確定拠出年金法改正案が2020年5月29日に成立し、2022年4月から確定拠出年金制度が改正されます。この改正の背景には、現代日本における高齢労働者の割合の増加傾向があり、高齢者の年金制度の加入範囲と受給開始時期の選択肢の拡大に焦点が当てられています。具体例としては、企業型確定拠出年金制度とiDeCoの加入可能年齢の拡大、iDeCo加入要件の緩和などが挙げられます。今回は、この確定拠出年金法改正の概要や改正に至った経緯、具体的な改正内容について解説していきます。
目次
確定拠出年金制度は「DC(”Defined Contribution plan”の略)」とも呼ばれ、加入者が掛け金を納め(これを「拠出」といいます)、その掛け金額と、加入者自身が指示した運用による収益の合計によって将来の給付額が決まる年金制度です。より豊かな老後の生活の支えとなる、公的年金に上乗せした給付を受けるために任意で加入する「私的年金」の1つに分類されます。
確定拠出年金には、事業主が掛け金を拠出し、従業員それぞれが加入者として自分の責任で資産運用を指示する「企業型DC」と、個人が自ら掛け金を拠出して資産運用も自分で指示する個人用の制度の「iDeCo(イデコ)」があります。
確定拠出年金法の改正により、企業型DCもiDeCoもより幅広い年齢の人が加入できるようになりました。企業型DC利用者がiDeCoに加入するための条件も緩和されるほか、受給開始年齢を75歳にまで繰り下げることができるようになります。
こうした改正の背景には、日本人の健康寿命の延伸や少子化に伴い見込まれる高齢労働者数の増加があります。より多くの人がより長期にわたって働くようになる社会では、さまざまな働き方に即してさまざまな年金の受け取り方が選択できる必要があります。同改正は働く人が加入できる確定拠出年金とその受け取り時期の自由度を拡大することで、こうした要請に答えることを目的としているのです。
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2022年5月から、企業型DCとiDeCo両方の加入可能年齢が拡大します。
企業型DCとiDeCoの加入可能年齢が拡大されることに伴い、年金の受給を開始する年齢の上限も75歳まで延長され、60歳から75歳までの間で自由に選択できるようになります。これは加入可能年齢の延長に先駆けて、2022年4月に施行されます。
現行法では、企業型DCに加入している人がiDeCoへの加入が認められるのは、労使の合意があり、かつ事業主掛け金の上限を引き下げた場合に限定されています。たとえば、他の確定給付企業年金を実施しておらず、企業型DCの事業主掛け金が上限いっぱいの55,000円の企業であれば、iDeCoの掛け金上限である20,000円分の事業主掛け金を引き下げて35,000円にしなければ、その企業型DCの加入者全員がiDeCoに加入者することができませんでした。
2022年10月からは、この2つの条件を満たさずとも企業型DCの加入者がiDeCoに加入できるようになります。この条件の緩和により、これまで加入できなかった多くの人が両方の確定拠出年金に加入できるようになることが期待されます。
上記の条件緩和で1つ注意したいのは、事業主掛け金の上限を引き下げなくてよくなるからといって、企業型DCとiDeCoのどちらも上限いっぱいまで拠出できるわけではないということです。具体的には、たとえば確定給付企業年金を実施していない場合では、事業主掛け金は最大で55,000円まで、iDeCoの掛け金は最大で20,000円までとなりますが、2つの掛け金の合計が55,000円を超えないように調整しなければなりません。また改正後であっても、加入している企業型DCで加入者本人が掛け金を上乗せして拠出する「マッチング拠出」を利用している加入者などは、iDeCoに併せて加入することができません。
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2022年4月から段階的に確定拠出年金制度の加入可能年齢や加入条件が緩和され、加入者にとって拠出と受給のタイミングに関する自由度が大きく高まります。より柔軟な利用がしやすくなった確定拠出年金制度に注目して、老後の生活基盤の安定を図りましょう。
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