財務会計において利益がマイナスになったときに、「欠損金が発生した」という言い方をします。欠損金繰越控除は、赤字を翌年以降の10年間に繰り越すことができる制度で、課税所得を減らすことができるので節税につながります。今回は、欠損金繰越控除の要件や限度額について解説していきます。
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欠損金とは、損金が益金を超えてしまった際の超過部分のこと、つまり財務会計上の赤字額を指します。欠損金繰越控除とは、欠損金が発生した場合に、その欠損金を翌事業年度以降に繰り越すことができるという制度で、翌事業年度以降に繰り越す欠損金のことを繰越欠損金と呼びます。利益がプラスになった事業年度の所得金額の計算において、繰越欠損金を損金算入し、所得金額から控除することができます。簡単に言えば、現在の赤字分で将来の黒字を相殺することができるということです。
それでは、欠損金繰越控除の適用を受けるとどのような効果があるのでしょうか。そのメリットとしてはやはり、欠損金を繰り越して黒字の事業年度の課税所得を減らすことで、法人税等の節税ができるということが挙げられます。
この点について、具体的な例を用いて考えてみましょう。ある自営業者の2016年度の決算が100万円の赤字、2017年度の決算が200万円の黒字であったとします。2016年度は赤字のため課税所得は0円となり、この年度の赤字は繰越欠損金として2017年度に繰り越されます。そして2017年度は200万円の黒字から前年度からの繰越分100万円を控除し、課税所得は200万円-100万円=100万円となります。
ここで、実効税率を20%として、この欠損金繰越控除がある場合とない場合のそれぞれで、2017年度分の法人税を計算してみましょう。控除がない場合、課税所得はそのままの200万円ですので、納税額は200万円×0.2=40万円となります。他方、欠損金控除が適用された場合は、課税所得額は100万円ですので、納税額は100万円×0.2=20万円となります。よって、両者の場合では納税額に20万円の違いが生じることになります。
欠損金繰越控除の適用を受けるためには、次の3点の要件を抑えておく必要があります。
上記のうち確定申告については、欠損金が生じた事業年度が青色申告であれば、その後の事業年度についての確定申告が白色申告であっても欠損金繰越控除の適用を受けることが可能です。
ただし、発行済株式や出資の総数・総額の50%を超える株式や出資を他の者が保有する「特定支配関係」が発生した場合には注意が必要です。この特定支配関係を有することになった日から5年以内に、旧事業を全て廃止し、旧事業の事業規模の5倍以上の資金を借り入れるなどの一定の条件に該当する場合は、その該当する日の属する事業年度以降の事業年度では、それ以前の事業年度において生じた欠損金に対して繰越控除を適用することはできません。
確定申告書を提出する法人において、各事業年度の開始日より前9年以内に開始した事業年度の中で、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額については、その各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入することが可能となっています。
なお、2016年度の税制改正により、2018年4月1日以降に開始する事業年度において発生した欠損金の繰越期間は10年間とされます。
欠損金繰越控除の限度額は、大法人と中小法人等とで異なっています。中小法人等の限度額については、次項の中小法人等の特例でまとめて扱いますので、ここでは一般の大法人の限度額について解説します。
大法人の各事業年度における繰越決算金による控除限度額は、繰越控除前の所得金額のうち、以下の割合となっています。
上記の通り、現時点では今後の事業年度における繰越控除の限度額は所得金額の50%となっています。ただし、この割合は減少傾向にあることから、これからさらに変化する可能性があるため注意が必要です。
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決算金繰越控除に関して、中小法人等を対象とする特例が設けられています。ここで言う中小法人等には、以下のものが含まれます。
これらの中小法人等に対しては、控除限度額が設けられていません。前項で述べた通り、大法人は所得金額の一定割合しか繰越控除を適用することができませんが、中小法人等に関してはこの制限がないため、所得金額の100%相当額まで繰越欠損金を損金算入することが可能です。
また、中小法人等だけでなく大法人であっても、次のいずれかに当てはまる法人に関しては、一定の期間の間は中小法人等と同様、所得金額全額まで損金算入することが可能となっています。
このように、新設法人や再建中の法人に対しては、再建への影響や財務基盤への影響等に配慮して所得金額の全額まで損金算入ができるようになっています。
今回は欠損金繰越控除について、要件や期間、限度額などの観点から解説してきました。現在の赤字と将来の黒字とを相殺することは、企業の安定存続のためにも大切なことですので、この制度を利用できる場合には積極的に活用していきましょう。
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