企業間レンタル移籍は、企業のイノベーション創出に向けて、次世代リーダーを育成する方法として注目を集めています。企業から選ばれた人材はベンチャー企業でのプロジェクトに従事し、組織を大きくしていく過程に関わることで新しい価値を見出していく経験を培うことができます。今回は、企業間レンタル移籍を行うメリットや、仕組み導入の流れについて解説していきます。
目次
企業間レンタル移籍とは、人材育成したい企業と事業強化したい企業同士をマッチングさせ、貸し出し企業から受け入れ企業へ、移籍者を人材派遣や出向という形で就業させることです。貸し出し企業としては、移籍者に自社内では得がたい経験を積んで成長させることなどが目的となり、受け入れ企業としては、新たな企画を進められる人手を得ることなどが目的となります。例えば、ある人を大企業に所属したままベンチャー企業に一定期間移籍させ、アイデア創造やビジネスの立ち上げを学ばせるといった活用の仕方があります。この企業間レンタル移籍を提供するプラットフォームとして注目を集めるのが、「LoanDEAL」(ローンディール)です。
LoanDealのコンセプトには、「出向を利用して、人材をベンチャー企業のプロジェクトに参加させる仕組み」とあり、主に大企業を対象に企業間レンタル移籍の試みを呼び掛けています。サイト上に登録された多くのベンチャー企業と、申請を出した大企業とのマッチングを行い、そして期間中の人材育成を支援します。既に導入した企業には、JGC、Panasonic、三井住友銀行を始めとする大企業、そして経済産業省までもが名を連ねます。設立5年目にして「日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞」を受賞し、様々なメディアでも活動が取りあげられています。
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企業間レンタル移籍の最たる利点は、移籍者のビジネス力を高められることです。特に、イノベーション人材や次世代リーダーの育成としての効果が注目されています。大企業の中しか知らずにいると、視野や価値観が固まる、必要とされる能力に偏りがある、創造性が培われにくいといった問題が生じてきますが、企業間レンタル移籍を導入すれば、移籍者は新たな思考回路と自社内では身につけられないスキルを学ぶことができます。また、ベンチャー企業ならではの長所である、仕事の速さ、新しい挑戦の多さ、様々なことを自分で考えさせるメソッド、何でも自前で工夫する姿勢などを吸収することができるので、大企業に戻ってからも、新たなアイデアを創出してゼロからイチを生み出す人材となることが期待できます。
型にはまった大企業内のやり方では成長が見られないような人材を、一定期間貸し出しているだけで、企業の中心を担うエースへと成長させられる可能性があります。自社で研修やプロジェクトをセッティングするには手間やコストがかかり過ぎる場合でも、企業間レンタル移籍ならば低費用で大きな効果を見込めます。
ベンチャー企業は特に人材不足の傾向が強いため、たとえ一定期間であっても人手が増えれば、他の従業員の負担を軽減させたり、新しい事業を始めたりなど、可能性が広がります。また、企業間レンタル移籍では、貸し出し企業側も一定のコストを払うため、ある程度以上の能力とやる気のある人が移籍者とされる可能性が高く、自社での事業強化を図れます。
企業間レンタル移籍の導入方法について、ローンディールでの仕組みを、以下説明していきます。
企業間レンタル移籍を行う場合、一時的に自社の従業員が他社で就業することになります。これについて、労働者派遣法や職業安定法などとの兼ね合いを疑問視する声がありました。この懸念を解消するため、ローンディールがグレーゾーン解消制度を使って合法か否かを確認したところ、厚生労働省と経済産業省から、違法性は見当たらなく全事業を提供可能であるという回答を得たと公表しています。更に2018年には、この回答について経済産業省のサイトなどでも公式掲載が行われました。そのため、現在のところは企業間レンタル移籍を行うにあたり、法的な問題を心配する必要はないようです。
少子化が進む中、優秀な人材の奪い合いもさることながら、社内の人材をいかに育てるかも課題となってきます。次世代を牽引する若手に乏しい企業、アイデアの枯渇する企業など、現状打破に決め手を欠く場合は、企業間レンタル移籍を試してみるのもひとつの戦略です。
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