新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、売り上げが減少した中小企業を対象に、事業再構築補助金の公募が2021年3月にスタートします。これは新規事業展開や業種転換などの取り組みに対して支払われる補助金で、幅広い対象経費が含まれているため思い切った事業再構築をお考えの方はぜひ活用してみてください。今回は事業再構築補助金の補助対象企業や活用イメージ、補助対象経費、申請方法について解説します。
目次
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金とは
新型コロナウイルス感染症の流行により、経済社会は大きな打撃を受けました。このような事態は一過性のものではなく、多くの企業は「ウィズコロナ」の時代に適応するための変革を迫られています。事業再構築補助金は、このように新型コロナウイルスの影響により厳しい状況に置かれつつも、事業再構築の取り組みを行おうとする企業を支援するための補助金です。この補助金は、日本経済が「ウィズコロナ」の時代に向けた構造転換を円滑に行えることを目的に設立されており、補助額は条件により1社当たり100万から1億円とされています。予算額としては、2020年度第3次補正予算で1兆1485億円が計上されており、公募は1回だけではなく2021年度中に4回程度実施する予定です。
関連記事:
・中小法人で最大200万円! 持続化給付金の申請方法まとめ
・新型コロナウイルス関連の政策まとめ【信用保証・融資・税制編】
・新型コロナウイルス関連の政策まとめ【助成金・補助金 編】
事業再構築補助金の対象企業
新型コロナウイルスの影響で経営が厳しい状況にある中小企業・中堅企業・個人事業主・企業組合などが、事業再構築補助金の対象企業です。申請の要件としては大きく3つあります。
- 売上が減少していること
まず、補助金の申請する前の直近6ヶ月間で任意の3ヶ月の売上高を算出します。2019年または2020年1~3月の新型コロナウイルス流行以前の同3ヶ月間の売上高と比較して10%以上の減少が認められる場合が対象です。 - 事業再構築に取り組むこと
事業再構築指針に従って新分野展開・業態転換・事業や業種転換などを行う場合が対象です。 - 事業計画の作成
事業再構築に関わる事業計画を、認定経営革新等支援機関と作成する必要があります。(補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関が参加する必要があります。)
事業再構築補助金の活用イメージ
民間企業などがこれまでに行ってきた「ウィズコロナ」の時代に適応するための業界転換などの成功例をもとに、支援対象企業については以下のような例が公開されています。
飲食業
飲食業は、新型コロナウイルスの影響を強く受けているといえるでしょう。政府からイベント開催や不要不急の外出自粛、営業時間の短縮要請の影響もあり、多くの店舗で売り上げが減少しています。事業を継続していくためには、新分野への事業展開など、積極的な取り組みが必要でしょう。
ある飲食産業を営む企業の例をみてみましょう。この企業は、大胆な業態転換に取り組むことを決断しました。店舗での営業を廃止し、オンライン注文に対応した弁当の宅配事業を新たに開始しました。このようなケースでは、事業再構築補助金が認可されれば、店舗縮小に関連する建物改修の費用や、新規サービスに関わる機器導入費、広告宣伝費のために活用することができます。
小売業
小売業の中でも、服飾品など日常生活における必需品には含まれない商品を扱う事業は、新型コロナウイルスの影響により特に大きな打撃を受けました。
ある紳士服販売業を営む企業の例を見てみましょう。この企業は、お客様のニーズの変化に対応するため、紳士服のネット販売事業やレンタル事業に事業形態を大きく転換しました。事業再構築補助金が認可されれば、店舗縮小に関する建物改修の費用、新規サービス導入で発生するシステム構築の費用などに活用することができるため、業態転換を後押ししてくれます。
サービス業
高齢者向けデイサービス事業を営む企業の例を見ていきましょう。こちらの企業でも、新型コロナウイルスの感染を不安視しての利用控や利用休止などの影響から、従来のままの業態では事業の継続が困難になっていました。そこで、大規模な事業転換を図ることにしました。デイサービス事業を他社に譲渡し、別の企業を買収、病院向けの給食・事務などの受託サービス事業を新たに開始したのです。事業再構築補助金は建物改修の費用や機器導入費、研修費用などに使用できるため、このような思い切った事業転換を行う際のハードルを下げる効果が期待できます。
事業再構築補助金の補助対象経費
主要経費
事業再構築補助金は、基本的に設備投資を支援するための費用です。主要経費には以下のようなものがあります。
- 建物費(建物の建築・改修に要する経費)・建物撤去費
- 設備費
- システム購入費
- リース費
関連経費
また、事業を開始するにあたり必要と認められた経費についても、関連経費として事業再構築補助金の支給対象とされています。対象となる経費としては、以下のようなものがあります。
- 外注費(製品開発に要する加工や設計など)
- 技術導入費(知的財産権導入に関する費用など)
- クラウドサービス費
- 研修費(教育訓練費など)
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成や媒体掲載、展示会出展など)
- 専門家経費
※関連経費には上限が設けられる予定です。
補助対象外の経費
以下のようなものは補助対象外の経費となりますので、混同しないよう注意しましょう。
- 人件費
- 従業員の旅費
- パソコン、スマートフォン、家具、公道を走る車・不動産・株式などの購入費
- 販売する商品の原材料費
- 通信費・光熱水費・消耗品費
事業再構築補助金の申請方法
事業再構築補助金の公募開始は2021年3月を予定しています。申請はすべて電子申請システム「jGrants」で受け付けます。jGrantsは経済産業省が運営している、補助金の申請や届け出ができるシステムです。システムの利用には「GビズIDプライムアカウント」が必要ですので、事前にID取得を済ませておきましょう。
関連記事:
・助成金、補助金を受け取った場合の会計処理はどうなる?
・【調査レポート:テレワークによる健康管理、新型コロナ対策の実態調査】昨年と比較して分かった、テレワークの進展と効率化のポイント
まとめ
新型コロナウイルスの流行により、多くの企業は打撃を受け、同時に、人々の生活にも大きな変化が起こりました。時代の流れとともに事業形態や経営方法は変わっていくものですが、今回のように日本の経済構造そのものに影響するような急激な変化には、戸惑う企業も多いでしょう。しかし、このような状況だからこそ、これまでの経営を見直し、「ウィズコロナ」時代に適応するための変革を起こす姿勢が重要になります。事業再構築補助金は、そうした企業の取り組みへの追い風となるでしょう。新規事業への挑戦や、事業転換を考える企業は、事業再構築補助金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。