電子帳簿保存法が改正されたことで請求書の電子化にかかる要件が緩和されました。これにより、テレワークでも請求書を発行できるようになるほか、会計ソフトとの連携やペーパーレス化などにもつながります。今回は、請求書電子化に影響を与えるe-文書法・電子帳簿保存法・インボイス制度の概要や請求書電子化のメリット、注意点や切り替え方法について解説します。
目次
ビジネスでは帳簿や請求書などさまざまな書類を扱いますが、これらの書類を紙のまま保存しておくと、場所をとるだけでなく紛失・破損のリスクも生じます。そのため、文書の電子化を後押しすべく、昨今は制度面も整備されつつあります。
「電子文書法」とも呼ばれる法律で、民間事業者による文書の保存・作成・閲覧などを電磁的記録により行っても良いとするものです。この法律により、帳簿・契約書・定款・貸借対照表などさまざまな書類について、電子化した文書ファイルでも保存できるようになりました。なお、船舶の手引書や免許証など、電子化が認められていない書類も存在します。
e-文書法にのっとり文書を電子化して保存するためには、「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つの条件を満たす必要があります。見読性以外の3つは文書の種類により満たす必要がない場合もありますが、「データがいつでもはっきりと表示・出力可能である」という見読性だけは必須の条件です。
前述のe-文書法よりも早くに制定された法律で、財務省と国税庁が管轄する法律に関する文書に適用されます。この電子帳簿保存法に則って文書化するには、事前の承認が必要です。e-文書法においては承認不要なので、両者を混同しないように注意しましょう。
なお、電子帳簿保存法が施行された当初は、紙媒体をスキャンしたデータは法律の適用外とされていました。法改正を経た現在はスキャンされたデータでも適用されますが、決算に関係する書類は今でも適用外のため留意しましょう。
2023年10月1日導入予定となっている制度です。「インボイス」は簡単にいうと納品書と請求書を合わせたものを指し、これを取引時に残しておくことを定めた制度がインボイス制度です。インボイスは主に消費税の計算に利用されますが、現在は消費税率が品目により異なるため、どの商品にいくらの税金がかかっているか把握しやすくするために導入に向けて進められています。
従来は「請求書等保存方式」が採用されており、一律だった消費税に応じた単純な仕組みとなっていました。軽減税率により複雑化した消費税制に対応する新制度として、インボイス制度の導入が予定されているのです。
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紙の書類は保存するためにスペースが必要で、作成・送付する際も印刷費や用紙代、送料などのコスト、またそれぞれの作業を行う従業員の人件費が発生します。一方、電子化した請求書であれば、保存はデータで完結し、作成や送付もデスクトップやクラウド上で完了させることが可能です。請求書関連で必要だった場所やコストを大幅に削減できるでしょう。
請求書を扱う業務では、発行後に誤請求していると気付いたり、先方から日付の修正を依頼されたりすることもあります。再発行や修正が滞ると契約の遂行上に大きな支障をきたす場合がありますが、紙の請求書では再発行や修正に多くの手間がかかってしまいます。一方、電子化した請求書であれば余計な作業を発生させることなく、迅速に対応可能です。
電子化した請求書であれば、印刷用紙・印刷機・インクなどの印刷のための準備、また封筒・切手などの送付の準備も不要です。また、ハンコ文化の日本では、書類に担当者や役員などの承認・押印が必要なケースも多くありますが、電子化した請求書であればハンコを押す必要もありません。多くの企業が在宅勤務を採用している現代において、ハンコを押すためだけに出社するといった手間を省けるのは大きなメリットでしょう。
請求書を電子化して保存するためには、電子帳簿保存法で定められた以下の要件を満たさなくてはなりません。
請求書を電子化するためにはシステム導入が一般的な方法ですが、システムの導入・運用には当然ながらコストがかかります。特に定期的に発生する運用コストは、企業によっては大きな負担となるでしょう。請求書発行業務の削減により減らせる人件費などの各種コストとのバランスをみつつ、長期的にも導入メリットが大きいか検討する必要があります。
請求書を電子化する際は、取引先への対応が必要な場合もあります。企業によっては今でも紙媒体へのこだわりが強かったり、電子化への対応が思うように進んでいなかったりするかもしれません。自社の状況に限らず、主要な取引先の状況を確認・考慮したうえで電子化を推進しましょう。
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請求書は自社だけで完結するものではないため、取引先への断りを入れておく必要があります。そのため、請求書の電子化を決めたら、まずは取引先に電子化の旨を伝える案内文を送付しましょう。企業によっては電子化した請求書を認めない可能性があり、電子化に好意的な相手であっても事前連絡がないと対応に困ってしまう場合もあります。
案内文には、電子化に関する問い合わせ先を記載し、先方の意思を確認するための回答書を同封しましょう。また、電子化により相手が受けられるメリットも記載すれば、取引先が同意する可能性が高まるかもしれません。
取引先にとって、従来の体制からの変更には大きな負担が伴う場合があります。序盤にうまく運用できないと苦手意識を持たれてしまい、自社との取引に悪影響が生じてしまうかもしれません。そのため、請求書の電子化に関する専用のサポート体制をあらかじめ構築しておくことが有効です。具体的には、想定される質問を洗い出したり、使用するツールの簡易マニュアルを提供したりすると良いでしょう。ログイン方法のような基本的な部分から対応させ、スクリーンショット付きで解説できるとより汎用性が高まります。
請求書の電子化を一度に行わず、段階的に移行していく方法もあります。特に電子化を断られた相手に対しては、当面の間、電子・紙の両方で請求書を送付しても良いか頼んでみましょう。前述のとおり、請求書の電子化は取引先にも少なからずメリットがあるため、たとえ最初は断られたとしても次第に電子化に対して好意的になる可能性もあります。
この記事では、請求書電子化の概要やメリット、注意点、そして切り替え方法を解説しました。IT化やペーパーレス化が進む現代において、請求書の電子化の流れは必然だといえるでしょう。企業経営に欠かせない請求書の運用を効率化できれば、経営全体にも大きなメリットをもたらします。ぜひこの機会に、請求書電子化の実現に向けて、社内外の理解を得つつ検討を進めてみてください。
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