【2025年4月施行】高年齢雇用継続給付の縮小について徹底解説

カテゴリ:
公開日:2024.8.6

高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の高年齢従業員を定年延長などで継続雇用した際の収入低下を支える給付金のことを指します。現行では、60歳〜65歳までの賃金が、60歳到達時の75%未満になった場合、65歳に達するまでの期間について、減少額の15%相当額が該当の被保険者に支給されています。しかし2025年4月以降は、雇用保険から給付される高年齢雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げられることが決定しました。

    

高年齢雇用継続給付について整理しよう

高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付とは60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給される給付金のことです。この給付金が誕生した背景としては、高年齢者雇用安定法の制定によって従業員の雇用期間が延長されるようになったことが挙げられます。しかし、再雇用後の従業員の賃金額は低下する傾向にあり、高齢の従業員の給与減少の影響を和らげるために高年齢雇用継続給付が制定されました。

高年齢雇用継続給付の種類

高年齢雇用継続給付の種類には以下の2種類があります。

  • 高年齢雇用継続基本給付金
  • 高年齢再就職給付金

まず、高年齢雇用継続基本給付金は60歳以降も雇用保険の失業手当などを受け取らずに、継続して働き続ける場合に受給できる給付金のことを言います。次に、高年齢再就職給付金とは60歳以降に会社を退職して雇用保険の失業手当を受け取って、そこから再就職した際に失業手当の支給残日数があると受給できる給付金のことです。状況によって支給対象となる給付金が異なるので注意しましょう。

高年齢雇用継続給付の申請手続きについて

高年齢雇用継続給付の申請は、原則として勤めている企業がハローワークに対して行います。給付金の受給者本人がハローワークとの間で行う手続きは基本的にはありません。ただし、支給申請書など給付金の受給者本人の方からの記入が必要な書類もあります。そのため、スムーズに申請の処理を進めるために、ゆとりを持って給付金の受給者の方に書類の作成依頼などをしましょう。

関連記事:
徹底解説! 高年齢者雇用の方法やそのメリットは?
中途採用等支援助成金とは?仕組みや支給要件を正しく理解しましょう
雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?詳しく解説します

高年齢雇用継続給付の最大給付率は縮小が予定されている

2025年4月からの最大給付率について

高年齢雇用継続給付では要件を満たす雇用保険の被保険者が65歳に達するまで、60歳以後の各月の賃金の15%を支給してきました。しかし、2025年4月から新たに60歳となる労働者への給付率を10%に縮小される予定です。厚生労働省は「高年齢者の雇用を確保する措置の進展などを踏まえて給付率を見直す」と説明しており、将来的には廃止される可能性もあるため最新の情報をチェックしましょう。

最大給付率が縮小される背景

最大給付率に変更が加えられる背景としては、高年齢者雇用安定法の改正によって高齢者の就労環境の整備が進められてきたことが挙げられます。この高年齢者雇用安定法の施行によって、以下のいずれかの措置の実施が企業に求められるようになりました。

  • 70歳までの定年の引上げ 
  • 定年制の廃止 
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 
  • 70歳まで継続的に事業に従事できる制度の導入

さらに、働き方改革関連法によって義務付けられた同一労働同一賃金の影響もあり、高齢を理由に賃金を低く設定することもできなくなっています。こうした背景もあって高年齢雇用継続給付金の必要性が低くなっており、最大給付率の縮小や制度自体の廃止が進められるようになったのです。

最大給付率の縮小による企業への影響

高年齢雇用継続給付を受けなくても、高齢者の方が働き続けられる環境を構築しなくてはなりません。具体的には高年齢者の雇用の見直しや、高齢でも不公平感が生まれないような賃金制度の整備などが求められます。将来的に高年齢雇用継続給付が廃止になることも見据えて、高年齢者の方の収入減をカバーするための対策を考えていかなければなりません。

    

高年齢雇用継続給付金で注意したいポイント

老齢厚生年金が減額されるケースがある

老齢厚生年金が減額される場合があるので注意しましょう。特別支給の老齢厚生年金などで65歳になるまでの間に老齢年金を受け取る方が高年齢雇用継続給付を受け取ると、老齢年金の一部が支給停止となります。老齢厚生年金が一部支給停止される具体的な金額は、最高で標準報酬月額の6%相当です。該当される方は最寄りの年金事務所に問い合わせて詳細を確認するようにしましょう。

申請期限に気を付ける

高年齢雇用継続給付金には申請期限があるため留意しましょう。申請期限は最初に支給を受けようとする支給対象月から4ヶ月以内です。給付金の支払先は従業員の口座ですが、申請手続きは勤務先の企業がハローワークに対して行います。ゆとりを持って申請手続きを完了できるように対応を進めましょう。また、高年齢雇用継続給付金は初回の支給申請をした後も、定期的に支給申請書を提出しなければなりません。ハローワークから交付される高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書の日程を確認して忘れずに対応しましょう。

高年齢再就職給付金と再就職手当の併用はできない

高年齢再就職給付金と再就職手当の併用はできないので気をつけましょう。もし、高年齢再就職給付金と再就職手当の2つの支給要件を満たす場合には、どちらか一方の給付金を選択しなければなりません。それぞれの給付金は支給の回数・支給額の変動の有無・年金との併給の可否などの違いがあります。十分に高年齢再就職給付金と再就職手当の比較検討をして、自分にとって最適な給付金を選択しましょう。

    

まとめ

高年齢雇用継続給付金は高齢の従業員の給与減少の影響を和らげるために制定されました。受給するためにはいくつかの支給要件を満たす必要があり、原則として手続きは対象者が勤める企業がハローワークに対して行います。高年齢雇用継続給付金の受給要件を満たしている従業員がいる場合には、時間に余裕を持って手続きを進めましょう。

こちらも読まれています:

この記事が気に入ったら いいね!しよう
somu-lierから最新の情報をお届けします

この記事に関連する記事