厚生労働省は、中小企業や個人事業主向けにさまざまな助成金や補助金を提供しています。助成金や補助金は要件を満たせば受け取ることができて返済の必要もないため、事業を進めていく上でとても有効ですが、税金がかかる点には注意が必要です。今回は、助成金や補助金にかかる税金やその会計処理について解説します。
目次
助成金と補助金は、国や地方から個人や企業へ支給されるお金であり、どちらも事業に関して行う、もしくは行ったことへの支援や報酬の形をとります。申請が承認されれば受け取ることができ、その際の会計上の扱いは収益とされます。しかし補助や助成の名を冠しているにもかかわらず、これらには免税措置がとられている訳ではないため、受給したお金の内のいくらかは税金として支払う必要があります。厄介ですが、受給できるからといって安易に全額を使い果たす訳にはいかないのです。また種類や期間によっては、税制度や会計方法にも違いが生じます。
助成金、補助金いずれにもさまざまな種類がありますが、税務上では特に補助金について、以下の経費補助金と施設補助金の区分が重要となります。
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補助金や助成金は収益とされ、継続的ではない日常的な収入となるため、雑収入として処理します。基本的に、「借方」に当座もしくは普通預金、給付される金額を記載し、「貸方」に雑収入、給付される金額と連ならせていきます。
注意点として、補助金や助成金は、申請から入金まで、あるいは交付決定から受給までに要する期間が種類により異なり、中には数ヶ月のインターバルがあるものもあります。補助金や助成金の仕訳は支給決定の通知が届いた時に行うものと定められており、実際の受給が決算期を跨いでしまうこともあるため、処理には配慮が必要です。以下で詳しく説明していきましょう。
基本の通りに計上していきます。支給決定の通知と受給に多少の差があっても、決算期内であれば受給の時を基準に処理して支障はありません。
もし、受給した日が支給決定の通知より大幅に遅く、決算期を超えてしまうのであれば、支給決定のみの状態でも一度会計に計上し、決算期後の翌事業年度に受給した際にも再び計上します。
施設補助金の場合には、圧縮記帳という手法を利用することができます。これは、施設等の本来の購入額から補助金額分を差し引いた金額を、会計上の購入額として処理できるというものです。既述の通り、経費補助金であれば得た補助金は経費として損金になりますが、施設補助金の場合は固定資産の購入費用とみなされるため、減価償却分しか損金にできず、それを上回る分の補助金による所得は課税対象となります。圧縮記帳を用いることで、施設等の購入へ充てた補助金はその全額を圧縮損として計上できますので、補助金へ課税されることを避けられます。
しかしながら、これはあくまで課税の繰り延べであって減税ではなく、一時的に税が軽減されても後に課される税は増えるため、最終的には得しているわけではありません。この手法では固定資産が減額されているため、減価償却額まで小さくなっているからです。
注意点として、圧縮記帳には限度額が設定されています。数式は基本的には以下のものとなります。
「補助金により購入した固定資産の本来の購入額」×「(返還不要な)補助金の額」÷「固定資産の購入に使った金額」
補助金の給付と固定資産の購入が決算期内に行われるのであれば、そのまま連ねた下に圧縮損を続けて記載すれば良いですが、決算期を跨ぐ場合は処理の方法が2通りあります。
圧縮記帳のやり方には、直接減額方式と積立金方式の2通りがあります。その状況に応じた方式を選択しましょう。
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補助金、助成金は本来個人や企業の事業を促進するために支給されるにもかかわらず、免税の対象とはならず、会計処理も煩雑になるなど厄介な側面があります。とはいえ、やはり受給できるものなら活用しておきたいですし、実際にその機会は少なくありません。必要になる時に備え、事前に処理の方法を把握しておくことが重要です。
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