生後1年に満たない子供を育てている従業員は、1日2回、1回30分以上の育児時間を請求することができます。申請があった場合、企業は育児時間の取得を断ることはできませんが、育児時間中の給与発生の有無は自由に決めることができます。今回は、育児時間の意味と取得要件、給与の有無、活用方法、残業や時短勤務との兼ね合いについて解説していきます。
労働基準法にて規定された育児時間をご存知でしょうか。労働基準法第67条では下記のように定められています。
生理休暇等と同様に、この制度は女性従業員限定のものとなっています。というのも、この規定がもともと授乳等の行為を想定して作られているからです。しかし、現在ではそれにとどまらず、以下のような活用のされ方が一般的となりつつあります。
このような柔軟な活用により、難易度の高い生後1年以内の子育てと仕事の両立が実現しやすくなります。
しかしながら、この制度は育児休暇等の他の育児のための労働基準法上の制度と比較して、認知度がとても低いのが現状です。条文で規定されている通り、従業員が育児時間を請求した場合、企業側は必ず認めなければならないのですが、特に就業規則でこの制度に対応していなかった中小企業等で、請求自体に戸惑ってしまうケースも多くなっています。子育て支援などが重要視される現在、そのようなことがないようにも、しっかりと就業規則に組み入れておくことが重要です。
上記のように、育児時間は就業規則等で対応できるようにしておく必要があります。そのためにも対象者や給与の有無等、注意して定めなければならないトピックを確認していきましょう。
上に引用した労働基準法第67条は、「生後満1年に達しない生児を育てる女性」が育児時間の取得可能者であるとしています。これは就業規則上でも明記しておくべき事柄になります。就業規則を見直す際には、現時点で該当する従業員や、その見込みの従業員が存在するかどうかも確認してみるとよいでしょう。仮に存在する場合は、この制度の存在を積極的に告知することで、従業員の育児と仕事の両立につなげられるかもしれません。
労働基準法では「1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」とされています。これは通常の8時間労働の場合であり、例えば4時間以内の時短勤務やパート・アルバイト労働では、1日1回30分の時間が与えられればよいとされています。時短労働者を雇用している場合等は注意が必要です。
賃金体系が時給制などの場合、育児時間に給与が発生するかどうかが重要な問題になります。労働基準法ではこれに関する規定がなく、有給とするか無給とするかは各企業の裁量で決めることができます。どちらにするにしても、就業規則に明記しなければトラブルの元となりうるため、必ず記載しておきましょう。
育児時間は1日2回、1回30分以上の申請が可能とされています。そして現在、これを組み合わせるような形で、とても柔軟で幅広い利用のされ方が可能になっているということは、上述の通りです。家庭や育児の環境は労働者ごとに千差万別ですので、多様なケースに対応するためにも、就業規則のみならず、急に育児時間を請求された際にもすぐ対応し、勤怠管理ができるような仕組みを作っておくことが重要になります。
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育児時間は労働基準法第67条で明記された仕組みでありながらも、認知度の低さが課題となっています。とりわけ中小企業などでは、就業規則で想定されていないことによるトラブルも散見されます。しかし、育児時間が請求された場合、企業は必ずこれを認めなければなりません。仮に就業規則に記載がないとしても、取得させなければ違法となります。若手の女性従業員がいる企業はもちろんのこと、今後に備え、あらゆる企業が就業規則で育児時間に対応するべきであると言えるでしょう。また、就業規則で規定されていても社内での認知度が低い場合は、一度従業員に対して周知してみてはいかがでしょうか。こうした仕組みをしっかり活用できる環境を整えることは、従業員の育児と仕事の両立に寄与し、結果として従業員の定着度向上にもつながります。
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