にクレジットカードから引き落とされるわけではなく、毎回手続きを行う必要があります。 - 1手続き1カード
1度の納付振込みに複数のクレジットカードを用いることはできず、複数回に分けて手続きする必要があります。 - 限度額
1枚のクレジットカードの納付上限額は、1,000万円未満でかつそのクレジットカードの限度額までです。 - 変更・取消しはネット手続き不可
インターネット上の手続きによる変更や取消しはできず、税務署まで行く必要があります。この際にも手数料は還元されません。 - 手続き完了=納付完了
引落とし(クレジットカード会社の規定によります)が納期より後になった場合でも、納期までに納付手続きが完了していれば延滞税等は発生しません。 - 1手続き1科目
複数科目をまとめて手続きすることはできず、科目毎に分けて行う必要があります。 - 後日サイトで内容確認不可
納付手続が終了した時にサイトに表示される納付手続完了ページ画面と、受託者から届く納付手続完了メール以外に、後日納付内容を確認する手立てはありません(問合わせなどはできます)。 - 手続き後は猶予非対象
納付手続きが終了した後には、納付済となったその科目に関して納税の猶予等を受けることはできなくなります。 - 領収書無し
領収証書は発行されません。領収書が必要な場合は、クレジットカード納付以外の方法によって納付します。 - 証明書の発行時期
納税証明書の発行が可能になるまで、3週間程度納付から遅れる可能性があります。
クレジットカード納付の方法
直接「国税クレジットカードお支払サイト」から手続きする場合
トヨタファイナンス株式会社が運営する専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスし、直接手続きを行います。国税庁のウェブサイトから当該サイトのリンクをクリックするか、確定申告書等作成コーナーで、納税額のある申告書を作成した際などに表示される納付方法の画面からアクセスすることができます。以下は、その後の手順です。
- 注意事項の確認
画面に表示される告知に目を通します。 - 納付手続きする科目の情報を入力
課税期間、申告区分、税額などが該当します。 - クレジットカードの情報を入力
クレジットカードの番号、納付手続完了メールの送信先アドレス(任意)などが該当します。 - 入力内容の確認
- 納付手続の確定
納付手続完了ページが表示されます。後日納付手続き完了メールが届き、決済が行われます。
e-Tax経由で「国税クレジットカードお支払サイト」から手続きする場合
e-Taxで電子申告・徴収高計算書データを送信したか、納付情報登録の依頼をした後に、メッセージボックスから当該サイトにアクセスできます。以下は、その後の手順です。
- 注意事項の確認
画面に表示される告知に目を通します。 - 納付手続きする科目の情報を確認
e-Taxから引き継がれた課税期間、申告区分、税額などの情報が正しいかどうかを確認します。 - クレジットカードの情報を入力
クレジットカードの番号、納付手続完了メールの送信先アドレス(任意)などが該当します。 - 入力内容の確認
- 納付手続の確定
納付手続完了ページが表示されます。後日納付手続き完了メールが届き、決済が行われます。
クレジットカード納付のメリットとデメリット
現在利用可能な他の納付方法は、以下の通りです。これらと比べて、クレジットカード納付は長所と短所があります。
- ダイレクト納付(e-Tax)
- インターネットバンキング等
- コンビニ納付
- 振替納税
- 窓口納付
メリット
- 支払い日を先延ばしできる
クレジットカード会社の規定にもよりますが、多くの場合は納付額の引落としが納付期日よりも後になるため、事実上、支払い日を先延ばしにすることができます。 - ポイントがたまる
通常のクレジットカード払いと同様、ポイントがたまります。また、クレジットカードの利用額が増えれば、信用を積めたり使用限度額が引き上げられたりする可能性もあります。 - 24時間対応
窓口などに駆け込む必要がなく、納期ギリギリでも支払いを終了させることができます。また、自宅やオフィスから出ずに納付できるため、思いついた時にすぐ行えます。なお、e-Taxには利用可能時間の制限があるのでご注意ください。 - 分割払いやリボ払いができる
クレジットカード会社の規定にもよりますが、国は一括払い、分割払い(3回、5回、6回、10回、12回)、リボ払いに対応しています。これらを利用する場合、一括で払わなくて良くなる分猶予が生まれます。
デメリット
- 手数料がかかる
1万円ごとに76円(税別)の手数料がかかるため、今までの手数料がかからない、もしくは低額であった納付方法よりは割高と言えます。 - 納税証明書の発行が遅い
納税証明書が必要なときに発行できないといった事態に陥るおそれがあります。 - 詐欺に騙される可能性がある
インターネットを介するため、詐欺サイトに間違えてアクセスしてしまう可能性をゼロにはできません。もしクレジットカードの情報を取られてしまうなどすれば、大事になります。
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まとめ
通常の納付よりは少々煩雑になりますが、詳細を押さえておけばクレジットカード納付にはメリットがあります。特に引落としを遅らせられる点などは、使いこなせば財務上の助けになることもあり得ますので、検討してみるのも手ではないでしょうか。