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労働協約と労使協定の違いは?分かりやすく徹底解説!

労働協約とは、賃金や労働条件、団体交渉、組合活動といった労使関係のルールについて、労働組合と使用者が取り交わす約束事です。労働協定は、労使契約や就業規則よりも優先される非常に強力な取り決めであるため、締結の際には慎重な検討が必要です。この記事では、労働協約の概要や労働協約の種類、そして労使協定との違いについて解説します。

労働協約とは?

労働協約を締結できるのは

労働協約は、労働組合が使用者に対し、団体交渉権を行使した結果として締結されます。そのため、労働協約を締結できるのは労働組合だけです。ここでいう労働組合には、社内の労働組合のほか、社外の合同労働組合(ユニオン)などが該当します。労働協約を締結するにあたっては、労働組合の構成員が全従業員の過半数を超えている必要はなく、労働組合が任意に締結できます。また、労働組合法14条では、「労働協約は、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる」と定められており、これらの要件を満たした書面であれば、労働協約の成立は可能です。ここでいう当事者は、必ずしも企業の社長と労働組合の委員長である必要はないので、管理職と職員間で交わされたものであっても、簡単に撤回はできないため注意しましょう。

労働協約の2つの種類

  • 個別協約
    個別協約は、個々の合意事項をその都度文書化した協約を指します。賃金協定や退職金協定など特定の項目についてのみ協定締結を行います。労働組合の結成当初などは、企業全体の課題が見えていない場合も多いため、個別協約の締結からスタートするケースが多いようです。
  • 包括協約
    包括協約は個々の事項を体系的にまとめた協約を指します。労使関係の基本事項・ショップ制・労働条件・団体交渉・苦情処理・争議行為のルールなどについて、全般的に規定されています。いくつかの個別協約を積み重ねた後に、包括協約へと発展させるケースが多いようです。

  

労働協約締結のポイント

労働組合からの要請があった時

労働組合法第7条2号において、「使用者は、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことはしてはならない」と定められています。そのため、労働組合から労働協約締結の要求があった際は、誠実に交渉に応じなければなりません。労働組合側の要求を良く確認し、慎重に対処する姿勢が大切です。社内での対応が難しい場合は、弁護士などの専門家の力を借りましょう。

労働協約の締結は義務ではない

使用者には、団体交渉に応じる義務がありますが、必ずしも要求をすべて呑まなくてはいけない訳ではありません。労働組合から労働協約の締結を求められたとしても、納得のできない内容であれば断ることも可能です。対話し、互いに歩み寄るための工夫は大切ですが、労働協約を締結するかどうかは慎重に判断しましょう。

事前協議事項は慎重に行う

事前協議事項とは、事業を行うにあたってなにかを決断する際、事前に労働組合との協議を義務付けるものです。例えば、人事異動・懲戒処分・解雇などを事前協議事項に盛り込もうとする交渉は良くみられます。このような場合、企業側の自由な人事異動や処分が制限され、その後の企業活動に支障をきたしかねません。事前協議事項は内容を良く確認し、追加しても問題がないか見極めましょう。

期間を明確に区切る

労働協約には、適切な有効期間を設定して、明記しましょう。労働協約のなかには。期間を定めずに締結されているものが少なくありません。有効期間を定めずに労働協約を締結した場合、企業側か労働組合側どちらか一方から90日前に予告すると解約が可能です。しかし、実際には解約が不当労働行為と扱われ無効とされたり、簡単に進行できなかったりするケースも珍しくありません。解約によって思わぬトラブルを発生させないためにも、労働協約は有効期間を定めて締結することが大切です。

 

労働協約と労使協定の違い

労使協定とは

労使協定とは、労働者と使用者との間で交わされる協定です。企業が就業規則などを策定する場合、労働基準法などの法律に準じた内容にする必要があります。しかし、残業や休日出勤など例外的な対応を従業員に求める場合もあるでしょう。このような場合に、労使協定を締結しておけば、法定義務の免除や免罰の効果を得られます。もちろん、労働者側が同意すればどんな内容の協定でも良いという訳ではありません。労働基準法の規定を超えた内容の労使契約は、労働基準法で定められた項目にのみ認められているので注意しましょう。

  • 締結する相手が違う
    労働基準法には労使協定という言葉の記載はありません。「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある時はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない時は労働者の過半数を代表する者との書面による協定」という労働基準法第36条の文言を一般的に労使協定と呼んでいます。そのため、労使協定を締結できるのは、労働者の過半数を代表する者や労働組合です。従業員代表は、従業員間で選出する必要があり、企業の意向で従業員代表を選ぶことはできません。
  • 対象が違う
    労使協定は、当該事業場の全労働者が対象です。労働協約の場合は、原則として労働組合の組合員のみに適用されるため、この点が大きく異なります。また、労使協定の効果が及ぶのは、一つの事業場に限られます。ただし、36協定の場合は、「事業の種類」「事業の名称」「事業の所在地(電話番号)」「労働者数」以外の事項が同一である場合一括届出・適用が可能です。
  • 目的・趣旨が違う
    労使協定は、労働基準法で定められた労働条件を一律に適用することが難しい場合に、例外を認めるための手段として用いられます。これに対して労働協約は、労働者と使用者間の交渉力格差を集団的交渉で解消し、より良い労働条件を獲得することが目的です。
  • 効力が違う
    労使協定には免罰的効力があります。法定労働時間を超えて労働者を働かせても罰則が免除される36協定を例に考えると分かりやすいでしょう。一方、労働協約の効力には、規範的効力と債務的効力があります。規範的効力とは、労働協約に定められた内容が優先される効力であり、使用者は就業規則や労働契約よりも労働協約に定められた内容を遵守しなければなりません。また、債務的効力とは、契約として、協約当事者を拘束する効力をいいます。不履行の場合,契約違反の効果を生むとされる、団体的労使関係の運営についてのルールなどが該当します。

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まとめ

大企業を除けば、自社内に労働組合が存在する企業は少数派といえるでしょう。しかし、最近では社外のユニオンに所属する労働者は増えています。そのため、ある日突然、外部の団体から団体交渉を迫られる可能性もないとはいいきれないでしょう。使用者は、団体交渉には誠実に応じる義務があるものの、労働者側の言い分をすべて聞かなければならない訳ではありません。明らかに法令違反の場合を除けば、不当労働行為とみなされるケースはごくわずかなので、落ち着いて交渉に応じ、労使の妥結ポイントを探すことが重要です。

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